♪すご~い、すごいのです~すご~い♪
劇中歌がリピートしていて、その度に脳内DVDが勝手に再生してしまうのです。
物語は道元の半生記を精神病院の入院患者に例えて進行していきます。
一見、ドタバタ喜劇、楽しさ満開の舞台のようですがラストの恐ろしい展開には度肝を抜かれます。
パンフレットによれば俳優達は「戯曲の構造の上に乗った演技をして」「銭とれる演技やって」「バカな批評家に叩かれるぞ!」等と蜷川さん流のダメだしをされたそうです。
なにせ、10人の俳優達で47役を演じ分けるというスーパーややこしいキャスティング
でも一人一人の個性は際立ち、それでいてしっくりとしている感じがして、とてもよかったです。
特に今回、北村有起哉さんと高橋洋さんのコンビは見ていて気持ちがよく、普段の生活でも、入りすぎず、離れすぎず良い関係なのでしょうと勝手に解釈してしまいました。
キャスティングの冴えもみごとです。
大小、太細、高低、老若、男女、二枚目三枚目……それぞれの俳優達が1人3~4役をして入れ替わりが激しい!そして皆、いとおしい
まるでこの世であくせくしている人間達、そのものです。
見ている観客も眠ってはいられないのです。
おまけにヨタロウさんのステキな歌もあるので俳優さんたちは大変だったと思います。
でもそんな事は感じさせず井上戯曲のパワーを体現して私達をびっくりさせてくれました!
途中、本物の鶏が出てきたりするのが蜷川さんらしいですが、今回は最初にドキリする事がなく、アレレ?と思っているうちに井上さんの世界に入り込み、まるで道元と一緒に座禅しているかのように感じました。
さて、いよいよ悟りを開いた道元(洋さん)が歌う「風鈴の歌」ですが……
悟りの境地を木場さんと歌うのですが何故かその感覚が伝わってきて、私も風鈴になって地球を宇宙を包み込む気持ちになってしまいました。
♪私の体が口になぁるぅ♪
洋さんいつも一番いいところを持っていってくれますね!
たぶんこの人は戯曲と演出家に真っ直ぐに対峙して、そこから飛び越える力を持っている人なんだろうなぁ
今回ちょっととちったけれど、ゆっきーのナイスフォローでこれまた会場中が沸きに沸きました
こんなに楽しそうな洋さん、初めて見たかもしれない。
しかし…
楽しいばかりで終わらないのが「道元」の凄いとこ!
ラストのサンバのリズムに乗ってここが精神病院の中だと分かり、リアルタイムのテレビの映像で現実と結ばれます。
道元さん達(患者たち)は狂気の中にいて、柵の中に閉じ込められています。
現実に戻った道元さん達の顔が怖い!
そして突然、本当にいきなりパッと消えるサンバの音と道元さん達、客席、ステージ共に暗黒の闇…
しばらくしてあの言葉が蘇ります
「夢は短い狂気
狂気は長い夢
夢から醒めるときは
死ぬとき」
すごい舞台です!
蜷川さん、魂の揺れ幅、凄すぎます
「滅し去るもの」として夢と狂気と死ぬときを感じました。