2007年8月の第4週(平日)に、山梨県の三ッ峠山に登った時のレポートです。
もともとこの日は、はじめての山小屋一泊登山に挑戦しようととった連休の一日でしたが、
降水確率60%に断念してしまいました。それでも山を諦めきれずに天気予報を見ていると、
山梨の富士五湖周辺だけが不思議と晴れ模様だったのでした。
とはいえ夏に低山は暑いしちょっとなぁ。 でもこの天気予報なら富士山がよく見えるかもしれない。
こういう機会でもなければ、低山の緑の季節を見ることもないかも。
いろいろある候補の中で、8月も登山適期で、展望が良くて高山植物が豊富なことで有名な三ツ峠山を選びました。
行ってみよう。「雨雲の隙間の山」へ。
【ドライブルート・登山口情報】
三ッ峠山には登山口が複数あります。行程が一番楽な三ッ峠登山口から登りました。
ルートはあまり一般的な呼称ではないようですが、“裏口登山道”(またの名を“西川ルート”)です。
河口湖の東から国道137号を北上し、新御坂トンネルの手前で県道708に右折。
3kmほど走ると道の荒れた林道への分岐があるので、そちらへ進んで走って行くと、三ツ峠登山口です。
(冬季通行止めの情報ありますが詳細は不明)
三ッ峠山コースデータ
三ッ峠山標高断面図
三ッ峠山 歩いたコースの概念図
(※この概念図は山頂付近があまり正確ではありません。木無山・開運山の辺りには図にはない繋がった道が存在します)
富士急行公式ホームページのルートマップへリンク(時間等詳細)
ダート気味の林道の行き止まりの三ッ峠登山口。
目の前にトイレ舎の建つ駐車場があります。
ここが満車の時は、林道の手前(登山口から徒歩15分位?)に整備された広い駐車場があって、ここと合わせて30台くらい駐車可能だそうです。
女性用トイレ内部調査。
照明もあるし、何よりきれいです。
しかもベンチと暖房がついてます。
(ただし暖房機のスイッチ稼働の可否は不明)
積雪期も登山する人が多いんでしょうね。8:00 三ツ峠登山口 出発
この先の山小屋までタクシーで乗り入れできるそうです。
(山小屋利用者専用かも)
そのためとても広く均された道を歩いて行くことになります。
ここのコースは歩き始めから植林がないのがとっても素敵でした。
明るい広葉樹の道がつづきます。
なんて気持ちのよい天気…
遠くの山々はみんな降水確率60%って ほんとかなぁ?
しばらく歩いていると、はじめはまばらに咲いていた
赤紫(ほぼピンク)色のお花が、どんどん増えて来ました。
この道沿いにはこのかわいらしいお花が点々といっぱい咲いていました。
きゃーなにこれー めちゃくちゃかわいいじゃないのよーっ

うふふ、うふふ
そしてこの先、次々といろんなお花が登場します。
どこかの高山で見たことのあるお花が、まさかここでも見られるなんて。
三ッ峠は高山植物のお花が咲いてるって話も、さすがに1800mにも満たない低山でそれはないだろうとにわかには信じがたく、ここまでとは思ってもいませんでした。それが登り始めてすぐ、こんなにお花に迎えてもらえるなんて…
感動だわーっ

高山植物って、高山にしか咲いてないわけじゃないんですね。
山梨県の低山でも、咲いてるものなんですねぇ。
オンタデ/シモツケ/メタカラコウ(多分)/ソバナ
ソバナってかわいい。あれに似てますよね。なんだっけ、そうそうツリガネニンジンとかハクサンシャジンとか。
こんなにかわいいお花がいっぱい咲いてるのに、この道をタクシーとかキャタピラの着いた車が通るんですよ。
(山頂の電波塔などの建造物を造るため)
本当によかったんですか?と疑問に思うほど、お花がきれいです。
よりにもよってなんでこの、お花に恵まれた山にそんなものを造るんだろう。
もちろん適当じゃなく、電波の放射が計算されて、尚且つ重機が入りやすい地場環境があって
この山が選ばれているのは素人考えでもわかるし、そういう自分だって
電気のおかげで快適な生活を過ごしている中で、そこに見えてない犠牲や破壊があるのはわかってるつもり。
山を歩いてる自分自身が自然破壊をしてるわけだし。
そういういろんな矛盾がいつも胸を苦しくします。お花がかわいくて。あんまりかわいくて。
少なくとも車が走るようになる前は、もっともっと、たくさんの花々が咲き乱れていたんでしょうねー。
イヌヤマハッカ(多分)/レンゲショウマ
これは何ていう名前かな?
群生してました。
※テンニンソウというそうです。
テントミータカさん、教えていただいてありがとうございました^^
9:30
三ツ峠山荘
ちんたらちんたら、お花を見ながら歩いてかれこれ一時間半。
(遅い。遅過ぎる)三ツ峠山荘に出ました。
ここには展望台のようなテラスがあって、コース中で最初に出会える富士山の好展望地です。
お~っっ 富士さ~ん
こちらは道志山塊です。目立っているのは今倉山・御正体山・鹿留山。左の遠くにはうっすらと丹沢山塊も見えてます。
(カシミール3Dで山座同定しました)
日本アルプス方面からつづく周りの空を見渡してみると、確かに晴れているのはこの富士山周辺だけで、
遠くはもくもくと重そうな雲におおわれていました。
天気予報はあたってるんだ。それにしてもすごい。ここだけぽっかり晴れてるなんて。
この山荘からほどなくして、開けた場所に出ました。おおーなんだここは。広々してるなー。
ベンチもあるので、ちょっと小休憩しつつ、梅干しを食べました。
夏山でいっぱい汗をかいてる時に食べる梅干しは、すごく甘く感じておいしいんですよねー。
普段は酸っぱいの大の苦手で、梅干しも嫌いなんですが、
登山中のカリウムとクエン酸の大切さを知り、食べるようにしてます。
目の前にはでっかい電波塔や反射板を飾りつけた三ツ峠山(開運山)が見えます。
ここを通過してすぐ四季楽園という山小屋もありました。この前を通っていくようになってました。

