こんばんは。
少しリクエストがありましたので、オーディオ業界に於けるオカルトについて書いてみようかと思います。
オーディオ業界は、自動車などに比べれば、遥かにお金の掛からない趣味です。
危険性も殆ど無く、ただ座って楽しむ分には、誰とでも共有できます。
しかしながら、音というのは、見て明らか、触って明らかということがない為、どうしてもインチキや、勘違い、気のせいが多分に介在します。
測定した数値も、比較の役に立たないということがしばしばあります。
今回は、いくつかのオカルトについて、具体的に書いて行こうかと思います。
測定器ですら測れないような音の変化しか齎さないあらゆる行為が、オカルトであると言えます。
人間の耳で分からないような、と表現してしまうと、人によって耳の良さは異なるので、あまり正確ではありません。
ただ、少なくとも一つ言えることは、普段から高級オーディオなるもので聴いていても、加齢と共に耳は衰えていくということです。
試しに、高周波音を鳴らすアプリケーションや、インターネットサイトにアクセスしてみてください。
自分の耳が、いかにダメな耳か、ハッキリと認識できる事でしょう。
では、最も代表的なオカルトと言える、電線病からどうぞ。
・ケーブルを変えると音が変わる。
嘘です。
最近は、ヘッドフォンやイヤフォンのケーブルを交換する、リケーブルとかいうものも蔓延しているようですね。
スピーカケーブルのような、大きな信号が通るケーブルで音が変わらないのは当然です。
ノイズを載せたところで、埋もれてしまうからです。
本当にそうか?と思う方は、アンプからケーブル外して、+と-を結んでみて下さい。
もし、ノイズが悪さをするのだとしたら、これだけでもスピーカーから音が聞こえるはずですね?
「いや、アンプを繋げないと・・・」という方もいらっしゃるでしょうが、パワーアンプのノイズは、電波等のノイズを遥かに上回る大音量です。
無信号時でも、スピーカーからサーっという音がしているはずです。
また、電源側のノイズ対策をしっかりしていない場合、ドライヤーやホットカーペットなどを使用する事でノイズが増大するかも知れません。
※ こういうノイズの対策方法は色々とありますが、知識のない方が下手に電源タップを改造したりすると危険ですので注意してください。
では、プリアンプとパワーアンプや、 DAC とプリアンプ間はどうかというと、そこを数10メートル配線する方は居られませんよね。
長くても 5メートルでしょう。細いケーブルでも全く問題ありません。
「ノイズではなく、音域の補正をしているのである」という主張をする方も居られるでしょう。
ちょっと調べるだけでも、中域が細いから交換したとか、そういう記事が沢山ヒットします。
よほど細いケーブルを使用したとしても、可聴帯域(20ヘルツから2万ヘルツ)の信号に対して測定可能な周波数特性が現れることはありません。
金線や銀線、超高純度の銅線、アルミ線、鋼線、何を使おうが同じです。
スピーカーケーブルが数10メートルになる場合でも、ベルデン8412の太さで十分であることは、業務の現場からも明らかですよね。
※ ベルデン8412を推奨しているわけではありません。あんな高価なものを購入しなくても、10メートル300円の投げ売りケーブルで十分です。
結局のところ、接触不良さへ無ければよいのです。
馬鹿みたいに太い、何万円もするケーブルを買うぐらいなら、そのお金でオーケストラを聴きに行きましょう。
・アンバランス接続より、バランス接続の方が音が良い。
全くの嘘とも言えませんが、気にする必要はありません。
バランス接続の方が、アンバランス接続よりも、ノイズに強いというのは事実です。
ただそれは、マイクからヘッドアンプまで、微弱な信号を数10メートル単位で、アンバランスで引っ張ってくる時などに問題になるだけです。
もしあなたが、レコードプレーヤから MCヘッドアンプまで20メートルケーブルを引くというなら、気にされた方がよろしいかと存じます。
そもそも、殆どの民生機では、バランス接続をまともに実装していません。
