付記3c: 自白剤
「どうなっても、知らないよ」と、皇太子明仁が言った。濃いネズミ色の背広を着て、まるで郵便局の窓口で小銭でも数えていそうなこの小男と、その傍らに立っている明仁の倍以上の体躯である武官との
付記3d: 祖(おや)の命令
ようやく意識が戻って来た時、布団の上に丸裸で横たわっている私へ、武官が白い着物を放って寄こした。...
付記4a: 北方領土
就学前に、侍従と護衛官を付けられて、海外へあちこち連れて行かれた中、「北方領土」へ行ったことがある。しかし、行ったことがあると自慢げに言うのも実は複雑な心持で、幼児の私にはどの辺...
付記4b: 頭が良くなる薬
四歳にして、すでに女官候補に挙がった。何のことはない、「倭国王の宝物」を所有する源氏の血統である私を、一生、宮内庁で管理しようというのだ。お妃教育ならぬ女官教育の「いろは」として
付記4c: ダイヤモンド、見たいでしょう?
皇居では、大抵、来客用の休憩室に通された。ちょっと高級なホテルの一室といった風で、二十畳くらいある寝室の右側の壁に作り付けの衣装箪笥があってその奥のドアを開けると、化粧室、またさ
付記4d: 跳ぶンだ!
アメリカの軍用機の中は暗かった。私たち幼児は(全員が皇室関係者の子供だったが)、飛行機が離陸すると、数分も経たないうちに座席から立たされて、乗降口辺りへ連れて行かれた。
付記5a: おや、まだ居たのかい?
「また、来ると言うんだが・・・」 曾祖父が重苦しい口調で呟いた。つい数日前に、皇太子妃美智子さんが結婚の挨拶に来たばかりである。一般人と同様、親戚になる家や関係者の
付記5b: 宿直/ 妾について
神官が厭なら、女官はどうか、という宮内庁職員のいい加減な発言で、七歳頃だったろうか、数日間、後宮へ放り込まれたことがある。女官たちと同じ、丈の長い内掛けを着せられて
付記5c: 侍女が替わりました
「侍女が替わりました」と、女官が見覚えのない若い女を部屋へ招き入れた。幼児の私が皇居へ参内した時に、世話をしてくれる侍女のことだ。けれども、その背後で落ち着かない視線を床へ落とし...
付記5d: 吉武遺跡の発掘
「姫神」の祭祀を継承した私は、我が家に遺されていた「倭国の宝物」の中に国王墓や集落跡を記した地図を見つけて、未だに膨大な埋蔵品が埋もれたまま放置されている事実に驚いた。そして、中...
付記6a: 犬の餌
赤ん坊を抱いて来たのが誰だったか、覚えていない。それまで宮内庁の薄暗い部屋で監禁されていた私は、食事が終わるたびに、侍女から砒素を舐めさせられて(それで小さな子供が大人しくなると...