田中慎弥著 「これからもそうだ。」 西日本新聞社
芥川賞受賞時のコメントで話題となった著者の、初エッセイ集だそうである。
受賞作の「共喰い」は、強烈な内容だというメディアの宣伝文句が飛び交っていたので少々身構えて読んだが、いや確かに題材は強烈ではあるが、不思議に読後感が心地よかった。前年に候補となった「第三紀層の魚」も、淡々とした、というより冷たささえ感じる文章の底に、僅かな温かみを感じた。そこもまた心地よかった。
このエッセイ集、著者の目線も思いも常に冷え冷えとしていて、とにかく一貫して素っ気ない。
昨今こんなエッセイ、滅多にお目にかかれない。
しかし惹かれる。なぜだ?
著者の下関へのこだわり故か。
彼自身は、こだわりはない、愛着を感じているわけではないという。だが「なぜ下関か。」ということを悶々と考え、下関を離れず、下関を題材に小説を書く。しかも暗く描く。
その、愛憎と諦観の入りまじった複雑な思いが、小説からもエッセイからも立ちのぼっている、そこが惹かれる理由だろうか。
小さな地方都市から彼は離れない。恐らくそこに私は共感を得、彼の文章を辿るのであろう。
芥川賞受賞時のコメントで話題となった著者の、初エッセイ集だそうである。
受賞作の「共喰い」は、強烈な内容だというメディアの宣伝文句が飛び交っていたので少々身構えて読んだが、いや確かに題材は強烈ではあるが、不思議に読後感が心地よかった。前年に候補となった「第三紀層の魚」も、淡々とした、というより冷たささえ感じる文章の底に、僅かな温かみを感じた。そこもまた心地よかった。
このエッセイ集、著者の目線も思いも常に冷え冷えとしていて、とにかく一貫して素っ気ない。
昨今こんなエッセイ、滅多にお目にかかれない。
しかし惹かれる。なぜだ?
著者の下関へのこだわり故か。
彼自身は、こだわりはない、愛着を感じているわけではないという。だが「なぜ下関か。」ということを悶々と考え、下関を離れず、下関を題材に小説を書く。しかも暗く描く。
その、愛憎と諦観の入りまじった複雑な思いが、小説からもエッセイからも立ちのぼっている、そこが惹かれる理由だろうか。
小さな地方都市から彼は離れない。恐らくそこに私は共感を得、彼の文章を辿るのであろう。