本来、バランス接続では、ホットとコールド間の電位差を信号として使います。
でも、コールドとグランドを短絡していても、ホットとコールド間の電位差という意味は維持されますよね。
だから、出力側、入力側、何れであっても、ちょろまかした実装をしたところで、全く誰も気が付かないわけです。
本当かなあ?と思う方は、バランス―アンバランス変換のプラグを購入してみると良いでしょう。
オスメスどちらも売ってます。
バランス出力をアンバランス入力に繋ぐよし、アンバランス出力をバランス入力に繋ぐもよし。ブラインドで聴き分けられたら連絡ください。
・メッキされた接点は音が悪い。
真っ赤な嘘です。
メッキされていない無垢銅のタップなどが売られていますが、接触不良の原因となるので絶対に購入しないでください。
メッキすると電気抵抗が生じるというのは事実です。
しかし、数万円程度で手に入る測定装置では測定不可能な微抵抗です。
測定方法も、プローブを当てるような方法ではありません。(測れません。)
正直、ケーブルの長さに起因する抵抗値の方が大きいです。
・光デジタル音声出力は音が悪いので、同軸デジタル音声出力を使うべき。
嘘です。
個人的には、むしろ光デジタル音声出力の方が、ノイズの面で有利とさへ思います。
ジッターの影響云々という方がいらっしゃいますけれども、人間に知覚できるような揺らぎは存在しません。
また、同軸デジタル音声出力ならジッターフリーというわけでもありません。
どうしても気になるという方は、データバッファを持つタイプの DD コンバータを購入されて、使用してみて下さい。
これなら、原理上、光デジタル音声出力のジッターからは逃れることが出来ます。
最初に書きましたが、同軸デジタル音声出力の場合、金属線での伝送となりますので、入出力双方でグランドが共有されます。
高級 CD プレーヤなどで、デジタル系とアナログ系の電源が分離されているぐらいですから、機器間でのグランド共有など以ての外だというのは理解できるでしょう。
光デジタル音声出力の場合は、光ファイバーによる伝送なので、電気的には絶縁された状態になります。
※ グランドの共有は、コンセントを介して行っているということです。
・デジタルアンプは音が悪い。
嘘です。
高級デジタルアンプが出始めの頃、オーディオ専門誌のブラインドテストで、当時最高峰のデジタルアンプ、アナログアンプの聴き比べが行われています。
結果、デジタルアンプとアナログアンプは、どちらがデジタルでどちらがアナログか、プロでも聴き分けられないことが証明されました。
※ つまり、デジタルアンプの音、アナログアンプの音なんてものはありません。
デジタルアンプは電源の利用効率も高いですし、筐体も軽いですし、値段も安いものが多いです。
自作する場合も、 IC 一つ買って来て周辺部品を取り付けるだけなので簡単です。
色々とお得ですよ。
また、特性上、低域側の駆動力に優れます。
高級なサブウーファの内臓アンプがデジタルアンプなんてのは、良くある話です。
だから、精神的に毛嫌いするのではなく、音を聴いて選んであげて下さい。
ただ、ある程度以上の質を求めると、デジタルアンプという形式自体が使われていないということも事実です。
これは、音が悪いから、ではなく、デジタルアンプだと売れないからだと思います。
※ ジェフローランドなど、採用されることも偶にありますが、内部回路がお粗末に見えるという難点があり、やはり採用例は少ないです。
・バイワイヤ接続は音が良い。
嘘です。
バイアンプ接続なら、音が変化しても不思議ではありません。
しかし、バイワイヤ接続は残念ながら、効果なしです。
これも一種の電線病です。アンプとスピーカを繋ぐケーブルが二重になるわけですから、抵抗値は半分になりますよね。
だから、理屈の上では、出力インピーダンスが下がって、ダンピングファクタが向上する方向へ行くはずです。
ただ、そんなものは数メートルのケーブルでどうにかなるものではありませんし、ケーブルの断面積を二倍にするのと何も変わりませんよね。
