下関の田中絹代ぶんか館にて、田中慎弥氏の直筆原稿と草稿が公開されている。
特別展「田中慎弥、進化する世界」と銘打たれた展示であるが、館ロビーの真ん中にコーナーが設けられているだけで、見学は無料である。
原稿は「冷たい水の羊」「図書準備室」「切れた鎖」「蛹」の4作品。
デビュー作の「冷たい水の羊」は、清書だろうか。校正が入っていない、鉛筆だけの綺麗な状態である。
「図書準備室」は、自身の手による若干の赤入れあり。
「蛹」は赤入れと、編集者による記号記入や「新潮6月号10印」の押印がある。最終稿か。冒頭2文目の先頭の文節「近くの木の」が、最後に挿入されたことが分かる。
「切れた鎖」は、「新潮11月号2印」と押印されているものと、まだ構想段階と思われる草稿の2種類。草稿はかなりメモ書きに近いものだが、それでも2回目だそうだ。ということは、完成までに何回原稿用紙を使って書き直しておられるのか。その労力に頭が下がる。冒頭の美佐子の「今日は遅くなるから」が、元は5倍も長い台詞だ。面白い。
興味深いのは、「冷たい水の羊」と「図書準備室」の原稿用紙はコクヨ製の市販品(学生時代に作文でよく使っていたなあ。懐かしい。)だが、「切れた鎖」と「蛹」は「SHINCHOSHA」と銘の入った原稿用紙、という違いがあることだ。
なるほど、初期には自腹で原稿用紙を買っておられたけれど、やがて出版社から提供されるようになったということかな、と勝手に想像してみた。
以前高村薫氏が、どこかに書いておられた。自分は手書きをしたことがない。ワープロがなかったら作家になっていなかっただろう、ということだ。それくらい、小説を手書きするのは大変なことなのだろう。
パソコンを使わず手で書き続ける田中氏が、これからどんな作品をその手から生み出していくのか。氏もいつかはそのスタイルを変える日が来るのか。これからも田中慎弥氏に注目していきたい。
特別展「田中慎弥、進化する世界」と銘打たれた展示であるが、館ロビーの真ん中にコーナーが設けられているだけで、見学は無料である。
原稿は「冷たい水の羊」「図書準備室」「切れた鎖」「蛹」の4作品。
デビュー作の「冷たい水の羊」は、清書だろうか。校正が入っていない、鉛筆だけの綺麗な状態である。
「図書準備室」は、自身の手による若干の赤入れあり。
「蛹」は赤入れと、編集者による記号記入や「新潮6月号10印」の押印がある。最終稿か。冒頭2文目の先頭の文節「近くの木の」が、最後に挿入されたことが分かる。
「切れた鎖」は、「新潮11月号2印」と押印されているものと、まだ構想段階と思われる草稿の2種類。草稿はかなりメモ書きに近いものだが、それでも2回目だそうだ。ということは、完成までに何回原稿用紙を使って書き直しておられるのか。その労力に頭が下がる。冒頭の美佐子の「今日は遅くなるから」が、元は5倍も長い台詞だ。面白い。
興味深いのは、「冷たい水の羊」と「図書準備室」の原稿用紙はコクヨ製の市販品(学生時代に作文でよく使っていたなあ。懐かしい。)だが、「切れた鎖」と「蛹」は「SHINCHOSHA」と銘の入った原稿用紙、という違いがあることだ。
なるほど、初期には自腹で原稿用紙を買っておられたけれど、やがて出版社から提供されるようになったということかな、と勝手に想像してみた。
以前高村薫氏が、どこかに書いておられた。自分は手書きをしたことがない。ワープロがなかったら作家になっていなかっただろう、ということだ。それくらい、小説を手書きするのは大変なことなのだろう。
パソコンを使わず手で書き続ける田中氏が、これからどんな作品をその手から生み出していくのか。氏もいつかはそのスタイルを変える日が来るのか。これからも田中慎弥氏に注目していきたい。