まちかど逍遥

私ぷにょがまちなかで遭遇したモノや考えたコトなどを綴ります。

大倉集古館の道すがら

2021-05-25 23:02:58 | ディテール
大倉集古館へは虎ノ門駅が最寄りだが、安さと乗換の少なさからJRを利用して新橋駅から歩いた。
都心へ出かけるのを控えている人が多いからか、休日の昼間の新橋駅前は人通りが少ないというよりもガラガラだ。
近所のスーパーよりもよっぽど人が少ない。ニュー新橋ビルのマッサージ屋のお姉さんたちも暇そうに店先の椅子で
スマホをいじっている。商売あがったりで本当に気の毒だが・・・タイルを見るには人目が気にならないので助かる。


2ヶ所の階段は色違いのタイルが使われていた。こちらはブルー系。階段ホールの床から天井まで壁一面にびっしりと
正方形のざらっとしたタイルが凹凸をつけて貼られている。立体的なレリーフのようだ。ぽつぽつと濃い
ブルーのタイルが使われ、壁の入角の部分は役物ではないがアールをつけて丁寧に貼られている。
あぁ素晴らしい。


凹凸貼りは陰影がついて面白い表情になるのと同時に、タイルの厚みを感じることができる。タイルの厚みは
そのままそれが作られ、運ばれ、貼られた手間暇や、経てきた時間に思いを至らせる。それが建物に深みを与えるのだ。


こちらの階段は同じタイルのクリーム色バージョン。ずいぶん印象が変わるものだな。踏面と蹴上が一体で
作られた階段のデザインも優美。




エスカレーターホールにはまた素晴らしいタイルが使われている!緑がかった水色の大型のひし形のタイルと、
その半分の正三角形のタイルの組み合わせ。
エスカレーターに乗りながら写真を撮ろうとしたらシャッタースピードが遅くて撮れない・・・と思ったら
B1に素敵な壁があるじゃないの。ここなら動かないのでゆっくり撮れる(笑)。


こちらは釉薬がこってりと載っていてつるりとした質感。
正三角形のタイルをランダムに混ぜていることで大面積の壁でもパターンが退屈になっていない。


そして角の部分に同系色の役物が使われていた。立体だからだろう、釉薬が流れていい感じ。土も違うな。


外壁を組子のようなスクリーンに覆われた外観は駅のホームや電車の車窓からいつもうっとりと見ていたけど、
人の多いホームでカメラを構える勇気がなかった(苦笑)。


はぁ~~なんて素敵なのだろう!1971(昭和46)年にオープンした戦後初の再開発ビル。
今検索したら、仕事でちょっと絡んだことのある松田平田設計が設計していたのか。→こちら
商業、オフィス、そしてなんと上層階には住宅も入っているという(!)複合ビル。
住所にニュー新橋ビル10F、とか書けたらカッコイイなぁ~~


1ブロックを丸々占めるビルだからこそできるデザインだし、今のビルは下層部を高い高い吹抜けやガラス張り
にしたデザインが多いから、こういうファサードにはならない。やっぱり私はこの時代のビルが好きだ。


駅前を抜けて繁華街はさらに人通りが少なかった。
昭和50年代ぐらいまでのビルは小さな雑居ビルでも全面タイルが貼られているものが多い。


茶系と青系の組み合わせは大好き!この色合いにはもう胸キュン~~


昭和の小さな事務所ビルのガラス扉にはこういう感じの素敵な把手がついていることが多い。これは焼き物で、
ちょっと分厚いタイルとも言えそうだ。


透明の釉薬溜まりが深い淵を思わせるドア把手。


これは河井寛次郎風の、味わいのある辰砂の赤と呉須の青の組み合わせ。あぁ惚れ惚れ~~~


これらのビルは昭和4~50年代だと思う。この時代、こういう把手はカタログに載った製品として販売
されていたのか、それとも特注なのだろうか。タイルにしても、把手にしても、こういう工芸的な趣のある
ディテールが普通に使われたのはせいぜい昭和50年代までだろうな。


遠目にふと気になって近づいたビル、めちゃくちゃ正解だった!喫茶店はお休みだったけど、1階のファサード
が全面タイル!!




見て!!このまろやかで絶妙な色合いを!!「何色」と形容できない中間色ばかり、これは狙って作れる色では
ないだろう。もう火の神様のいたずらとしか思えない微妙な色差。はぁ~~~(惚)


うっとりしながら何枚も写真を撮っていたら、向かいのベンチに座っていたカップルが変な目で見るので(苦笑)
いったんその場を離れ、帰りにもう一度立ち寄って続きを楽しんだ。


あぁ今度喫茶店が営業しているときに来て中も見てみたいなぁ。


戦後の魅力的なビルや、路地があったり、こんな大谷石の塀の痕跡など、意外と古いものが残っている新橋の
まち、ちょっと歩いただけだけどとっても面白かった!

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