結局、ケーブルを2倍買わせる為の、姑息な策というわけです。
しかし、バイワイヤ接続対応のスピーカーには良い事もあります。
ジャンパーを取り除けば、ウーファだけ、或いは、ツイータだけを鳴らす事が出来る点です。
バイワイヤ接続対応のスピーカーを、もちろん別機種で 2セット持っていれば、異なる機種のウーファとツイータを組み合わせて遊べます。
・・・それだけです。遊べるというだけ。
例えば、 25cm のウーファを持つスピーカと、 13cm ウーファの 2way なら、明らかに後者で低音不足ですから、前者のウーファだけ借りて低域を補完するという考え方はアリです。
でも、それをするぐらいならサブウーファを買った方が幸せになれます。
・真空管アンプは音が良い。
嘘です。
真空管だから暖かみのある音がするとか、半導体だからキレがあるとかいうことはありません。
それぞれ、アンプの個性です。半導体でも柔らかい音は出せますし、真空管でもキレとパワーは(お金掛かるけど)出せます。
ただ、間違いなく言えるのは、出力限界ギリギリまで出させた時でも、真空管の歪み方は嫌味ではないということでしょう。
(半導体の歪み方は露骨で嫌になります。)
そういうところから、真空管アンプは音が良いという評判になったのではないかと思います。
私自身、敢えて出力トランスを入れた半導体のプリアンプを自作していますし、目指す音の方向性は色々あってよいと思います。
そもそも、アンプの個性的な音っていうのは、大きい音や小さい音、高域・中域・低域など、様々な組み合わせに於いて、全てに完璧ではないことから来るわけです。
結局は、歪こそがアンプの個性なわけですから、歪率が小さいほどよい音がするとは限らないのです。
※ ハイファイは、本来的には録音に忠実という意味ですけれども、それは実現不可能です。
半導体アンプでは、出力を上げていくと露骨に歪みますので、自分が使うより十倍以上の出力余裕が欲しくなるわけです。
だから、 100W ぐらいのアンプが当たり前になってしまったんですね。
そのお陰で低能率のスピーカを開発することができるようになり、今のブックシェルフ全盛時代が到来したわけです。
逆に言えば、低能率のブックシェルフを、数W の真空管アンプで鳴らし切るのは不可能です。
※ 不可能ですが、むしろそういう音が良いという感性はアリですし、批判されるべきではありません。
(追記)
・ダンピングファクタ(DF)は、高いほどよい。
嘘です。
これが本当だったら、真空管アンプは全部音が悪いということになってしまいます。
でも、そんなことはないのだと、聴けば納得するでしょう。
各社、ダンピングファクタは売り文句であるかのように、基本スペックとして載せています。
半導体アンプなら 100 程度から数百ぐらい。デジタルアンプで 1000 とかいうものもありますね。逆に真空管アンプなら、一桁でも驚きません。
ダンピングファクタの正体は、スピーカの制動力・・・ではなく、出力インピーダンスです。
まあ、制動力と見做すのは間違いではありませんが、ダンピングファクタの低いアンプだとボワついて聴けない、ということはないです。
そもそも、各社、計算方法や測定方法が異なりますし、アンプの出力インピーダンスは、あらゆる周波数に於いて同一の数値ではありません。
更に言えば、その時々の出力によっても変わる数値です。
従って、カタログの数値を比較して、高い方を選べば失敗しない、なんていう簡単なファクタではありません。
オーディオ全盛時代、歪率が低いほどよい、ダンピングファクタが高いほどよい、など、数値競争が行われました。
日本の大手電機メーカが競ってアンプを開発していたので、歪率は測定限界以下になり、出力インピーダンスもケーブルより小さいところまで行ってしまいました。
つまり、もしそれが最高に音が良くなる方法だというなら、既にアンプの進化は極限に達し、むしろ退化すらしているはずなのです。
それはある意味では真実かも知れません。実際、80年代後半の重量級アンプを整備すると、今のアンプに劣らぬ素晴らしい音で鳴ります。
