†意識の記録† 理解のブログ

私の私の視点による私の経験の記録。私の視点で見る限り誤りのない認識で記事を書いている。一切の苦情は受け付けない。

サトリアンプ

2019-07-24 00:40:31 | Audio
こんばんは。

最近、オーディオの話題ばかりの気も致しますが、まあ、それだけ私の好きな話題ということで。

私が電子工作を始めた頃、もう十年以上前になりますか、その頃と今は、自作界隈が大きく縮小しています。
理由は単純で、ディスクリート回路をお勉強して組もう、という方が減っているからですね。
そのようなことをしなくても、 IC チップ一つに、周辺回路をちょろっと、リファレンスのまま載せてあげれば、ヘッドフォンアンプにしろ、パワーアンプにしろ、簡単に製作出来てしまう。

これは個人的な意見ですけれども、電子工作というのは、自分で設計して初めて意味があるのであって、誰かが決めた設計図通りに製作するのは、かなり消極的な趣味だと思うのです。

デジタル回路の場合、つまり、マイコン工作の場合は、プログラムを書くことが第一(最重要)ですから、これはまさに自分で設計している。
アナログ回路の場合、基礎的な回路の構成は既に誰かがやっているとしても、回路定数を自分で決めるなど、設計要素は沢山ある。
実際に製作する段となれば、それこそ、回路図に無いノウハウを調べるなり、教えてもらうなり、或いは編み出すなりして会得しなければならないわけです。

最初から最後まで、手取り足取りやってもらって、言われたとおりに箱を加工して、はんだ付けして、配線して、というのは違う。
それで満足するのは、模型で言えば、それこそ子供が説明書通りに組み立てて満足しているのと同じ。
それを悪とは言いませんけれども、ちっともクリエイティブではありません。

言うなれば、観光地へ行って、ガイドブックの写真と同じところで、同じ写真を撮って満足して帰ってくるようなもの。
日本人にはそういう方が多いですけれども、私なんかは目的は適当に一つぐらい決めておいて、後の時間はぶらぶらです。
最近は、 SNS で公開する写真を撮る為に出掛ける人も多いのでしょうが、そんな承認欲求は下らないものです。

私のブログにしても、誰かに認めてもらう為のものではなく、私が後で見返す為の記事が殆どです。
長くやっているから、古い考察記事なんか、本当に楽しく読めます。
長くやり過ぎて、手元にファイルがない記事も多いですし、こういう積み上げ型のメディアっていいですね。


おっと、こういう話はとりとめがなく長いので、やめましょう。

今日は、サトリアンプの紹介をしたいと思いました。


サトリアンプというのは、自作界隈でそこそこ有名な、とある増幅回路形式に付けられた俗称です。
具体的に言うと、カレントミラーによる増幅ですね。

カレントミラーには様々な形式がありますけれども、単純に言えば、ある電流に対して、決まった倍率を掛けた(一般的には 1 を掛けた)電流を、別のところで流す回路です。

例えばですよ、 1mADC ± 0.1mArms 流れていて、その 1倍を他のところで流してくれるわけです。(電流ゲインが 1倍ということです。)
その“他のところ”に、適当な抵抗を挿入すれば、任意の電圧信号が得られますね。
後は、それをバッファ回路に通せば、ヘッドフォンなり、スピーカーなりが鳴るわけです。

そもそもの電流信号は、電圧信号を抵抗器に通せばいいですよね。こういうのを、 V/I 変換、 I/V 変換と言います。
イメージとしては、 1mA に対して、 1kohm を挿入した時と 2kohm を挿入した時では、電圧降下が 2 倍異なるので、これがそのまま電圧ゲインとして利用できるというような話ですね。

このサトリ方式の利点は、オーバーオールの負帰還を用意しなくて済むということです。
(オーバーオールの負帰還を用意する形式にもできます。)
※ 無帰還というわけではなくて、カレントミラーで局所帰還が掛かってい(るのが普通でござい)ます。

