こんにちは。
いくつか、記事にしようと思った出来事とかもあったのですが、多忙ゆえ、結局何も書きませんでした。
ですが、トムソン・ロイターのノーベル賞予想が発表されたりとかあったので、少し書こうかと思いました。
突然ですが、私、今、関東ではなく、九州は長崎の佐世保に居ます。
というのも、ここで開催されている、日本油化学会に参加しているからです。(詳細は、WCOS2012で検索して下さい。)
今年は、日本油化学会創立60周年の節目という事もあり、ちょっと豪華になっています。
記念講演には、ノーベル化学賞受賞者の下村修博士、同じくノーベル化学賞受賞者の鈴木章博士の共同研究者だった宮浦博士、花王株式会社会長の尾崎博士の三氏。来賓には、日本化学会前会長、アメリカ油化学会会長、佐世保市長、長崎国際大学学長が来てました。
尾崎博士が呼ばれたのは、まぁちょっと裏の事情があって、日本油化学会会長の阿部博士(東京理科大学教授)は、花王と仲が良いんですよ。
そうでなければ、下村博士や、宮浦博士と同列にされるような事は無いですからね。
ちなみに、講演終了後に、楽屋前に居た下村博士と握手して、記念写真を撮ったりしました。
一生の記念になりました。だって、84歳ですよ、もう今生の別れに違いないですもの。
柄にもなく自慢してしまいましたが、写真なんて、お願いすれば時間が許す限り撮ってくれるので、そこまで特別な事ではないです。
一つ思ったのは、すごく背が高いって事ですね。もうお爺さんなので、背中が曲がっているのですけど、それでも180は絶対にありました。時代を考えると、日本人としては驚異的に背が高かったでしょうね。だからこそ、アメリカで舐められる事なく研究が出来たのかもしれません。
手も大きかった。思いのほか暖かかったし。
で、下村博士の業績については、皆さんご存知ですよね。
緑色発光たんぱく質、通称、GFPの研究です。
記念講演にて司会を務めていた、原節子博士(成蹊大学理工学部教授)は、ずーっとGPFと言い間違えてました。
後で指摘されて、めっちゃ恥ずかしい思いをしたのではないですかね?
たんぱく質はプロテインなので、最後がPでないと変なのは、馬鹿でも分かると思いますが。
でも、科学者というのは、自分の専門分野以外については、素人同然なので、実はあんまり責めちゃいけないのですけどね。
GFPの詳細については、すごく分かり易い本が出ているので、そちらを参照されると良いでしょう。ここでは、簡単な説明だけしておきます。
たんぱく質であるからして、生化学の領域で、私の専門外ですからね。
ただ、発光機構自体が特殊なわけではないですよ。単純化すれば、たった三つのアミノ酸残基が脱水縮合(分子内)して発色団を形成しているだけですからね。
というか、下村博士というと、GFPよりも、クラゲの博士、みたいな通称が有名ですか?
下村博士は、オワンクラゲという、光るクラゲを研究していて、その延長上でGFPを発見、研究し、それが認められて、ノーベル賞を取ったわけです。
オワンクラゲは、何と表現すれば良いのか、傘のふちの部分が光るのですよ。
この部分に、イクオリンというたんぱく質が含まれています。このたんぱく質には、セレンテラジンという発色団を持っており、これがカルシウムイオンと結合すると、青色の発光をするわけです。ルミノールと同じ、化学発光ですよ。
で、オワンクラゲは、緑色に光ります。イクオリンは青く光るのに、クラゲが緑色に光るのは、GFPがあるからです。
化学発光に限らず、LEDでも、蛍光灯でも同じですが、光というのは、励起された電子が基底状態に戻る際に発せられます。
分かり難いでしょうから、例え話をしますね。
棚を考えて下さい。いや、タンスにしましょうか。まぁ、どっちでも良いです。
タンスの下の方には、電子というボールが入っていて、上の方は空っぽな状態を考えて下さい。
これが、いわゆる、基底状態というもので、最も安定な状態の事です。
ここに、エネルギーを加えて、ボール(電子)をタンスの上の方に入れる事を、励起させる、と言います。
実際のタンスだったら、ボールを持ちあげて、上に入れるという行為は、位置エネルギーを与える事に対応しますね?