四季楽園の裏手にトイレがありました。(200円位の有料とのこと)
……なんか、普通に電線が通ってるんですけど…
登山気分が下がるー
なんとここからしばらく、建造物を目にしながらの登山が続きます。
廃墟みたいに錆びた鉄材の柱。 建物には「NTT」とか書いてあるし。 有刺鉄線とか、フェンスもあります。ええーっと今、登山してるんだよね。人里に降りてきたわけじゃーないんだよね…
再確認しないと、山奥にいるって感じがしなくなってきて、心が戸惑います。
お花の見事さもまさかここまで素敵とは思ってなかったけど、こっち(建造物の多さ)もすごく予想外です。
建物や人工物は目に入らないように、視線をわざとそらしてみる…。
あー、緑がまばゆい、お花がきれい。
気持ちのよい広葉樹林の道は、さっき見た冷たいカタマリを忘れさせてくれます。 ひらひらとたくさん舞い飛んでいるアサギマダラ。なんてきれいなんだろう。うっとりしちゃう。
三ツ峠はこの蝶がたくさん棲んでいることでも有名ですね。
三ツ峠山は開運山・木無山・御巣鷹山の3つの山を総称しているということなので、
歩いてれば自然とそれぞれの山頂に出るだろうと思ってたんですが…、しっかり見てるつもりなのに
道標に向かって進んでも、どうも木無山と御巣鷹山の分岐が見つけられません。
こっちに進んだらあるはずの方向を、地図を見ながらプーラプラ。
マツムシソウが一輪だけ咲いてました。

すると何やら開けた場所に出て、ドーンと反射板。
(テンション下

ここで上の方から人の声が聞こえてきたので進んでいくと、階段がありました。
数名の方が下りて来たので、道を譲りながらお話をうかがってみると、
この上が開運山の山頂だそうです。
あれーっ?結局、御巣鷹山はどこから行けばよかったんだ?
「さっき上から、あなたが広場にいるのが見えたよ。今日はどう周って行く予定なの?」
と尋ねられたので、
「山頂でのんびりしてから下山しようかと適当に考えてます」とプカプカ。
「他の三ッ峠は周らないの?」
「周ってくるつもりだったんですけど、分岐が見つけられなくて」
「あそこに見えてるのが御巣鷹山で、あっちが木無山だよ」
と示された木無山はさっき歩いて来た方向でした。
そういえば木無山の山頂の分岐はどこだったんだろう?三ツ峠山荘の近くにあったはずなのに…
(答え:さっき通過した三ッ峠山荘は分岐の合流地点で、北に進んで来て今ここにいる。分岐を南に進めば木無山に行けた模様)

おーっ誰も人がいない。いいタイミングだったなー
10:25 開運山(三ッ峠山)山頂【休憩1時間】
一部、写真以外にも木立が点々と展望を遮っているので、
365度の眺めではありません。
でも富士山方面は最高です~
今日の富士山はさっきからずっと帽子をかぶってます。
御坂山地(黒岳・御坂山)です。位置的に、晴れていれば南アルプス連峰もずらっと見えそうです。
まるでグラウンドみたいにぽっかりと、さっき歩いてきた広場と四季楽園が見える。
さっきすれ違った人は、あそこにいたわたしの姿が山頂から見えたよって教えてくれたんだな。
あの真ん中で踊ったりしたら相当目立ってしまうんだろうなー。いや踊らないけどさ。(笑)
まさか山頂からこんなによく見えてるとは思いもせず。
誰かに見られてるとは全く思ってなかったから、今になってみると何気に恥ずかしいかも
道志山塊とか丹沢山塊方面は木立が多少隠してしまい、三ッ峠山荘ほどの眺めではありませんでした。
今日の山ごはんは、イカの燻製入りトマトピラフバター風味です。名前だけはいっちょまえ。
しかし出来栄えは…
アルファ米の水加減にまだ慣れていないため、お粗末なリゾット状態になってしまいました。
かなり不味そうだな、この写真。
しかし、山の上でジュージューとバターで香ばしい炒め物を調理するって、なんて至福なんでせう。
食後のみかんゼリーがこれまたたまりませんのぅ
どれどれ、ふーむ。あれが御巣鷹山か~
すっごい電波塔だなぁ…建物も建ってるよ…
あそこ登山で行っていいのかしら。でも三ッ峠山は3つの山の総称だしなぁ。
せっかくだからちょっと寄り道してみようかな。

