田中慎弥著 「神様のいない日本シリーズ」 文春文庫
「図書準備室」で前例があるので、これもそうかと読み始めた途端に悟った。一人の人物が誰かに延々と語っている、そういう形になっている。初めから終わりまで、他の誰もそこに割り込ませない。
しかしその単調になりがちなプロットで、読者を飽きさせないのだから、たいしたものである。
表題の日本シリーズは、1986年の広島VS西武である。この第8戦までもつれ込んだシリーズの、一戦一戦を細かに描写しつつ、それらを中学生の揺れ動く感情に絡める。
表題からは、「バッテリー」ほどではないにしても一応野球小説なのかと想像していた。つまり野球少年が主人公だろうと。しかしそれはきっちり裏切られる。野球少年どころか、全く野球をしたことがない、キャッチボールをしたことも、バットをまともに振ったこともない。ただ「観る」だけ。こういう意外性が、田中慎弥氏の小説についつい手を出してしまう所以だろう。
著者は1972年生まれなので、この主人公とほぼ同じ年頃である。主人公の日本シリーズへの目は、イコール田中慎弥氏の目だといえる。著者も観るだけの少年だったようだ。彼自身の「観る」プロ野球への思いが、この小説に凝縮されているのだろうか。
ちなみに、自分は1986年の日本シリーズの記憶がない。この年のペナントレースの記憶もほとんどない。たしかこの年は人生の転換期を前に、とにかくばたばたと忙しい毎日だったな、と懐かしく思い出す。
「図書準備室」で前例があるので、これもそうかと読み始めた途端に悟った。一人の人物が誰かに延々と語っている、そういう形になっている。初めから終わりまで、他の誰もそこに割り込ませない。
しかしその単調になりがちなプロットで、読者を飽きさせないのだから、たいしたものである。
表題の日本シリーズは、1986年の広島VS西武である。この第8戦までもつれ込んだシリーズの、一戦一戦を細かに描写しつつ、それらを中学生の揺れ動く感情に絡める。
表題からは、「バッテリー」ほどではないにしても一応野球小説なのかと想像していた。つまり野球少年が主人公だろうと。しかしそれはきっちり裏切られる。野球少年どころか、全く野球をしたことがない、キャッチボールをしたことも、バットをまともに振ったこともない。ただ「観る」だけ。こういう意外性が、田中慎弥氏の小説についつい手を出してしまう所以だろう。
著者は1972年生まれなので、この主人公とほぼ同じ年頃である。主人公の日本シリーズへの目は、イコール田中慎弥氏の目だといえる。著者も観るだけの少年だったようだ。彼自身の「観る」プロ野球への思いが、この小説に凝縮されているのだろうか。
ちなみに、自分は1986年の日本シリーズの記憶がない。この年のペナントレースの記憶もほとんどない。たしかこの年は人生の転換期を前に、とにかくばたばたと忙しい毎日だったな、と懐かしく思い出す。