しかし、我々が今ある機種から選ぶという点で眺めた時、今ある機種はダメかと言えば、全くそんなことはない。
当時は無かった部品、例えば、電子ボリュームなど、安く高性能を実現できているのです。
当時よりも、電気的知識のない人間が荒く扱っても、スピーカを壊してしまうことが減りました。
さて、いくつかのオカルトと嘘について紹介しました。
ここからは、実際に購入を検討しているという方もいらっしゃったので、音を支配するものは何かについて、短く書いておきます。
先ず、録音(ソース)です。
これが悪ければ、どんな素晴らしいシステムも無意味です。
私が手伝ってシステムを構築した方が必ず言うのが「昨日まで聴いていた録音がゴミだと分かった。」です。
そして「いい録音の CD 教えろ。」です。
これは、誰でも通る道です。諦めるしかありません。
次に、スピーカです。
録音を除いて、 9割の音はここで決まります。
なので、最初にシステムを構築される場合は、スピーカーに最大の予算を割り振り、それ以外は最小限にするべきでしょう。
ただ、オーディオの鉄則「予算オーバーの機器を試聴しない」を守ってくださいね。
次に、 D/A コンバータ(DAC)です。
アナログ盤なら、針やフォノイコライザに相当する超重要な機器です。
しかし、初めてシステムを組まれる方は、 CD プレーヤ内臓か、 DAC 内臓のアンプか、安い USB-DAC を購入されるべきです。
単体機器の DAC は、沼と言っても過言ではありません。
次に、アンプです。
初めてシステムを組まれる方は、無難に日本製、 YAMAHA 、 DENON 、 Marantz 、 ONKYO 辺りから選ばれると良いでしょう。
※ 個人的には DENON 390 シリーズがオススメです。
そして、スピーカのセッティングです。これがとっても難しい。
高さを揃えるとか、確りした台に載せるのは当たり前ですが、壁からの距離、筐体間の距離、向き、インシュレータの硬さなど、正解がない。
部屋の形状や、カーテンの厚さでも大きく左右の音がズレてきますから、色々と工夫する楽しみがある。
むしろ、買ってからのセッティングを楽しめない人は、オーディオ趣味が向いていないと言っても過言ではありません。
以上、長くなりましたが、参考になれば幸いです。
少しリクエストがありましたので、オーディオ業界に於けるオカルトについて書いてみようかと思います。
オーディオ業界は、自動車などに比べれば、遥かにお金の掛からない趣味です。
危険性も殆ど無く、ただ座って楽しむ分には、誰とでも共有できます。
しかしながら、音というのは、見て明らか、触って明らかということがない為、どうしてもインチキや、勘違い、気のせいが多分に介在します。
測定した数値も、比較の役に立たないということがしばしばあります。
今回は、いくつかのオカルトについて、具体的に書いて行こうかと思います。
測定器ですら測れないような音の変化しか齎さないあらゆる行為が、オカルトであると言えます。
人間の耳で分からないような、と表現してしまうと、人によって耳の良さは異なるので、あまり正確ではありません。
ただ、少なくとも一つ言えることは、普段から高級オーディオなるもので聴いていても、加齢と共に耳は衰えていくということです。
試しに、高周波音を鳴らすアプリケーションや、インターネットサイトにアクセスしてみてください。
自分の耳が、いかにダメな耳か、ハッキリと認識できる事でしょう。
では、最も代表的なオカルトと言える、電線病からどうぞ。
・ケーブルを変えると音が変わる。
嘘です。
最近は、ヘッドフォンやイヤフォンのケーブルを交換する、リケーブルとかいうものも蔓延しているようですね。
スピーカケーブルのような、大きな信号が通るケーブルで音が変わらないのは当然です。
ノイズを載せたところで、埋もれてしまうからです。
本当にそうか?と思う方は、アンプからケーブル外して、+と-を結んでみて下さい。
もし、ノイズが悪さをするのだとしたら、これだけでもスピーカーから音が聞こえるはずですね?
