OVA《ぼく地球》が作られたのはかれこれ30年前。
今日は、その頃の私の記憶に残る、有本欽隆さんとラズロに関するエピソードを書き残しておきます。
有本欽隆さんは素晴らしい役者さんで、お声も大変男前。
ただ残念なことに、2019年2月1日に亡くなられてしまいました。
🌾🌾🌾🌾🌾🌾🌾🌾🌾🌾🌾🌾🌾🌾🌾🌾🌾🌾
ラズロが出てくるOVA《ぼく地球》6巻のアフレコ。
桜井女史は、作者チェック用の席をアフレコスタジオのディレクターさん側近くに設けてくださいました。
要望が有ればディレクターさんに相談し、マイク越しに役者さんへとお願いして頂く段取りです。
もう少し高い声で、とか。
もっと強めに、とか。
ディレクターさんのチェックはとても的確で、コチラに振り向いて
『何か要望あります?今のところ』
…と訊いて頂いても、ほぼ『いえ、コレで大丈夫です』と答える感じでした。
そしてラズロの出番がやって来ます。
私は事前に桜井女史にこうお願いしておいたのでした。
『ラズロなんだけど…ちょっと冷たい感じでセリフ言ってって伝えておいて欲しいんだよね』
桜井女史は特に理由を訊く事もなく『わかった!ちゃんとそう伝えておくからね』と引き受けてくれました。
スムーズに私の要望はそれで伝わるでしょうし、滞りなく今回もアフレコも終了するものと思っておりました。
有本欽隆さんは桜井女史がラズロの為に起用なさった役者さんで、私は当時余り存じ上げておりませんでした。
けど声質はもぉバッチリで。
満足行くラズロが誕生するなと安心しきっておりました。
しかもディレクターさんが、逐一こんな感じで?もう少しやさしく?冷たく?と私に塩梅を尋ねてくださるので、こりゃあ嬉しいぞと。
さて、そうして暫くしてからのことでした。
考えもしなかった展開が訪れます。
有本さんが作者さんと話がしたいと。
えっ⁉️Σ(゚◇゚ノ)ノ
録音ルーム側へいらして話したかどうかの記憶は曖昧なのですが…
とにかくストレートにこう言われたのでした。
『あのぉ…これ、もっと優しく言いたい。優しく言いたいんです。
もっと優しく言うのは…ダメですか?』
(´⊙ω⊙`)‼️
コレで私…なんと固まってしまいました💦
どう説明してイイのかが判らなかったからです。
マンガって声は付かないじゃないですか。
けどアニメには役者さんの声と演技がつく。
この違いの意味を…多分この頃の私はよく理解出来ていなかったのかもしれません。
役者声優さんは何と言いますか、恐ろしく勘が良く冴えていて。
描き手の要望をキャッチする術が巧みで。
技術も素晴らしい。
作品の質を向上させた仕上がりの声と、演技表現をしてくださる。
けど、だからこその展開なのでした。
つまり、擦り合わせ作業だった訳ですね。
有本さんにとっては、この場でいきなりラズロになられる訳です。
けど一方の私は。
今まで引き篭もって好き勝手にキャラに演技させて来たオタクマンガ描き。
今回の様に役者さん御本人から…
『こう演じたい』
…そう言われた時の対処なんて考えた事ももなく。
《ラズロ》というキャラに関する解釈の違いを埋める作業ですよね。
当然だと思います。
編集部の担当氏となら話し慣れてはいましたが…
声優さん相手に、声の演出での擦り合わせは想定外過ぎてですね💦
恥ずかしい話なのですが、当時の私はコレを上手く説明する手段も話術もなく。
とにかく、若干少し冷たい感じで言って欲しいんだと繰り返すばかりなのでした。
=͟͟͞͞(’、3)_ヽ)_
理由を訊かれて自分でも戸惑いました、なんでだろうと。
よく判らないけど、実際にラズロが紫苑に話し掛けるとしたら。
ただ優しい言い方じゃダメなんですと。
そういう強い気持ちだけが有ったのでした。
お優しい有本さんは…
『分かりました。…けど、難しい。すごく難しいです』
そう言いながら真面目にガラスの向こうへと戻り、演じ切ってくださいました。
しかしてOVAの6巻は出来上がりました。
その頃のウチのスタッフは時々言うのでした。
『ラズロさぁ、もう少し優しく話して欲しかったなぁ』…
_(:3 」∠)_…………
=͟͟͞͞(’、3)_ヽ)_ ……………
私は落ち込みました。
その30年後。
2023年3月12日《ぼく地球🌏LIVE》サクラタウン2日目アニメ上映会での事です。
そんな私が改めて、OVA《ぼく地球》1巻〜6巻までを。
本当に改めて、1日で、通しで鑑賞した訳ですね。
🌾🌾🌾🌾🌾🌾🌾🌾🌾🌾🌾🌾🌾🌾🌾🌾🌾🌾
ちょっと長くなったから後編に続く。。。
(•’╻’• )/