秩序を嫌い終始うごめき躍動する輪郭線と、ニース時代のマティス作品を彷彿とさせる色の洪水。なんとも騒々しくも楽しい物語は、漆黒のなかの回想で始まり幸福そうな乳白色に囲まれて終わる。この「無彩色の世界」は亡くなったリンダのお父さんがいる彼女の心象世界なのだろ。
最近のフランス映画のトレンドキーワードは、老朽化が進むマンモス団地、異人種・多民族コミュニティ、働き者のシングルマザー、子供たちの悪意なき暴走、警察沙汰に発展する集団騒乱。このモチーフが出て来る作品はもれなく面白い。
(4月23日/新宿ピカデリー)
★★★★
【あらすじ】
8歳の娘のリンダ(メリネ・ルクレール)を勘違いして叱ってしまったお母さん(クロティルド・エスム)はお詫びになんでも“お願い”を聞いてあげると約束する。リンダは幼いときに死んでしまった父の得意料理で唯一の思いでの「パプリカ・チキン」が食べたいと言い出した。翌日、二人は鶏肉を買いに行くが世の中はストライキの真っ最中で店はすべて閉まっていた。リンダの望みを叶えてあげたい一心でちょっと強引な方法で「鶏肉」を手に入れたため警察や団地の隣人たちを巻き込んで大騒動に!キアラ・マルタ/セバスチャン・ローデンバック夫妻の脚本・監督による亡きお父さんの思い出を描く母と娘のフレンチコメディ・アニメーション。(76分)