励起された状態のタンスは、不安定な状態で、元の基底状態に戻ろうとします。というか、すぐに戻ってしまいます。
戻る時に、ボールの位置エネルギーを、何らかの形で放出します。
何らか、というのは、電磁波と熱です。熱になるのは、まぁ、あったかくなるって事ですから、分かりますよね。
電磁波は、波長によって呼び方が変わります。ガンマ線、X線、紫外線、可視光線、赤外線、マイクロ波、電波と言った感じですね。
よっぽど特殊な物質でない限り、紫外線、可視光線、赤外線の範囲で何かを放出します。
つまり、大事なのは波長なわけですが、波長が短いほど、電磁波のエネルギーは強くなります。つまり、紫外線の方が強いエネルギーを持っているわけですね。色で言うと、紫とか青が強くて、オレンジとか赤が弱い事になります。
エネルギーが強いというのは、それだけ、タンスの上の方にボール(電子)が行っていた(励起されていた)という事です。
実は、ボールが下に落ちる時、一気に基底状態まで行かず、少し低いところに移動する、という現象があります。
ここでは、イクオリンから、GFPというタンスの上の方にボール(電子)が移ります。
(注意:このボールの移動にも、いくつか種類があるのですが、この場合は、フェルスター機構というものになります。なので、正確な表現をすると、イクオリンというタンスの上のボールがGFPの上に移るのではなく、イクオリンのボールが落ちるエネルギーを使ってGFPのボールを上に上げているのですが、見掛け上、ボールが移る事に変わりはありません。)
GFPというタンスの上の方は、イクオリンというタンスの上の方より、少し低いので、位置エネルギーがそれだけ減ります。
つまり、青色よりも弱いエネルギー、即ち、波長がちょっと長い、緑色の光が出る事になるわけです。
(注意:言葉の問題はどうでも良いですが、このように、ちょっと低いところに移ってから光るのを、蛍光と言います。だから、GFPは、蛍光たんぱく質、と呼ばれるわけですね。殆ど同じものに燐光というのもあります。これらを分けるのは一重項、三重項と言われるパラメータですが、話が複雑になるので省略します。)
ここで、気付いた方がいらっしゃると思います。
GFPが光るのに、イクオリンが必要なのはなんで?と。
若しくは、どうして、GFPが必要なのか?と。イクオリンだけで光るのだったら、それで良いじゃん、と思いません?
先ず、先の疑問ですが、GFPが光る為には、イクオリンは必須ではありません。
ようは、励起エネルギーを与えてあげれば良いわけで、最も簡単なのは、ブラックライトを当てる事です。それだけで緑色にぴかーと光ります。
次の疑問ですが、実はこれには明確な回答は与えられません。
そもそも、どうしてオワンクラゲが光っているのか、つまり、生態的な意味で、なんの目的で光っているのかが不明です。
それを無視した上で回答しますが、イクオリンが励起するのは、イクオリンというたんぱく質に含まれるセレンテラジンがカルシウムイオンに反応して、分子形状を変える時に、エネルギー(化学エネルギー)を放出するからです。そして、さっき書いたように、励起したら、基底状態に戻ろうとします。
で、戻る時に、何らかの形で、エネルギーを外に出しますが、この時、熱になるのか、青色の光になるのか、というのは、確率的に決まります。
つまり、熱になるのが何割、光になるのが何割、という風になっているわけですよ。
あっついものに触ったら火傷することぐらい分かっていると思います。という事は、熱にばっかりなってしまうと困りますよね。
出来るだけ光で出てって欲しいわけです。GFPであっても、熱と光を放出しているわけですが、光として出ていく確率が、イクオリンに比べると相対的に高いのでしょう。
(注意:実際には、こんな単純な話ではありませんが、一般への簡単な説明としては十分と思います。例えば、励起イクオリンからGFPへの電子移動も、100%で起こるわけではありません。イクオリンは、熱、光、電子移動の三つを合わせて100%分、エネルギーを放出しています。さらに言えば、化学エネルギーが励起に使われる確率も100%ではありません。とまぁ、実際はとっても複雑です。)
んー、思ったより長くなりました。
つまり、あまり簡単には説明出来ていないかも知れません。
この辺りの話が分かっていると、エキシマレーザーとかも分かってくるし、蛍光灯の原理なんかも分かって面白いと思います。
又、少し半導体を勉強すれば、LEDも分かり、さらに光触媒なんかも分かると思います。
