経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

おカネが 減り始めた! / アメリカ (上)

2023-02-21 08:31:10 | おカネ
◇ 量的引き締め政策の効果が現われる = アメリカでは、通貨流通量の減少に大きな関心が寄せられている。FRBの量的金融引き締め政策によって市中のおカネが吸い上げられ、しだいに流通量が減ってきた。これが物価や株価などにどう響くか。政策金利の引き上げは、いわば顔面パンチ。これに対して量的引き締めはボディ・ブロウ、じわじわと効いてくる。

FRBの発表によると、昨年12月の通貨流通量M2は21兆2074億ドルだった。M2というのは、現金や普通預金、それに個人向けMMFなどを合計した通貨の流通量。要するに、個人や企業がすぐに使えるおカネの総量だ。FRBが量的引き締めを開始した昨年5月が21兆7397億ドルでピーク。そこから5323億ドル、率にして2.5%減少した。

通貨の流通量が減ると、おカネの価値が上がるから、物価には引き下げの力が働く。だが同時に株式や暗号資産、不動産や商品なども下がりやすくなる。これらの市場価格は、金融緩和政策とコロナ対策による現金給付でバブル症状を呈していた。それが逆方向に巻き戻されることになるからだ。

流通量はピーク比で、まだ2.5%しか減少していない。だから、これまではその影響をあまり感じなかった。しかし最近は暗号資産が売られ、高級な装飾品や時計の売れ行きが落ちてきている。これは「おカネの流通量が減った結果だ」という指摘も。この調子で通貨の流通量が減って行くと、どうなるか。FRBの利上げにばかり気を取られてきた市場も、ようやく量的引き締めの影響を重視するようになってきた。

                         (続きは明日)

        ≪20日の日経平均 = 上げ +18.81円≫

        ≪21日の日経平均は? 予想 = 下げ≫、
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今週のポイント

2023-02-20 08:31:41 | 株価
◇ 円安でも株は上げたり下げたり = ダウ平均は先週43ドルの値下がり。ここ3週間続けて小幅に下げている。終り値は3万4000ドルを割った。雇用統計に続いて消費者物価、小売り売上高などインフレの持続を示唆する経済指標が発表されたが、株価は大きく動かなかった。ただ市場では「浅い景気後退は避けられない」という見方が弱まり、「景気後退は来ない」という強気論が広まっている。だが、それもすぐに逆転するだろう。

日経平均は先週158円の値下がり。2万7500円を軸として、小幅に上下動した1週間だった。こちらも高騰を続ける企業物価などの発表には、ほとんど反応していない。また円安が進んだが、市場はこれを材料に輸出関連銘柄を買ったり売ったり。どうにも方向感を失ったように見受けられる。

日米の株価は、いぜんボックス圏のなか。あまり外部材料には反応せず、上限に近付くと利益確定売り。下限に近付くと安値拾いの買いが入る展開。この状態はいつ、何をきっかけに終わるのだろうか。景気が‟軟着陸”するかどうかは、事後にならなければ判らない。当面はやはりパウエルFRB議長の一声が、相場を動かすきっかけになるのだろうか。

今週は22日に、1月の企業向けサービス価格。24日に、1月の消費者物価。アメリカでは21日に、1月の中古住宅販売、2月の製造業PMI。23日に、10-12月期のGDP改定値。24日に、1月の新築住宅販売が発表される。なお24日に、植田次期日銀総裁が国会で所信を表明する。

        ≪20日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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国難だ! ‟異次元”の 貿易大赤字

2023-02-18 07:38:44 | 貿易
◇ 消費税収がそっくり海外へ流出 = 日本の貿易収支が、文字通り‟異次元”の大赤字を続けている。財務省が発表した1月の貿易統計によると、輸出は前年比3.5%増加の6兆5512億円。輸入は17.8%増加の10兆0478億円。この結果、貿易収支は3兆4966億円の大赤字となった。この赤字幅は単月としては過去最大。貿易赤字は18か月連続している。

輸出は中国向けが減少して、伸び悩んだ。だが大赤字の元凶は、やっぱり輸入の急増。特にエネルギー輸入の爆発的な増加が、最大の原因となっている。石炭は前年比93.3%、LNG(液化天然ガス)は57.0%、原粗油は35.3%も増大した。これらを合わせた鉱物性燃料は48.8%の増加となっている。これには円安の影響も加わった。

