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ぽんぽこタヌキの独り言 Solilokui dari Rakun Pompoko

日本を見て、アジアを見て、世界を見て、徒然なるままに書き記す、取るに足らない心の呟き

アジアにある「2つのライオンの街」

2016年06月28日 01時58分50秒 | Weblog

これまで、タイにおける「街の名前」やインドネシアにおける「港や浜辺の名前」について述べてきた。タイでは、「金の街」や「ダイヤモンドの街」、インドネシアでは「金の岬」、「銀の岬」「銅の岬」や「さざ波の岬」など。そして、此の度は、国家/都市につけられた名称「ライオンの街」をクローズアップしてみたい。

まず、最初の「ライオンの街」は、現在の「スリランカ」であり、その旧名の「セイロン」というのが、元は「シンハラ語」で「ライオンの街」という意味だったのである。もともとの名前は、「シンハ・ドゥウィーパ」='Simha Dwipa' と呼ばれていた。サンスクリット語で「ライオン」という意味の「シンハ」='Simha'、そして、同じく、サンスクリット語で「島」という意味の「ドゥウィーパ」='Dwipa'である。これが「「ライオンの島」/ 「ライオンの街」の語源ということができる。

「シンハ・ドゥウィーパ」='Simha Dwipa'、この名称が、どうして、「セイロン」='Ceylon' に変わったのか、日本語の語感からはちょっと理解し難いけれど、ヨーロッパからの来訪者、即ち「ポルトガル人」はこの地を「セイラーン」='Ceiliao' と呼び、その後、「イギリス人」が「セイロン」='Ceylon' と呼ぶようになったのである。

この「セイロン」='Ceylon' という国名は、1972年に「スリランカ」という国名に変更されている。しかし、島の名前としては、依然「セイロン島」のままである。インドの南東に位置することから「インドの涙」とか「インド洋の真珠」などと言われることもある。また、「ラーマーヤナ」='Ramayana'の叙事詩の中に「桃太郎伝説」と類似した「ラーマ王子伝説」なるものがあって、悪魔「ラヴァナ」=Ravana' によって、「シータ」='Sita' 姫をさらわれた「ラーマ」='Rama' 王子が、「ラヴァナ」='Ravana' の棲む「ランカー島」(セイロン島)に渡って、激闘の末に「シータ」='Sita' 姫を救い出すというストーリーである。家来は、「ハヌマーン」='Hanuman'(猿)である。桃太郎に出てくる「犬」や「記事」は出てこない。このストーリーに基づけば、「セイロン島」は、「インド大陸」から見て「鬼ヶ島」ということになる。

この「スリランカ」という国名も、やはり2つの言葉を組み合わせたものである。すなわち「スリ」='Sri'+「ランカ」='Lanka'という2つの言葉である。最初の「スリ」=Sri' は「シンハラ語」で「聖なる」とか「光り輝く」という意味である。そして、その後の「ランカ」='Lanka' いうのは、島の名前である。インドでは、この「セイロン島」のことを、古くは「ランカー島」と呼んでおり、かの「ラーマーヤナ」に出てくる「ラークシャサ」=「羅刹」の王の「ラーヴァナ」が根拠地としていたのが「ランカー島」であり、この「ランカ」='Lanka'という名前を復活させたと考えられる。すなわち「光り輝くランカ」/「聖なるランカ」ということである。

もう1つの「ライオンの街」は「シンガポール」である。昔、7世紀頃は、「テマセック」='Temasek' と呼ばれていたようで、その意味は「海の街」であった。現在の地名は「シンガポール」='Singapole' であり、この地名は、「サンスクリット語」を語源とする「シンガ」='Singa'=「ライオン」と「プラ」='Pura' =「都」/「街」の合成語「シンガプラ」='Singapura' であるとされている。この2つの単語は、確かに「サンスクリット語」を語源とするものであるけれど、既に「マレーシア語」/「インドネシア語」の中に取り込まれて、定着しているので、「マレーシア語」/「インドネシア語」の合成語と言っても間違いではない。ただ、「シンガポール」='Singapole' には、「ライオン」は生息しておらず、にもかかわらず、当然のように「ライオンの街」というのが定着して、都市の象徴として「マーライオン」が建造され、外国からの旅行者などに親しまれている。また、この「ライオンの街」説を裏付けるものとして、11世紀、当時「スマトラ」を中心に栄えていた「シュリーウィジャヤ王国」の王族の「サン・ニラ・ウタマ」が航海の最中に、この島で「不思議な獣」を見つけ、それが「ライオン」だと勘違いしたことから「シンガプラ」='Singapura' と名付けたという伝説があるようである。ただ、この「シンガポール」の語源として、上記の語源の根源が「サンスクリット語」であることは間違いないことだけれど、「裏付け」が「伝説」であるということは、「事実ではない」わけで、それは十分な「裏付け」とは言えないのである。実は、「マレーシア語」にその語源を求めると、別の説も存在するようである。それも、やはり「2つの語彙」の合成語で「シンガ」='Singgah'+「プラ」='Pura' であり、その意味は、「立ち寄る」+「都」/「街」という意味になる。この地名は、「シンガポール」自体の現在果たしている役割が、「貿易の中継地」であり、「旅行者の中継地」であることを考えると、「立ち寄る街」と名付けられたと考えるのが合理的である。

「マレーシア」から1965年に分離独立した「シンガポール」='Singapole' の語源として、以前より「ライオンの街」説と「立ち寄る街」説の2つの説が存在していて、シンガポールがマレーシアから分離独立する1965年前後の「シンガポール」の為政者が、これも恐らく「シンガポール」のイメージ戦略で、「ライオンの生息しないシンガポール」に、「ライオンのイメージ」を植え付けるために、地名の「ライオンの街」語源説を採用し、「シンボル」として「マーライオン」を創造して、オブジェを建立し、更に、その裏付けとして、「ライオン似の獣伝説」をでっち上げて、信憑性を印象付けたと考えると、まさに、その当時の為政者の「イメージ戦略の巧みさ」には感心せざるを得ない。ただ、「シンガポール」という地名の「立ち寄る街」語源説は、その「イメージ戦略」の影響で、「影が薄くなってしまった」感が強いけれど、私個人としては、「シンガポール」という都市名の語源については、「立ち寄る街」語源説のほうが、現在の「シンガポール」の機能を考えると、その機能を端的に示す「命名」として、より「納得性」と「合理性」を感じてしまうのである。


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