†意識の記録† 理解のブログ

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DCカットコンデンサの容量について

2019-05-03 23:41:18 | Audio
こんばんは。今回は、アンプ設計上の注意点について書きたいと思います。


オーディオシステムの出口と云える、スピーカ、ヘッドフォン、イヤホンと言ったものは、理想的にはコイルと見做す事ができます。(例外はあります。)
従い、直流(DC)を流した場合、簡単に焼損します。

アンプの出力段から直流が漏れないようにするのは、高価な機材を失わない為にも、自作ユーザが特に注意すべき点、というより、必ず、絶対に、漏れなく注意すべき点です。
特に、自作ユーザのアンプは耐久性に難があると言うか、耐久性の確認をしていません。(壊れるまで確かめるということをしないからです。)
従い、万が一、故障してしまった場合にも、出力に DC 成分が現れない回路構成にしておくべきです。


いくつかの方策が考えられます。

例えば、出力を常に監視し、 DC 漏れが一定以上(例えば 0.6V 以上など)になったら、出力側に挟んだリレーを切り、スピーカを保護することが考えられます。
これは、メーカ製のアンプでも一般的に行われている対策で、出力にリレーを挟まなければならない点がネックと言えます。
電源 ON/OFF 時のポップノイズ対策など、元々の設計としてリレーを挟んでいるのであれば、部品点数としてそれほど多いものでなし、有効な対策となり得ます。
A接点リレーであれば、ヒューズが切れた段階でスピーカが切り離されるのも利点でしょう。

この方法最大の利点は、 DC 漏れがない状態に於いて、完全な OCL 構成が可能である点に尽きます。
むしろ、 OCL 構成でアンプを製作するのであれば、このような対策は必須であると言わざるを得ません。

となると、そこまでヘヴィではない自作ユーザ(とりあえず作りたい欲求が先行しているユーザ)が採用するには、そもそも不適切なアンプ構成です。
※ と言いつつ、実際には多くの自作ユーザが採用しています。リレーで音が悪くなるという人も居ますが、ケーブルで音が変わるのと同レベルの話です。


より簡便、かつ安全確実なのは、出力にコンデンサ、若しくはトランスを挟む構成です。

つまり、 OTL/OCL 構成を諦めます。
アンプ構成としては化石に戻るようなものですが、 OTL/OCL でないと音が悪いような先入観は捨てるべきですし、音が悪いのは設計・製作の腕が悪いだけかも知れません。
そもそも、 OCL 構成のアンプにしても、電源系、アンプ、スピーカの回路を考えれば、(一般的には)コンデンサが存在するわけですし、 OCL じゃなきゃ音が悪いというのが思い込みなのは分かりますね。


さて、トランス出力のアンプは、代表的には真空管アンプが挙げられます。
真空管アンプは、終段の出力インピーダンスが高い為、電圧を高めにし、トランスを使ってインピーダンス変換しています。
トランス出力ですから、原理的に DC 漏れの心配がなく、今回の趣旨に合います。欠点としては、高電圧を扱わなければならないことと、歪率やダンピングファクタを上げられないことでしょう。仮に半導体で構成しても、 1Vrms の出力を得たい(せいぜい LINEレベル信号である)だけでも、 24V 単電源ぐらいは用意したいところです。( OTA アンプとして実際に製作しているので、過去記事を参照してください。)
電源電圧が高い設計だと、そもそも電源回路で苦労する羽目になりますし、最近は高耐圧の電解コンデンサは値上がり傾向があります。これは避けたいところ。
また、そもそも部品として出力トランスは非常に高価です。

従って、コンデンサを出力に挟んだアンプが現実的な選択肢になります。
この場合、単電源オペアンプ一発でも構成可能ですし、もちろん、両電源を使った SEPP-OCL 構成で、最後にコンデンサを挟むだけでも構いません。
回路の自由度が高く、安全なのだから、言うことありませんね。