まぁ、細かいところは、まだ未解明のところも多いのですが。
うーむ、本当は、光触媒の記事と、iPS細胞の記事を書こうと思っていたのですが・・・。
何だか、GFPの話が長くなってしまったので、今回はここまでにしましょう。
以上。
いくつか、記事にしようと思った出来事とかもあったのですが、多忙ゆえ、結局何も書きませんでした。
ですが、トムソン・ロイターのノーベル賞予想が発表されたりとかあったので、少し書こうかと思いました。
突然ですが、私、今、関東ではなく、九州は長崎の佐世保に居ます。
というのも、ここで開催されている、日本油化学会に参加しているからです。(詳細は、WCOS2012で検索して下さい。)
今年は、日本油化学会創立60周年の節目という事もあり、ちょっと豪華になっています。
記念講演には、ノーベル化学賞受賞者の下村修博士、同じくノーベル化学賞受賞者の鈴木章博士の共同研究者だった宮浦博士、花王株式会社会長の尾崎博士の三氏。来賓には、日本化学会前会長、アメリカ油化学会会長、佐世保市長、長崎国際大学学長が来てました。
尾崎博士が呼ばれたのは、まぁちょっと裏の事情があって、日本油化学会会長の阿部博士(東京理科大学教授)は、花王と仲が良いんですよ。
そうでなければ、下村博士や、宮浦博士と同列にされるような事は無いですからね。
ちなみに、講演終了後に、楽屋前に居た下村博士と握手して、記念写真を撮ったりしました。
一生の記念になりました。だって、84歳ですよ、もう今生の別れに違いないですもの。
柄にもなく自慢してしまいましたが、写真なんて、お願いすれば時間が許す限り撮ってくれるので、そこまで特別な事ではないです。
一つ思ったのは、すごく背が高いって事ですね。もうお爺さんなので、背中が曲がっているのですけど、それでも180は絶対にありました。時代を考えると、日本人としては驚異的に背が高かったでしょうね。だからこそ、アメリカで舐められる事なく研究が出来たのかもしれません。
手も大きかった。思いのほか暖かかったし。
で、下村博士の業績については、皆さんご存知ですよね。
緑色発光たんぱく質、通称、GFPの研究です。
記念講演にて司会を務めていた、原節子博士(成蹊大学理工学部教授)は、ずーっとGPFと言い間違えてました。
後で指摘されて、めっちゃ恥ずかしい思いをしたのではないですかね?
たんぱく質はプロテインなので、最後がPでないと変なのは、馬鹿でも分かると思いますが。
でも、科学者というのは、自分の専門分野以外については、素人同然なので、実はあんまり責めちゃいけないのですけどね。
GFPの詳細については、すごく分かり易い本が出ているので、そちらを参照されると良いでしょう。ここでは、簡単な説明だけしておきます。
たんぱく質であるからして、生化学の領域で、私の専門外ですからね。
ただ、発光機構自体が特殊なわけではないですよ。単純化すれば、たった三つのアミノ酸残基が脱水縮合(分子内)して発色団を形成しているだけですからね。
というか、下村博士というと、GFPよりも、クラゲの博士、みたいな通称が有名ですか?
下村博士は、オワンクラゲという、光るクラゲを研究していて、その延長上でGFPを発見、研究し、それが認められて、ノーベル賞を取ったわけです。
オワンクラゲは、何と表現すれば良いのか、傘のふちの部分が光るのですよ。
この部分に、イクオリンというたんぱく質が含まれています。このたんぱく質には、セレンテラジンという発色団を持っており、これがカルシウムイオンと結合すると、青色の発光をするわけです。ルミノールと同じ、化学発光ですよ。
で、オワンクラゲは、緑色に光ります。イクオリンは青く光るのに、クラゲが緑色に光るのは、GFPがあるからです。
化学発光に限らず、LEDでも、蛍光灯でも同じですが、光というのは、励起された電子が基底状態に戻る際に発せられます。
分かり難いでしょうから、例え話をしますね。
棚を考えて下さい。いや、タンスにしましょうか。まぁ、どっちでも良いです。
タンスの下の方には、電子というボールが入っていて、上の方は空っぽな状態を考えて下さい。
これが、いわゆる、基底状態というもので、最も安定な状態の事です。
ここに、エネルギーを加えて、ボール(電子)をタンスの上の方に入れる事を、励起させる、と言います。
実際のタンスだったら、ボールを持ちあげて、上に入れるという行為は、位置エネルギーを与える事に対応しますね?