ウクライナ戦争に起因する国際エネルギー価格の急騰、それに円安という環境は、まだ当分は続きそうだ。昨年の貿易収支は19兆9713億円の赤字だったが、ことしは赤字額がもっと拡大するかもしれない。いま国会では23年度予算を審議しているが、その税収見積もりをみると、所得税が21兆0480億円、消費税が23兆3840億円だ。その税収に匹敵する金額が、エネルギーの輸入代金として海外に流出していることになる。

これでは景気はよくならず、国民の暮らしは圧迫されるばかり。もちろん、エネルギーの輸入をなくすことは出来ないが、少しでも減らす努力はすべきだろう。にもかかわらず、政府・与党にそんな意識は感じられない。野党も国会では、重箱の隅を突つくような質問に明け暮れている。貿易の大赤字は、国難だという認識を持ってもらいたい。

        ≪17日の日経平均 = 下げ -183.31円≫

        【今週の日経平均予想 = 4勝1敗】     
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読者を惑わす 企業業績の新聞記事

2023-02-17 08:17:54 | 利益
◇ 日経は大幅減益、読売は最高益 = 日経新聞は11日付けの朝刊(東京版)で「上場企業、純利益25%減」という記事を掲載した。昨年10-12月期の決算発表がほぼ終了したため、東証プライム市場に上場する1035社の決算を集計。その結果は、純利益が前年同期比で25%の減少になったという内容だ。企業の利益が4分の1も減ったというのだから、これは大変なニュースである。

ところが、読売新聞は14日の朝刊(東京版)で「上場企業 最高益35兆円」という記事を載せた。こちらは上場企業の3月期決算を予測したSMBC日興証券の調査を報道したもの。それによると、昨年4-12月期の決算を発表した1163社の最終利益は、前年同期比で3.3%の増加。それに1-3月期の予想を加えると、全1314社の3月期の最終利益は0.1%増加して過去最高を更新するという内容だ。

この2つの調査は、対象とした企業の数が違うし、集計した時点も異なる。だから必ずしも、結果が一致するとは限らない。しかし「大幅減益」と「史上最高益」の記事が、整合することはありえない。たとえば読売新聞の場合、ことし1-3月期の結果が極端に悪化すれば、「最高益の更新」は難しくなるのかもしれない。

ただし日経新聞の記事にも、やや違和感がある。10-12月期の決算内容を精査したにもかかわらず、製造業と非製造業の集計結果については全く報道していない。ふつうなら「海外の景気鈍化で製造業はXX%の減益となったが、非製造業はコロナ規制の緩和でXX%の増益だった」などの解説を加えるはず。それがないから、この記事には何となく‟稚拙さ”が感じられる。はたして真実は、どちらの新聞が伝えているのだろうか。

        ≪16日の日経平均 = 上げ +194.58円≫

        ≪17日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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30年間で 22.5%しか成長していない

2023-02-16 08:20:18 | 景気
◇ 長期の経済計画を作れないのか = 内閣府は14日、昨年10-12月期のGDP速報を発表した。それによると、実質成長率は年率換算で0.6%にとどまった。内訳をみると、いずれも年率換算で個人消費が2.0%増、企業の設備投資は2.1%の減少、住宅投資は0.5%減少、輸出は5.7%の増加だった。コロナ規制の解除で経済の正常化が進み、個人消費が上向き。また円安で輸出が伸長した。それでも成長率はゼロに近い低さで推移している。

同時に発表した22年の実質成長率は1.1%だった。21年の2.1%から鈍化している。内訳をみると、個人消費が2.2%の増加、設備投資が1.8%の増加。しかし住宅投資は4.7%の減少、政府の固定資産投資が7.1%の減少。さらに輸出は4.9%増加したものの輸入が7.9%増加したため、外需が成長率のマイナス要因となってしまった。

「すべてはコロナのせいだ」と言う人も多いが、長期的にみても日本は超低空飛行が続いている。たとえば30年前の1992年の実質GDPは444兆9507億円だった。これが22年は545兆3423億円に増大している。だが、この間の増加率は22.5%に過ぎない。単純に割り算をしてみても、年間平均0.75%の成長。実際は複利計算の効果があるから、これより低くなる。

最近、政府は長期経済計画を作成しなくなった。もちろん、高度成長時代のように「10年で所得倍増」などはムリ。しかし「10年間でGDPを1割増やす」程度の計画は作ってほしい。そういう目標がないと、成長分野にカネや人手が回らない。1人当たりGDPで、韓国にも負けてしまう。夢がないから、若い人たちは安心して子どもを産めない。政治家諸氏のご意見を聞きたいものである。

        ≪15日の日経平均 = 下げ -100.91円≫

        ≪16日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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