真夏の夜のショートホラー

Cocoさんはいつもケージの中で、
眠ったり、

ご飯を食べたり

水を飲んだりしています。

そのケージが、ある日突然、
恐ろしいなにかに、
呪われてしまいました。

Cocoさんの大切な、
俵型ボールが

 

Cocoさんが取りに行こうとすると



ふっと消えてしまいます。

 

おやつを入れて転がすボールも

 

追っていこうとしたら
かき消すように
見えなくなってしまいました。

 

親友のぞうさんだって

 

Cocoさんがちょっと
カメラに向かって微笑んでいる隙に
煙のように消えてしまったのです。

 

写真に撮ってみてわかりました。
ほら、ケージの横に、
顔が見えるでしょう。

 

いかにも、悲しそうな顔です。

邪悪な何かは、
その悲しげな顔でじっと
Cocoさんの暮らしぶりを
いつもみつめていたのです。

そいつはきっと、友だちがいないことが悲しくて
ケージにとり憑き
中に入ったものを次々と
自分の世界に引きずり込んでいるのに違いありません。

そんなこととは知らないCocoさんは
うっかり恐ろしいケージの中に入ってしまいました!!

 

そのとたん、
ケージの中には妖気がたちこめます。

 

慌てて飛び出そうとしたけれど
間に合いませんでした。

 

Cocoさんの姿は
すっかり消えてしまったのです・・・。

それから、どれくらいの時間が過ぎたのでしょう。
Cocoさんはある時、ひょっこり帰ってきました。

なにごともなかったかのように
涼しい顔をしています。

大丈夫。
あいつとは仲良しになったから
もう悪いことはしないよ。

Cocoさんは見事に
ケージにとり憑いていた邪気と
和解したのです。

その証拠に
ケージの脇に見えていた、あの恐ろしい顔も
すっかり消えて、なくなりました。

めでたしめでたし。

 

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わんこが悩みを解決します

心優しいCocoさんは、みんなの悩みを解決してあげようと
思い立ちました。

最初にやってきたのは
スポンジのケースに入ったりんごちゃんです。

「実は夏になって、
このスポンジケースが、暑くてたまらないのです」
と、りんごちゃんは悩みを打ち明けました。

 

そんなお悩みなら、解決するのは簡単です。

「ほら、このガムテの芯を貸してあげましょう。
これならゆったりしていて涼しいでしょう。
夏の間はこれを使うといいですよ」

「ありがとう。Cocoさん」

次にやってきたのは、ぞうさんです。

「わたしは『ゾウ』なのに
鼻が太くて短いのが、悩みなんです。
もっと細長い鼻だったら、かっこいいのになあ」

「『ゾウ』は鼻じゃありません。中身です」
と、Cocoさんは諭しました。

「『ゾウ』を見た目で判断するなんて
愚かなことですよ」

しかし、それでもぞうさんは
少しでいいから、鼻を長くしたいと言うのです。

仕方ないねえ。少しだけですよ、と念を押して
Cocoさんはぞうさんの鼻を引っ張ります。

んにんにー。
むにゅにゅー。

 

「ほら。少しだけ
細くて長い鼻になりましたよ」

「ありがとう。Cocoさん」

  

次にやってきたギザギザボールさんは
恥ずかしがりやのようです。

部屋の入り口にたたずんだまま
中に入ってこようとしません。

 

Cocoさんは迎えに行って
連れてくることにしました。

 

そして少し離れたところで
話を聞きます。

「私の悩みは、
坂道でどうしても
低いほうに転がってしまうことです」
と、ギザギザボールさんは言いました。

「しかし、それはボールである以上
あたりまえではないですか」

「いいえ!
たとえボールであっても、
簡単に転がってしまうなんて、嫌です。
私は自分の力で
大地にふんばっていたいのです」

なかなか根性のある
ギザギザボールさんのようです。

Cocoさんは、悩みの解決に
一肌脱ぐことにしました。

 

「ほーら。
ボールさんの端っこのゴムを
こうしてちぎっておきました。
こちら側を地面につけていれば
少しくらいの坂道なら
簡単には転がりませんよ」

ギザギザボールさんは、
もう大喜び。

「ありがとう。Cocoさん」

 

みんなの悩みを解決してあげましたが
実はCocoさん自身にも
大きな悩みがあったのです。

それは、この虎柄ボールの虎丸くん。

 

どうやらCocoさんのファンらしく
どこに行くにも
ついて来るのです。

 

誰かこの子を
追い払ってくれないかなあ・・・。

 

自分の悩みについては
どう解決すればいいのか、
ちっとも思いつけない
Cocoさんでした。

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シーサー、ペット暮らしを満喫する

Cocoさんが散歩をしていたら
どこからか、呼ぶ声が聞こえてきました。

 辺りを見回してみると

 

 おや、こんなところに
Cocoさんの名前が!!