抵抗器で V/I, I/V 変換しているなら、カレントミラーによる電流のコピーが可聴帯域に於いて完璧でありさへすれば良いのです。
これはオペアンプなど使わなくても、少ないディスクリート部品で達成できるので、比較的シンプルに高性能が得られ(るということになって)ます。


さて、この回路に、どうしてサトリなんて格好いい名前がついているのか。
これは、自作界隈では有名な話で、今更私が紹介するまでもないので、適当にググってください。
ともかく、何かに悟って、サトリアンプと呼ばれるようになりました。

先ほど書きましたが、カレントミラーが完璧であるほど、電圧増幅が完璧、つまり、低歪になる。
ということは、モノシリック IC として、カレントミラー回路を製作し、素子のバラつきを抑えられればよい理屈です。
それを目指して、結局失敗した会社が、サトリの名付け親が始めた、バクーンプロダクツです。

今でも細々とやっていますが、アンプはもう自作というレベルの話ではなく、オカルト混じりで、価格は大変なことになってます。
音は素直という評価が多いようですが、試聴したくても難しいですね。

で、モノシリック IC 化を目指していたのですが、資金が貯まる前にオーディオが斜陽というわけです。
その為、ハイブリッド IC のサトリ回路が販売されています。
何のことは無い、ただの高精度なカレントミラーですが、ともかく高い。小さな基板にいくつかの(結構あるけど)トランジスタを載せただけで、非常に高価。
あれはもう、バクーンプロダクツとサトリ回路というブランドを、プラセボ効果の為に買うに等しい。

しかも、今は分かりませんが、昔は、カレントミラーという言葉は使はず、抵抗器だけで増幅するサトリ回路、などと紹介していました。
抵抗器だけで増幅し、それを実現する為だけにサトリ IC を使うから、原理的に低歪という理論。
サトリ IC に使用されているトランジスタとかは気にしなくていいんだよ、という話でした。
それにしては、基板の材質で音が変わるとか言っていて、不思議な会社です。


まあ、そういう面白い話は置いておいて、カレントミラーが電圧増幅に使えるよ、という紹介をしたかっただけなんでごぜーますですよ。

カレントミラーというと、差動対の能動負荷とか、定電流源としての利用が殆どだと思います。
殆どの人は、積極的にゲインを稼いで、オーバーオールの負帰還に喰はせて、静特性を上げる設計をします。というか、世の中の 99.99% のアンプはそうなってます。
ただ、私はそういうあり触れた設計ではなく、電圧増幅部のゲインは低くて、そこにバッファを付けただけ、という回路に面白味を感じます。
(それが良い音だと言っているわけではありません。)

オーバーオール負帰還がないので、バッファ部で生じる歪はキャンセルできません。となると SEPP で組んだバッファののクロスオーバ歪なんかが問題になるはずで、その辺がまた面白い。
(別に FET 差動対で入力を受けたって、初段の歪みが負帰還でキャンセルできる訳じゃないですし。)


増幅回路のトポロジーと言いますか、部品を色々と紹介した記事なんか書いてみたいなあと何年も前から思っているのですが、なかなか難しい。

例えば、ぺるけ式のアンプは、特性を揃えた(つまり選別した) FET 差動対に、ダイヤモンドバッファを組み合わせたものです。
今では知る人ぞ知る、さいたまオーディオのアンプは、非反転増幅のオペアンプにダイヤモンドバッファを組み合わせたものです。
たかじんさんのアンプは、 2SC1815 の差動対を初段、エミッタ接地を次段に置き、2段ダーリントンバッファを組み合わせたものです。

こういうのの、解説記事を書きたいですね。
そして、部品を色々と紹介して、組み合わせ例なんか書けたらなあって、そこまでやったら本に出来そうですが、まあ、死ぬまでにやりたいですね。


以上。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« オーディオのオカルト | トップ | 終戦の日を前にして »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

Audio」カテゴリの最新記事