山頂の石碑の向こうに草木を分けた道があるので、進んでみました。
抜け出るとそこにもなんか建物が…
あぁ、現実に引き戻される…
緑色の電柱。
そしてまた電線…。
それでもお花はいっぱいです
周りは清々しい樹林に囲まれているし、
足元はやさしい土。
電柱より木々を見上げよう。
葉っぱが美しい~
幸せです。
これでいいのだ。いいのだー
建造物はいくら見ないようにしようと思っても、
自然に目に入ってしまうぐらいあちこちに存在してます。
でもそれも、こんなきれいな道を歩いていると和んじゃう。
やっぱり舗装された町を歩いてるのとはわけが違うんだもんね。
さて、御巣鷹山は一体どこから行くのかな?
「至る宝方面」「清八笹子へ」
と書かれた手作りの案内標があるけど、さっきから御巣鷹山を標すものが見当たりません。道を間違えてないかな?地図と方位磁石で確認していると、奥から歩いてくる人がいました。
御巣鷹山の分岐をご存知か尋ねてみると、この奥にあるとのこと。その方は別のルートの下見に、ずいぶんと遠い所からここまで登って来たそうです。
道は間違えてなかったようなので、安心してそのまま進んでいくと、なんとその先にはお花畑がありました。
御巣鷹山の電波塔も見えているし、このお花畑の向こうに山頂があるので間違いはなさそう。
御巣鷹山を目指さなければ、このお花畑に出ることはありませんでした。
こっちまで来てよかったぁ
かわいいワレモコウ。

「至る山頂」って書いてあるけど…多分御巣鷹山のことを指しているんだろうな。
ひと登りして着いたのがどうやら山頂。
13:15 御巣鷹山 山頂

立派な施設ですこと…。
辺りをうろうろしてフェンスの周りをぐるっと周ってみても、どこにもピークらしい場所がありません。
ここってやっぱり、普通は登りに来ちゃいけない場所なんじゃないの?
もちろん昔は建物なんかなくて、御巣鷹まで登るのは当たり前だったんだろうけど。今はなんだかものものしい雰囲気です。
眺めも何もありませんし、休憩するところもありません。
三角点がどこかにあるんだろうけど見つからず。
何しにここに来たんだろう…すぐ下山しました。
ふぅ。でもこっちに来たおかげで、お花畑が見れたからよかった~。
もう三ツ峠三制覇なんてどうでもよくなったぞー
登山道はいつまでも明るく陽が差し込んで、お花もうれしそう。
わたしもうれしい!
木陰の樹林にまたアサギマダラがいました。
写真を撮ろうとするころにはみんな遠くに飛んで行ってしまうので
あまり残せていないけど、今日はもう何匹もお目にかかってます。
シモツケソウ/レンゲショウマ
レンゲショウマはこの山ではじめて知りました。咲いているのは必ず薄暗い樹林帯で、木漏れ日を浴びた透明感のある花びらがとても印象的でした。
再び四季楽園に戻るころには富士山は雲に隠れてしまいましたが、この日は一日おひさまが隠れることなくいい天気で、
とっても気持ちのよい山登りとなりました。
そうそう、8月だというのに三ッ峠山は不思議と空気もヒンヤリしてて、まったく暑くなかったんです。
低山でも涼しいところがあるんですねー。この辺りは冬も雪深いようだし、
それがこの豊富な高山植物を育んでいるのかなぁ
15:10 三ツ峠登山口 駐車場に到着
三ッ峠山は展望が秀逸とか、富士山の眺めが日本一だとか謳われていますが、
果たして言われている程優れているかというと、少々疑問でした。
(晴れていたら南アルプスもよく見えてきっと印象も違っていたかな?)
でも樹林はとても美しくて、豊富な高山植物に恵まれていて、なおかつアプローチの楽なコースまで整っていて、
登山道に電波塔さえなければ、魅力のあるすてきな山です。
昭和30年代頃、三ッ峠山はとても人気があったそうです。その頃にはまだ今ほど建造物もなかっただろうし、
お花ももっといっぱい咲いていただろうし、今語り継がれている評判は、当時の名残りなのかもしれません。
またお花の季節に登りに行ってみたいです。

いつもご覧頂いてありがとうございます!