
日本語で「うまい!」と言うと、上手だという意味の「上手い!」と美味しいという意味の「旨い!」という表記上2種類の使い分けが存在する。日本語では「うまい」と「気持ちいい」は全く別物である。これらの表現をインドネシア語訳してみると、「旨い」は‘Enak'(エナッ)とか‘Sedap'(スダッ)とか‘Lezat'(ルザッ)などの単語で表現され、「上手い」は‘Pintar'(ピンタール)とか‘Pandai’(パンダイ)とか‘Mahir'(マヒル)などと表現する。そして「気持ちいい」は「旨い」のなかの‘Enak'(エナッ)で表現する。つまり、‘Enak'(エナッ)には「旨い」と「気持ちいい」という2種類の意味を有するのである。これがマレーシア語になると、「旨い」は‘Sedap'(スダッ)であり、‘Enak’(エナッ)は専ら「気持ちいい」という表現に使用される。「上手い」は‘Pandai'(パンダイ)でる。すなわち、マレーシアでは‘Enak'は「旨い」という意味で使用されないのである。タガログ語ではこの点どうなっているか見てみると、「旨い」は‘Masarap'(マサラップ)であり、「上手い」は‘Marunong'(マルノン)である。そして、「気持ちいい」という表現には‘Masarap'(マサラップ)という単語で表現される。これはインドネシア語における単語の連関と類似している。つまり、‘Masarap'(マサラップ)という単語が「旨い」と「気持ちいい」という2種類の意味を有するのである。これをタイ語で見てみると、「旨い」は‘Aroi'(アロイ)であり、「上手い」は‘Keng’(ケン)で、「気持ちいい」は‘Sabai-sabai'(サバーイ・サバーイ)で、すべて異なる単語で表現される。インドネシア語、マレーシア語、タガログ語、タイ語の4つの言語の「語感」というものは、日本語のそれと全く異なるのは当然だけれど、これらの4言語を比較してみると、総体的に類似している言語は、当然ながら、歴史的に両国間で共通化を図ったインドネシア語とマレーシア語であるが、少なくとも、ここで取上げた3つの語彙、表現で判断すれば、その「語感」=「語彙感覚」はインドネシア語とタガログ語のほうがより類似性が高いように思うのである。
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