「いや、アンプを繋げないと・・・」という方もいらっしゃるでしょうが、パワーアンプのノイズは、電波等のノイズを遥かに上回る大音量です。
無信号時でも、スピーカーからサーっという音がしているはずです。
また、電源側のノイズ対策をしっかりしていない場合、ドライヤーやホットカーペットなどを使用する事でノイズが増大するかも知れません。
※ こういうノイズの対策方法は色々とありますが、知識のない方が下手に電源タップを改造したりすると危険ですので注意してください。
では、プリアンプとパワーアンプや、 DAC とプリアンプ間はどうかというと、そこを数10メートル配線する方は居られませんよね。
長くても 5メートルでしょう。細いケーブルでも全く問題ありません。
「ノイズではなく、音域の補正をしているのである」という主張をする方も居られるでしょう。
ちょっと調べるだけでも、中域が細いから交換したとか、そういう記事が沢山ヒットします。
よほど細いケーブルを使用したとしても、可聴帯域(20ヘルツから2万ヘルツ)の信号に対して測定可能な周波数特性が現れることはありません。
金線や銀線、超高純度の銅線、アルミ線、鋼線、何を使おうが同じです。
スピーカーケーブルが数10メートルになる場合でも、ベルデン8412の太さで十分であることは、業務の現場からも明らかですよね。
※ ベルデン8412を推奨しているわけではありません。あんな高価なものを購入しなくても、10メートル300円の投げ売りケーブルで十分です。
結局のところ、接触不良さへ無ければよいのです。
馬鹿みたいに太い、何万円もするケーブルを買うぐらいなら、そのお金でオーケストラを聴きに行きましょう。
・アンバランス接続より、バランス接続の方が音が良い。
全くの嘘とも言えませんが、気にする必要はありません。
バランス接続の方が、アンバランス接続よりも、ノイズに強いというのは事実です。
ただそれは、マイクからヘッドアンプまで、微弱な信号を数10メートル単位で、アンバランスで引っ張ってくる時などに問題になるだけです。
もしあなたが、レコードプレーヤから MCヘッドアンプまで20メートルケーブルを引くというなら、気にされた方がよろしいかと存じます。
そもそも、殆どの民生機では、バランス接続をまともに実装していません。
本来、バランス接続では、ホットとコールド間の電位差を信号として使います。
でも、コールドとグランドを短絡していても、ホットとコールド間の電位差という意味は維持されますよね。
だから、出力側、入力側、何れであっても、ちょろまかした実装をしたところで、全く誰も気が付かないわけです。
本当かなあ?と思う方は、バランス―アンバランス変換のプラグを購入してみると良いでしょう。
オスメスどちらも売ってます。
バランス出力をアンバランス入力に繋ぐよし、アンバランス出力をバランス入力に繋ぐもよし。ブラインドで聴き分けられたら連絡ください。
・メッキされた接点は音が悪い。
真っ赤な嘘です。
メッキされていない無垢銅のタップなどが売られていますが、接触不良の原因となるので絶対に購入しないでください。
メッキすると電気抵抗が生じるというのは事実です。
しかし、数万円程度で手に入る測定装置では測定不可能な微抵抗です。
測定方法も、プローブを当てるような方法ではありません。(測れません。)
正直、ケーブルの長さに起因する抵抗値の方が大きいです。
・光デジタル音声出力は音が悪いので、同軸デジタル音声出力を使うべき。
嘘です。
個人的には、むしろ光デジタル音声出力の方が、ノイズの面で有利とさへ思います。
ジッターの影響云々という方がいらっしゃいますけれども、人間に知覚できるような揺らぎは存在しません。
また、同軸デジタル音声出力ならジッターフリーというわけでもありません。
