
日本語で「クビ」と言えば、身体の一部で、頭と胴体を繋ぐ部分を指す場合と、「労使関係を切断する」ことを意味する場合がある。すなわち、「首」と「馘」である。
今回は、「クビにする」=「労使関係を切断する」という表現、すなわち、「馘」について、少し記述してみたい。
まず、「労使関係を切断する」という表現について、日本語では、雇用者側から言えば「クビにする」/「クビを切る」ということであり、労働者/従業員の側から言えば「クビにされる」/「クビを切られる」ということである。
同様の表現が、「韓国語」にもある。韓国語で「解雇」という直接的表現は、'해고'=「ヘゴ」であるが、やはり、「首を切る」という表現もあるようだ。「モック」='목'(首)+「チャルダ」='자르다'(切る)ということになり、'목을 자르다'=「モグル チャルダ」=「首を切る」となるようである。
「インドネシア語」の場合「ペーハーカー」='PHK' 、この言葉がよく使用されている。これは3つの単語の「頭文字」3つを並べたものである。これは、'Putus’=「プトゥス」(切れる)+'Hubungan'=「フブンガン」(関係)+'Kerja'=「クルジャ」(仕事)ということで、直訳すれば、「仕事の関係が切れる」ということで、「労使関係の切断」を意味する。文章の中では、「ペーハーカー」='PHK'で「解雇」という名詞、「解雇する」という動詞という形で使用される。また、「労働者」/「従業員」側からは、'Di'=「ディ」(受け身)+'PHK'=「ペーハーカー」で「解雇される」という表現になる。そして、「解雇」もしくは「解雇する」という単独の単語としては'Pecat'=「プチャット」という単語がある。そして、「労働者」/「従業員」側から言う場合は、'Dipucat'=「ディ・プチャット」で「解雇される」ということになる。ただ、いずれも直接的表現となっている。
では、比較的なじみの深い「英語」の場合、「解雇する」という表現に「ファイヤー」='Fire'という単語を使う表現がある。名詞としては「火」とか「炎」とかいう意味であるが、動詞として使用する場合には、「発砲する」という意味になるのである。「解雇した」='Fired'であり、「解雇された」='Be fired'となるのである。
「台湾」においても「解雇する」という表現に「ファイヤー」='Fire'を使用しているようで、これはアメリカの影響だと思われる。
直接的な表現が一般化している「インドネシア」はさておき、「日本」と「アメリカ」における「解雇する」を意味する表現の違いがどこからきているのかを見てみたい。すなわち、日本語の「クビ」という表現と英語の「ファイヤー」='Fire'という「解雇」を意味する表現の違いがどこからきているのかという観点から見てみると、これは「両国」の「刑罰の形」に起因すると思われる。
「日韓」は隣国ということもあり、歴史的に親密な関係もあったこともあり、「斬首」という「刑罰」が当たり前のように行われていた。そして、一方、「アメリカ」は、銃社会ということもあり「銃殺刑」が当たろ前のように行われていた。そういう、各国の「慣習」から「解雇」を意味する表現として「クビ」と'Fire'=「ファイヤー」が定着していったと思われるわけである。
最後に、中国語の場合、直接的な表現としては、「解雇」='jiě gù' (ジエ グー)とか「开除」='kāi chú'(カイ チュー)〔直訳すれば、「開いて除く」ということだけれど、これで「解雇する」と同じ意味になるらしい〕などがあるが、「解雇」を意味する面白い表現としては「イカを炒める」=「解雇される」となるらしい。この「イカを炒める」という中国語は、「炒鱿鱼」='chǎo yoú yú'(チャオ ヨウ ユィー)である。それで、なぜこの表現が「解雇される」という意味になったかを説明すると、「労働者」/「従業員」が解雇されると、皆、家の寝床の「布団」を丸めて立ち去っていくことからきているらしい。すなわち、「イカを炒める」とくるくるっと丸まってしまう状態に似ていることからきているようである。
インドネシア語で「茣蓙を丸める」='Gulung Tikar'(グルン・ティカル)で「撤退する」という表現があるけれど、それに似た感じで非常に面白い。
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