ぽんしゅう座

優柔不断が理想の無主義主義。遊び相手は映画だけ

■ The NET 網に囚われた男 (2016)

2017年01月27日 | ■銀幕酔談・感想篇「今宵もほろ酔い」
ボロをまとっていた漁師は拘束され丸裸にされて、南ではブランドロゴ入りのスエットを着せられ、北では糊の効いた真新しい人民服を着せられる。文字通り上からのお仕着せ。着たいものが着られないなら、いっそ丸裸のままの方が良い。それは「思想」も同じこと。

体制を維持するための態勢が生み出す疑心暗鬼のなすり付け合い。劇中の、お前のような奴がいる限り南北は決して統一されない、という漁師の絶叫は確かに正論でしょう。

ただ、そこへ至る道程は、漁師役のリュ・スンボムの熱演に負うばかりで、作劇や演出の工夫が乏しく、無理やり誉め言葉を探せば素直で飾り気のない映画と言えなくはないのですが、やはりそれは無理やりで、朴訥な男が南と北にさいなまれる「状況」が時系列的に羅列されるだけは、国家の論理にもてあそばれる漁師の苦悩が、リアルな心情として伝わってきませんでした。

ようは「そのまんま」の話しがスクリーンに映っているだけなので、正論もまた正論のままで終わってしまい、共感のようなものにまで昇華しなかったのだと思います。

(1月21日/シネマカリテ)

★★

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