どうしても気になるという方は、データバッファを持つタイプの DD コンバータを購入されて、使用してみて下さい。
これなら、原理上、光デジタル音声出力のジッターからは逃れることが出来ます。
最初に書きましたが、同軸デジタル音声出力の場合、金属線での伝送となりますので、入出力双方でグランドが共有されます。
高級 CD プレーヤなどで、デジタル系とアナログ系の電源が分離されているぐらいですから、機器間でのグランド共有など以ての外だというのは理解できるでしょう。
光デジタル音声出力の場合は、光ファイバーによる伝送なので、電気的には絶縁された状態になります。
※ グランドの共有は、コンセントを介して行っているということです。
・デジタルアンプは音が悪い。
嘘です。
高級デジタルアンプが出始めの頃、オーディオ専門誌のブラインドテストで、当時最高峰のデジタルアンプ、アナログアンプの聴き比べが行われています。
結果、デジタルアンプとアナログアンプは、どちらがデジタルでどちらがアナログか、プロでも聴き分けられないことが証明されました。
※ つまり、デジタルアンプの音、アナログアンプの音なんてものはありません。
デジタルアンプは電源の利用効率も高いですし、筐体も軽いですし、値段も安いものが多いです。
自作する場合も、 IC 一つ買って来て周辺部品を取り付けるだけなので簡単です。
色々とお得ですよ。
また、特性上、低域側の駆動力に優れます。
高級なサブウーファの内臓アンプがデジタルアンプなんてのは、良くある話です。
だから、精神的に毛嫌いするのではなく、音を聴いて選んであげて下さい。
ただ、ある程度以上の質を求めると、デジタルアンプという形式自体が使われていないということも事実です。
これは、音が悪いから、ではなく、デジタルアンプだと売れないからだと思います。
※ ジェフローランドなど、採用されることも偶にありますが、内部回路がお粗末に見えるという難点があり、やはり採用例は少ないです。
・バイワイヤ接続は音が良い。
嘘です。
バイアンプ接続なら、音が変化しても不思議ではありません。
しかし、バイワイヤ接続は残念ながら、効果なしです。
これも一種の電線病です。アンプとスピーカを繋ぐケーブルが二重になるわけですから、抵抗値は半分になりますよね。
だから、理屈の上では、出力インピーダンスが下がって、ダンピングファクタが向上する方向へ行くはずです。
ただ、そんなものは数メートルのケーブルでどうにかなるものではありませんし、ケーブルの断面積を二倍にするのと何も変わりませんよね。
結局、ケーブルを2倍買わせる為の、姑息な策というわけです。
しかし、バイワイヤ接続対応のスピーカーには良い事もあります。
ジャンパーを取り除けば、ウーファだけ、或いは、ツイータだけを鳴らす事が出来る点です。
バイワイヤ接続対応のスピーカーを、もちろん別機種で 2セット持っていれば、異なる機種のウーファとツイータを組み合わせて遊べます。
・・・それだけです。遊べるというだけ。
例えば、 25cm のウーファを持つスピーカと、 13cm ウーファの 2way なら、明らかに後者で低音不足ですから、前者のウーファだけ借りて低域を補完するという考え方はアリです。
でも、それをするぐらいならサブウーファを買った方が幸せになれます。
・真空管アンプは音が良い。
嘘です。
真空管だから暖かみのある音がするとか、半導体だからキレがあるとかいうことはありません。
それぞれ、アンプの個性です。半導体でも柔らかい音は出せますし、真空管でもキレとパワーは(お金掛かるけど)出せます。
ただ、間違いなく言えるのは、出力限界ギリギリまで出させた時でも、真空管の歪み方は嫌味ではないということでしょう。
(半導体の歪み方は露骨で嫌になります。)
そういうところから、真空管アンプは音が良いという評判になったのではないかと思います。