励起された状態のタンスは、不安定な状態で、元の基底状態に戻ろうとします。というか、すぐに戻ってしまいます。
戻る時に、ボールの位置エネルギーを、何らかの形で放出します。
何らか、というのは、電磁波と熱です。熱になるのは、まぁ、あったかくなるって事ですから、分かりますよね。
電磁波は、波長によって呼び方が変わります。ガンマ線、X線、紫外線、可視光線、赤外線、マイクロ波、電波と言った感じですね。
よっぽど特殊な物質でない限り、紫外線、可視光線、赤外線の範囲で何かを放出します。
つまり、大事なのは波長なわけですが、波長が短いほど、電磁波のエネルギーは強くなります。つまり、紫外線の方が強いエネルギーを持っているわけですね。色で言うと、紫とか青が強くて、オレンジとか赤が弱い事になります。
エネルギーが強いというのは、それだけ、タンスの上の方にボール(電子)が行っていた(励起されていた)という事です。
実は、ボールが下に落ちる時、一気に基底状態まで行かず、少し低いところに移動する、という現象があります。
ここでは、イクオリンから、GFPというタンスの上の方にボール(電子)が移ります。
(注意:このボールの移動にも、いくつか種類があるのですが、この場合は、フェルスター機構というものになります。なので、正確な表現をすると、イクオリンというタンスの上のボールがGFPの上に移るのではなく、イクオリンのボールが落ちるエネルギーを使ってGFPのボールを上に上げているのですが、見掛け上、ボールが移る事に変わりはありません。)
GFPというタンスの上の方は、イクオリンというタンスの上の方より、少し低いので、位置エネルギーがそれだけ減ります。
つまり、青色よりも弱いエネルギー、即ち、波長がちょっと長い、緑色の光が出る事になるわけです。
(注意:言葉の問題はどうでも良いですが、このように、ちょっと低いところに移ってから光るのを、蛍光と言います。だから、GFPは、蛍光たんぱく質、と呼ばれるわけですね。殆ど同じものに燐光というのもあります。これらを分けるのは一重項、三重項と言われるパラメータですが、話が複雑になるので省略します。)
ここで、気付いた方がいらっしゃると思います。
GFPが光るのに、イクオリンが必要なのはなんで?と。
若しくは、どうして、GFPが必要なのか?と。イクオリンだけで光るのだったら、それで良いじゃん、と思いません?
先ず、先の疑問ですが、GFPが光る為には、イクオリンは必須ではありません。
ようは、励起エネルギーを与えてあげれば良いわけで、最も簡単なのは、ブラックライトを当てる事です。それだけで緑色にぴかーと光ります。
次の疑問ですが、実はこれには明確な回答は与えられません。
そもそも、どうしてオワンクラゲが光っているのか、つまり、生態的な意味で、なんの目的で光っているのかが不明です。
それを無視した上で回答しますが、イクオリンが励起するのは、イクオリンというたんぱく質に含まれるセレンテラジンがカルシウムイオンに反応して、分子形状を変える時に、エネルギー(化学エネルギー)を放出するからです。そして、さっき書いたように、励起したら、基底状態に戻ろうとします。
で、戻る時に、何らかの形で、エネルギーを外に出しますが、この時、熱になるのか、青色の光になるのか、というのは、確率的に決まります。
つまり、熱になるのが何割、光になるのが何割、という風になっているわけですよ。
あっついものに触ったら火傷することぐらい分かっていると思います。という事は、熱にばっかりなってしまうと困りますよね。
出来るだけ光で出てって欲しいわけです。GFPであっても、熱と光を放出しているわけですが、光として出ていく確率が、イクオリンに比べると相対的に高いのでしょう。
(注意:実際には、こんな単純な話ではありませんが、一般への簡単な説明としては十分と思います。例えば、励起イクオリンからGFPへの電子移動も、100%で起こるわけではありません。イクオリンは、熱、光、電子移動の三つを合わせて100%分、エネルギーを放出しています。さらに言えば、化学エネルギーが励起に使われる確率も100%ではありません。とまぁ、実際はとっても複雑です。)
んー、思ったより長くなりました。
つまり、あまり簡単には説明出来ていないかも知れません。
この辺りの話が分かっていると、エキシマレーザーとかも分かってくるし、蛍光灯の原理なんかも分かって面白いと思います。
又、少し半導体を勉強すれば、LEDも分かり、さらに光触媒なんかも分かると思います。
まぁ、細かいところは、まだ未解明のところも多いのですが。
うーむ、本当は、光触媒の記事と、iPS細胞の記事を書こうと思っていたのですが・・・。
何だか、GFPの話が長くなってしまったので、今回はここまでにしましょう。
以上。
「日本のおかげで、アジアの諸国は全て独立した。日本というお母さんは、難産して母体をそこなったが、生まれた子供はすくすくと育っている。今日東南アジアの諸国民が、米英と対等に話ができるのは、一体誰のおかげであるのか」
と書き記しています。この言葉が、あの戦争が何であったか、そのすべてを表わしているでしょう。