おっさんのライフサイズ(classic)

- 過ぎていったこと 選ばなかった道 何もかも、覚めてしまった夢と同じ -  『この世界の片隅に』より

自分が初めて『ノルウェイの森』を読んだ時のこと

2010-12-17 00:00:20 | ドラマ、映画、アニメ、芸術
公開初日に映画『ノルウェイの森』を観てきました。少し感想を…若干のネタバレがあるので、それを好まない方はお控え下さいね。

ツイッターの方でもほんの少し書いたけど、原作独特の空気をうまく踏襲した作品になっていた。台詞もほとんど小説のままだったし、自分の頭の中で映像化されていたシーンともあまりブレがなかったし、最初は「どうなんだろう?」と思った配役も、うまくそれに近いフィット感があったのではないかと思います(緑役の水原希子ちゃん、可愛かったなぁ)。映像も美しかったし、エンドロールに流れるビートルズの『ノルウェイの森』には鳥肌が立ちっぱなしでした。観られた方がいらっしゃったなら、ぜひ感想をいただきたいものです。

ただ…原作を読んでいたから自分はその空気が理解できたけど、初めて観る方にはちょっと難しいかも。言わば、その象徴的な部分の映像としての補完…と言ってもいいかもしれない。それに原作を知ってる方ならおなじみのシーンが多く省かれていたこと。小説冒頭のシーンや井戸、ラジオ体操、蛍、キウリ、寂しくないお葬式、上野駅…書き切れない(笑)。突撃隊の登場シーンも少なかったし…でもこれらを入れてしまうと、おそらく小説同様二部に分かれてしまうだろう。それにさまざま登場する洋楽達がほとんど出てこなかったり…村上作品に音楽は切り離せないと思うんだけど、これはきっと権利の問題とかクリアするのに大変なんだろう。ビートルズの原曲を使用できただけでもステキなことだけど。





写真は自分が持っている『ノルウェイの森』の本たち。単行本に文庫本(下巻は今枕元にある)、そして大学時代に買った英訳版(頑張って読破しようと思って買ったけど、あえなく断念)。これを書いていて、ふと…初めてこの小説を読んだ時のことを思い出した―高校2年生の時。それまでまともに小説を読むなんてことは、”現文“の授業の時以外はほとんどといっていいほどなかったんだけど、それからはこの小説の主人公、ワタナベくんが読んでいた『グレイト・ギャッツビー』のように愛読書となった。その時は…ぼやっとした”死”というものを意識したと同時に、多感な時期と重なったせいか、性的なことを過剰に意識する自分がいた。

それから10年近く、どういうわけか決めたわけでもないのに、毎年2月になったら『ノルウェイの森』を読み返すようになり、そしてその自分の環境によって毎回違った読後感を持つようになった。感動してしばらく現実世界に戻れなくなったり、付き合ってる子がいなかった時はたまらなく孤独が嫌になったり、時には無性に”アレ(読まれたり映画を観られた方なら分かりますよね?)”がしたくなったり…。

でもこの小説、そして映画から出てきた本当の思いは、作中でハツミさんが自分の一部を気付かせてくれたように…おそらくずっと先に、ふとした何気ない瞬間にそれを思い出しそうな気がする。


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