 けれどこれはただの看板です。
Cocoさんを呼んでいたわけではありません。

 

さらに散歩を続けると
やはり誰かがCocoさんを呼んでいます。

 

 

呼んでいたのは、
近所の家の前に立っていた
陶器のシーサーさんです。

 

 

「なにか御用ですか」
とCocoさんが聞くと、シーサーさんは
「実はわたし、一度でいいから
ペットとして暮らしてみたいのです」
と答えました。

 

なるほど。
家の前で魔よけとして座っているのは立派なお仕事ですが
時には家の中で、ゆっくりしたいときもあるでしょう。

 

親切なCocoさんは
シーサーさんと立場を交換してあげることにしました。

 

・・・・・・・・・・・・

 

Cocoさんの姿を借りて、
家に帰ってきたシーサーさんです。

 

しばらくは
シーサーの仕事のときの姿勢そのままで
じっと座っていましたが

 

 そのうち、
ゆっくりと辺りを見回し

 

 水を飲んでみました。

ちょっと生暖かいですね。
もう少し冷たいほうが、おいしいと思います。

 じゅうたんの上に
寝そべってみると、
あまりの気持ちよさに
すぐに眠り込んでしまいそうです。

 Cocoさんは毎日を
こんなにのんびりと、過ごしているんだなあ。

 

 そのうちニンゲンがやってきて
「ボール遊びをしましょう」
と、提案しました。

 

どうやらニンゲンが投げたボールを
取りに行く遊びのようです。

そんな遊びのどこが面白いのかわかりませんが
Cocoさんに聞いたところによると
ペットの勤めとして
とても大切な行事なのだとか。

それなら、一生懸命
やらなくてはなりません。

 

 しかし、軽く噛んでみると「ぷー」と鳴ります。
うぉい。こりゃなかなか愉快!!

 

シーサーさんはすっかり、ボール遊びが気に入ってしまい
ニンゲンが疲れてしまうまで
夢中になって遊びました。

その間、
Cocoさんはシーサーさんの代わりに
家の前にじっと座って
魔除けの仕事を勤めたのです。

これからも、時々交代しましょう。
二人はこっそり約束をしました。

だから、
家でのんびりしているCocoさんは
ことによると、Cocoさんの姿を借りた
シーサーさんかもしれないのです。

  

特にこんなふうに
牙が見えているときは

もしかすると・・・・・・

 

 

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愛情をそそげばきっと

散歩の途中で
柴犬の置物に出会いました。

よくできているので
一瞬驚いたCocoさんですが
本物でないとわかり
そっと近づいていきます。

 

「今は作り物のわんこですが、
家族が優しく可愛がっていれば
いつか本物のわんこになるんですよ」

「えーっ。まっさかぁ」

せっかくいいことを教えてあげたのに
Cocoさんは信じようとしません。

 

ところが数日後のことです。

同じ家の前を通ったら
庭からあの柴わんこがのぞいていたのです。

「やあやあ。先日はどうも。
家族の愛情のおかげで
こうして立派な、本物のわんこになりましたよ」

Cocoさんは、もうびっくり。

「すると、世の中のわんこはみんな
初めはああいった、置物だったのですか」

「そうですとも。
ほら、先週はこんな姿だったわんこですが・・・

 

今日はこうして、
犬らしく暮らしています。

 

生き物だけではありませんよ。

この桜の枝は作り物ですが、

 

春になればこうして
きれいな花を咲かせます。

 

それから、あなたのおもちゃのりんごちゃんだって

 

バナナちゃんだって

 

毎日愛情を注げば、
いつかきっと

 

本物になりますよ」

 

ここで、本当のことを教えてあげましょう。

実はCocoさん、あなただって・・・

以前はこんなおもちゃだったのです。

 

私たち家族が
可愛がって育てたおかげで
ある日とうとう

本物わんこになることができたのですよ」

 

今はじめて明かされる
衝撃の真実!!

Cocoさんは、
自分を本物のわんこにしてくれたことを
家族に感謝すると同時に
自分も、次の世代にこの恩を
返していかなくてはなるまいと、決心しました!!

 

「私の獲物の、このネズミさんですが
愛情をもって育てれば、
いつか本物ネズミさんになるでしょうか」

 

・・・・・・それはやめてください。

 

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悪いきつね

Cocoさんが、きつねのような顔で寝ています。

しかも、悪いきつねです。

 

きつねといえば、物語の中では

 

子ぎつねが手袋を買いにいったり(軍手ですが)

 

手の届かない果物は
「どうせ酸っぱいからいらないや」と負け惜しみを言ったり
(ぶどうがないので洋梨で間に合わせました)

 

細長い器では食べられないだろうと
鶴に意地悪をされたりします。
(ちゃんと仕返しもしています)

 

可愛そうなきつねは
行き違いの果てに
鉄砲で撃たれてしまったりもしています。
(気をつけましょう)

 

しかし、ここで寝ているのは
いかにも悪そうな顔をしたきつねです。

油断をしていると
ひどい目に合わされてしまうかもしれません。

薄笑いを浮かべています。
なにか悪巧みを
思いついたのでしょうか－。

 

おや。
悪いきつねが、動き出しました。

 

きつねですから、やはり
何かに化けて、人間をだまそうとしているに違いありません。

はて、これはなんでしょう。
もしかして、ブーメランでしょうか。

ははん。
本物のブーメランだと思って、投げようとしたところで
正体を現して、驚かせるつもりなのですね。

 

しかし、その手には乗りません。
なにしろふさふさしているし、重そうだし
こんなブーメランを投げる気にはなれません。

無理をして投げたら家具や床にぶつかって、
大きな音がするでしょう。
下手をすると壊れてしまうかもしれませんから。

悪いきつねは、化けるのが
あまり上手ではないですね。

 

仕方なく、作戦を変更したようです。

 

今度は廊下の真ん中で
足ふきマットに化けているつもりのようです。

 

じーっと動きません。
なかなか上手に化けています。

 

そこへ人間が通りかかりました。
どれ、足が汚れたので
このマットで拭きましょう。

それっ。今だっ!!

悪いきつねは勢いよく立ち上がり、
とびかかっていきました。

「わっ！びっくりした!!」

 

やっとうまくいきました。

ニンゲンをだますことに成功して
悪いきつねは、勝利の雄叫びをあげましたとさ。

 

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