私自身、敢えて出力トランスを入れた半導体のプリアンプを自作していますし、目指す音の方向性は色々あってよいと思います。
そもそも、アンプの個性的な音っていうのは、大きい音や小さい音、高域・中域・低域など、様々な組み合わせに於いて、全てに完璧ではないことから来るわけです。
結局は、歪こそがアンプの個性なわけですから、歪率が小さいほどよい音がするとは限らないのです。
※ ハイファイは、本来的には録音に忠実という意味ですけれども、それは実現不可能です。
半導体アンプでは、出力を上げていくと露骨に歪みますので、自分が使うより十倍以上の出力余裕が欲しくなるわけです。
だから、 100W ぐらいのアンプが当たり前になってしまったんですね。
そのお陰で低能率のスピーカを開発することができるようになり、今のブックシェルフ全盛時代が到来したわけです。
逆に言えば、低能率のブックシェルフを、数W の真空管アンプで鳴らし切るのは不可能です。
※ 不可能ですが、むしろそういう音が良いという感性はアリですし、批判されるべきではありません。
(追記)
・ダンピングファクタ(DF)は、高いほどよい。
嘘です。
これが本当だったら、真空管アンプは全部音が悪いということになってしまいます。
でも、そんなことはないのだと、聴けば納得するでしょう。
各社、ダンピングファクタは売り文句であるかのように、基本スペックとして載せています。
半導体アンプなら 100 程度から数百ぐらい。デジタルアンプで 1000 とかいうものもありますね。逆に真空管アンプなら、一桁でも驚きません。
ダンピングファクタの正体は、スピーカの制動力・・・ではなく、出力インピーダンスです。
まあ、制動力と見做すのは間違いではありませんが、ダンピングファクタの低いアンプだとボワついて聴けない、ということはないです。
そもそも、各社、計算方法や測定方法が異なりますし、アンプの出力インピーダンスは、あらゆる周波数に於いて同一の数値ではありません。
更に言えば、その時々の出力によっても変わる数値です。
従って、カタログの数値を比較して、高い方を選べば失敗しない、なんていう簡単なファクタではありません。
オーディオ全盛時代、歪率が低いほどよい、ダンピングファクタが高いほどよい、など、数値競争が行われました。
日本の大手電機メーカが競ってアンプを開発していたので、歪率は測定限界以下になり、出力インピーダンスもケーブルより小さいところまで行ってしまいました。
つまり、もしそれが最高に音が良くなる方法だというなら、既にアンプの進化は極限に達し、むしろ退化すらしているはずなのです。
それはある意味では真実かも知れません。実際、80年代後半の重量級アンプを整備すると、今のアンプに劣らぬ素晴らしい音で鳴ります。
しかし、我々が今ある機種から選ぶという点で眺めた時、今ある機種はダメかと言えば、全くそんなことはない。
当時は無かった部品、例えば、電子ボリュームなど、安く高性能を実現できているのです。
当時よりも、電気的知識のない人間が荒く扱っても、スピーカを壊してしまうことが減りました。
さて、いくつかのオカルトと嘘について紹介しました。
ここからは、実際に購入を検討しているという方もいらっしゃったので、音を支配するものは何かについて、短く書いておきます。
先ず、録音(ソース)です。
これが悪ければ、どんな素晴らしいシステムも無意味です。
私が手伝ってシステムを構築した方が必ず言うのが「昨日まで聴いていた録音がゴミだと分かった。」です。
そして「いい録音の CD 教えろ。」です。
これは、誰でも通る道です。諦めるしかありません。
次に、スピーカです。
録音を除いて、 9割の音はここで決まります。
なので、最初にシステムを構築される場合は、スピーカーに最大の予算を割り振り、それ以外は最小限にするべきでしょう。
ただ、オーディオの鉄則「予算オーバーの機器を試聴しない」を守ってくださいね。
