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ブライアン・ファーニホウの音楽 ~コンポージアム2022~

2022年05月29日 | pocknのコンサート感想録2022
5月25日(水)ブラッド・ラブマン 指揮 アンサンブル・モデルン
~コンポージアム2022より~
東京オペラシティコンサートホール タケミツメモリアル


【曲目】
1.想像の牢獄Ⅰ(1982)
2.イカロスの墜落(1987〜88)
Cl:ヤーン・ボシエール
3.コントラコールピ(2014〜15)[日本初演]
4.クロノス・アイオン(2008)[日本初演]


公演プログラムに掲載された「イカロスの堕落」のクラリネットソロ部分

今年の「コンポージアム」のテーマ作曲家はブライアン・ファーニホウ。作品を聴いたことは殆どなかったが、前衛作曲家として世界的に有名なこの作曲家の音楽をまとめて聴けるいい機会だと思って出かけた。

会場で配られたパンフットにある沼野雄司氏による詳しい曲目解説では、ファーニホウの音楽は、従来の西洋音楽の概念からかけ離れた殆ど演奏不可能なほど複雑な音楽、と紹介されていた。また、聴くだけで忍耐力が要求されるとも。

解説を読み、怖いもの見たさの興味も加わって聴いた音楽だったが、混乱することも、忍耐を強いられることも、退屈になることもなかった。アグレッシブだが、それはエキサイティングで生命力に溢れ、音達が有機的に躍り回る鮮やかな音楽で、それぞれの作品が個々の個性を放ち、終始ワクワクして聴き入った。「現代音楽」であり勝ちな常套手段に頼ることなく、音の動きもリズムも響きも鮮烈で、エネルギーが炸裂し、それがどこへ向かうのか、何が起こるのか想像もつない意外性に彩られながら、不思議な調和をもたらす世界だった。

このようなポジティブな印象をもたらしてくれたのは、現代作品の演奏で世界屈指の集団であるアンサンブル・モデルンの功績が大きい。「イカロスの堕落」で、生き物が何かに取りつかれたように目まぐるしく動き回るクラリネットソロを演奏したボシエールをはじめとした、メンバー一人一人の卓越した演奏技術は驚異的とも云える。

間違ってもわからないだろうが、ブラッド・ラブマンの鋭く的確な指揮による名人集団の演奏は、絶対正しく演奏していると思わせてしまう自信と明快さがある。現代音楽の演奏にはとりわけ正確さが求められると云われるが、ファーニホウの音楽はそれが特に重要ではないだろうか。それが実現しているからこそ、聴き手の心に明確なメッセージとして訴えてくるものがあるのだろう。決して無機的に聴こえることなく、いつでも音楽から「生命」が感じられたのは、作曲者が作品に込めたエモーショナルなものを的確に捉えて聴衆に伝える演奏者のハートがある証しだろう。

複雑で演奏困難なはずの音楽が、一見、あまりにわけなく演奏されてしまうため、そこにはいわゆる「汗」が感じられないことによって、ファーニホウの音楽に抱かれている難解な印象が、もっと受け入れやすいものになっていたのかも知れない。これはファーニホウが究極的に自らの作品について思い描いていたものが正確に再現されたと云ってもいいのではないだろうか。
これからは、この作曲家の作品に積極的に触れていきたい、と思うきっかけとなる演奏会だった。

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