また、最後に挟むコンデンサによって、音質はかなり変化してくる。(容量が同じでも、製品によって音質が変わります。)
それを面白いと思うかは人に依るでしょうが、好ましい変化なら歓迎すべきですし、好ましい変化がないなら、コンデンサのとっかえひっかえを楽しむのも良いでしょう。


ここで、問題になるのは、必要な容量についてです。

DC カットというのは、簡単に言えばローカットフィルタ(ハイパスフィルタ)ですから、単純に考えると、出力先のインピーダンスと、カットオフ周波数が決まればよいことになります。

出力先のインピーダンスが小さいほど、コンデンサ容量が必要になるわけですから、接続する可能性がある、最も低インピーダンスの機器を想定すればよいことになります。
一般に、スピーカなら 4 [ohm] 、ヘッドフォン/イヤフォンなら 16 [ohm] を想定しておけば問題ありません。

問題はカットオフ周波数です。
人間の可聴周波数の低域側は、 20 [Hz] くらいだと言われていますから、そこがカットオフでは困ります。(カットオフ周波数は、 -6dB 、つまりざっくり言って音量半分になる周波数だからです。)
十分低く設定しておかないと、低域が細いアンプになります。ただ、コンデンサ容量が非現実的なものになってしまうなら、ある程度妥協はするべきでしょう。
総合的に考えると、 1オクターヴ下の 10 [Hz] ぐらいをカットオフ周波数ということにしておけば、大体の場合は問題なさそうです。
不十分だという方も居ますので、とりあえず 10 [Hz] で製作して、音が微妙だと思ったときに、増やして良くなるようなら増やすという方針で行きましょう。


では、カットオフ周波数 10 [Hz] だとすると、必要なコンデンサ容量はいくらになるでしょうか。
計算方法は、 CRハイパスフィルタ等で検索して頂くとして、答えだけ示します。
(コンデンサ容量は、 E12 系列から近いものを選んでいます。そうでないと買えないので。)

① スピーカ 4 [ohm] を想定する場合
   4700uF, 8.5 [Hz]

② ヘッドフォン/イヤフォン 16 [ohm] を想定する場合
   1000uF, 9.9 [Hz]

最近は、電源平滑用の大容量フィルムコンデンサや、大容量の積層セラミックコンデンサなんかもありますが、価格や入手性からして現実的ではありません。
使いやすさ、入手性、とっかえひっかえまで考えると、電解コンデンサを利用するのがよろしいでしょう。
(故障した際、オープンになるのも重要な性質です。タンタルコンデンサのように、ショートモードで故障されたら趣旨から外れてしまいます。)


次に、コンデンサの耐圧を少しだけ。

先ず、出力電圧の最大値は、(基本的には)電源電圧よりは高くなりませんよね。
なので、電源電圧より高ければよいはず。
例えば、単電源 24V なら、 50V 耐圧の有極性電解コンデンサで十分です。
(24V の作り方に依ります。スイッチング AC アダプタなら 24V ギリギリで構いませんが、トランスから整流する場合は、定電圧部の故障まで考慮して耐圧を選択します。)

では、±12V の両電源の場合でも、 35V 耐圧の有極性電解コンデンサで十分かと言えば、ダメです。
有極性の電解コンデンサは、逆に接続して数V掛け続けたら容易に破裂します。つまり、何らかのトラブルで、 DC成分が負電源側に寄ったままになるだけで破裂してしまうということです。
両電源の場合は、無極性の電解コンデンサを選択しなければなりません。
※ オペアンプを電圧増幅に用いるつもりなら、多くの場合、両電源が必要です。


コスト削減に躍起にならなくてよいのが自作の利点ですから、我々はチキン(臆病者)にならねばなりません。
いつでも、過剰なぐらいの安全策を取りつつ、設計していってください。机上の計算でギリギリの回路は何の役にも立ちません。



ということで令和最初の記事は、アンプ設計上、最も単純な安全策についてお話しました。
令和になったから、何か始めようという方、いらっしゃると思いますが、何事も安全第一で楽しみましょう。



以上。
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