次に、 D/A コンバータ(DAC)です。
アナログ盤なら、針やフォノイコライザに相当する超重要な機器です。
しかし、初めてシステムを組まれる方は、 CD プレーヤ内臓か、 DAC 内臓のアンプか、安い USB-DAC を購入されるべきです。
単体機器の DAC は、沼と言っても過言ではありません。
次に、アンプです。
初めてシステムを組まれる方は、無難に日本製、 YAMAHA 、 DENON 、 Marantz 、 ONKYO 辺りから選ばれると良いでしょう。
※ 個人的には DENON 390 シリーズがオススメです。
そして、スピーカのセッティングです。これがとっても難しい。
高さを揃えるとか、確りした台に載せるのは当たり前ですが、壁からの距離、筐体間の距離、向き、インシュレータの硬さなど、正解がない。
部屋の形状や、カーテンの厚さでも大きく左右の音がズレてきますから、色々と工夫する楽しみがある。
むしろ、買ってからのセッティングを楽しめない人は、オーディオ趣味が向いていないと言っても過言ではありません。
以上、長くなりましたが、参考になれば幸いです。
新規にスピーカーを購入し、どのようなスピーカーケーブルを購入すれば良いか迷っているところです。
「金線や銀線、超高純度の銅線、アルミ線、鋼線、何を使おうが同じです。」
「あんな高価なものを購入しなくても、10メートル300円の投げ売りケーブルで十分です。」
とのことですので、安いAmazonBasicのスピーカーケーブルを購入しようと思ったのですが、他サイトのクチコミ掲示板でAmazonBasicのスピーカーケーブルはアルミに銅メッキをしたもの(別に無酸素銅のものもあるみたいですが)だからダメだという趣旨のコメントがありました。
https://bbs.kakaku.com/bbs/K0000580006/SortID=24013480/#24022677
(便宜上URLを貼りましたが不都合がある場合は削除して下さい)
このコメント主は同掲示板では「屈指の回答者」とのことで少し不安になりました。
銅クラッドアルミ線というものらしいですが、このようなスピーカーケーブルでも音質に影響しないということでよろしいでしょうか。
問題ないならAmazonBasicのスピーカーケーブルを購入しようと思っていますが、もし他に安価なスピーカーケーブルでお薦めのものがありましたらご教授いただければ幸いです。
返信遅れまして、すみません。
非常に細かいこと言いますと、細いケーブルや極端に長いなど、抵抗値の高いケーブルを使うと、ダンピングファクタが小さくなって、音質に変化が出る可能性はあります。
ただ、真空管アンプのように元々ダンピングファクタの非常に小さいアンプでも音は問題ないですよね。
だから、10メートルとか引くのでなければ、ケーブルの抵抗値は基本的に気にしなくて良いんです。良導体の金属なら何でも良いので、銀、鉄、銅、アルミどれでも大丈夫です。メッキだって気にしなくて構いません。
AmazonBasic のスピーカケーブルと言いますと、16ケージ何十メートル巻きとかのやつですかね。私も買ってみたことはありますが特に問題ないようです。
安価なものは、秋葉原のケーブル屋に売っていますが、交通費を考えたらアマゾンさんで問題ないと思いますよ。
はい。14/16ゲージが15m/30mで売っているやつです。
家庭の5.1ch用途なので、10m引くというようなことはありません。
ちょうど16ゲージがセールになっていたのでさっそく注文しました。
丁度セールとは運が良くて羨ましいですね。
もしケーブルで音が悪いなどありましたら、コメント頂けると幸いです。
5.1ch 用途ですと、 AV アンプ側に音場補正機能があったりするので、なおさら、ケーブルなんか気にするだけ疲れるだけです。