あさのあつこ著 「弥勒の月」 光文社文庫
あさのあつこ氏の小説を初めて読んだ。これも児玉清氏の解説めあてである。
しかし、これは良い。数多ある時代小説の中で、これほど胸を打つ作品はない。
あさの氏は、藤沢周平氏の作品に魅せられて時代小説に手を染めたとのこと。しかし描かれる人物の深み、ストーリーの緻密さは、藤沢氏以上ではないかと思う。宮部みゆき氏の時代小説もなかなかのものだが、自分はあさの氏の時代小説が一番味わい深く、心に浸み通り、読後の充実感が長く続く。つまりぴったり合うのだ。
何が違うのだろう。あさの氏の時代小説の何が図抜けているのだろうか。
「男」の心情表現の豊かさか。
藤沢氏の登場人物は、何作か読んでいるとだいたい考えていることが分かってきてしまう。割合パターンが決まっているのだ。宮部氏もそうだ。男性の中心人物はたいてい人が良く、逸脱している感じが余りない。また、そうした男たちは女と絡んで初めて、より深く描かれ、人間味を持つ。
翻ってあさの氏の男たちは、独立感が強い。そして平凡でない。どの男も、ちょっとした端役の男でもしっかり描かれていて、手抜き感もない。そこが心に染みいる一助となっているようだ。
氏は「バッテリー」などで評価が高いが、だから故、手を出す気にならなかった。城山三郎氏の作品もそうだが、児玉氏の導きの有り難さをつくづく感じる。
この江戸同心と岡っ引きのコンビの作品、もう少し読んでみよう。
あさのあつこ氏の小説を初めて読んだ。これも児玉清氏の解説めあてである。
しかし、これは良い。数多ある時代小説の中で、これほど胸を打つ作品はない。
あさの氏は、藤沢周平氏の作品に魅せられて時代小説に手を染めたとのこと。しかし描かれる人物の深み、ストーリーの緻密さは、藤沢氏以上ではないかと思う。宮部みゆき氏の時代小説もなかなかのものだが、自分はあさの氏の時代小説が一番味わい深く、心に浸み通り、読後の充実感が長く続く。つまりぴったり合うのだ。
何が違うのだろう。あさの氏の時代小説の何が図抜けているのだろうか。
「男」の心情表現の豊かさか。
藤沢氏の登場人物は、何作か読んでいるとだいたい考えていることが分かってきてしまう。割合パターンが決まっているのだ。宮部氏もそうだ。男性の中心人物はたいてい人が良く、逸脱している感じが余りない。また、そうした男たちは女と絡んで初めて、より深く描かれ、人間味を持つ。
翻ってあさの氏の男たちは、独立感が強い。そして平凡でない。どの男も、ちょっとした端役の男でもしっかり描かれていて、手抜き感もない。そこが心に染みいる一助となっているようだ。
氏は「バッテリー」などで評価が高いが、だから故、手を出す気にならなかった。城山三郎氏の作品もそうだが、児玉氏の導きの有り難さをつくづく感じる。
この江戸同心と岡っ引きのコンビの作品、もう少し読んでみよう。