入院中は読書も殆どする気になれなくて、15冊本を持って行ったにも関わらず、読んだのは1冊だけでした。
「メイプルソープ」パトリシア・モリズロー
1989年にHIVで亡くなった写真家ロバート・メイプルソープの伝記です。
2001年に出版されてすぐに買ったのですが、結構厚い為なかなか読む気になれず放置してあったんだけど、読み始めると面白くてあっという間に読んでしまいました。中にメイプルソープの代表的な作品もいくつか掲載されていて、学生時代に初めて彼の写真を見た時の衝撃を思い出しました。それにしてもこの本を読むと、私がぼんやりとこんな人じゃないかなあと思い描いていた人物像とは違っていて、面白かったです。
ドラッグ中毒で千人もの男と寝たと言い、HIVに感染してからもそれをやめず、ケチで冷たいところがあって、どちらかというとイヤなヤツだったんじゃないかと思うんだけど、そのすごい名声欲や生に対する執着心には感心しました。思っていたよりもずっと俗物的な人物で、でも私は嫌いじゃないです。
20歳の時に出会ったパティ・スミスとの関係も興味深い。パティ・スミスといえばなんといってもメイプルソープが撮ったファーストアルバムのカヴァー写真が思い浮かびますが、最後に彼女のアルバムのカヴァー写真を撮った時の話。
結婚して長い間活動を休止していたパティ・スミスのカムバック・アルバム「ドリーム・オブ・ライフ」のジャケット写真を、1986年既にHIVで具合が悪くなっていたメイプルソープが撮ることになる。でも、できあがった目元のしわやクマが消され実際よりもずっと美しく撮られた写真を見てパティはがっかりする。(たぶんそれは美意識の高いメイプルソープらしい写真に違いなかったんだろうけど、今現在の彼女の本当の姿を写してないと思ったからでしょう・・・。)それでもロバートを傷つけたくなかったパティはその写真を使うことにする。
一方でメイプルソープはパティがその写真を気に入っていないことがわかっていたので、自分は満足していたにも関わらず、彼女を喜ばせようともう一度撮影することに。しかし二度目の撮影は、病気の為に手が震えて光度計を落として壊してしまったりしてまったくいい写真が撮れなかった。
その週末までにレコード会社にカヴァー写真を渡さなければならなかったパティは、仕方なく最初の写真をレコード会社に郵送しようとするんだけど、丁度郵便局へ行こうとしている時にメイプルソープから電話がかかってきて、秘密めかした調子で「一日だけ待ってくれ」と言う。
翌朝宅配便で届いた写真を見てパティは泣いてしまう。
その写真のパティの顔色は褪め、不完全なものを嫌うメイプルソープが気にしていた彼女の手の茶色いしみを消すこともせず、背景はぼやけて、メイプルソープ本来の高水準なものではない不完全な出来の写真だった。
「すごい写真ではないし、わたしが特にひきたっているわけでもない。でも、ロバートには、あれこそわたしの求めているイメージだとわかっていたの。あの写真は彼からわたしへの贈り物だったのよ」
それぞれが強烈な個性を持ったエゴの塊みたいな2人が、最後にお互いを思いやったエピソードにグッときました。
メイプルソープの輝くばかりに美しい野心に燃えた若い頃のポートレイトと、ヴァニティ・フェアに掲載された、回顧展で沢山の人々に囲まれながらも孤独そうな、病に蝕まれ衰えた彼の姿を見比べると、なんともいえず感慨深い。
それにしても私は知らなかったので驚いたのですが、メイプルソープって嗜糞症の人だったのね。主治医に糞便愛好は体に悪いからやめろと言われても、ずっと体内の寄生虫と闘いつづけていたというじゃないの。
しかも、私が驚いたのは次の一文。
「メイプルソープは、自分にのぞき趣味はないと自慢げにいってはいたものの、実は他人が自分の排泄物を食べるのを見ると(意地の悪いのぞき趣味だ)、最高の悦びを覚えたのだ。」
そんな、そもそも自分のウンコを食べる人だってそれほどいるとは思えないのに、どこでそれをのぞき見するっていうの!?
世界は広いです。
あれれ、今日は「流星シロップ」について書こうと、「メイプルソープ」は前振りのつもりだったのに、思いの外長くなってしまった。ウンコで締めくくるのもどうかと思いますが、「流星シロップ」については、また明日にでも!
「メイプルソープ」パトリシア・モリズロー
1989年にHIVで亡くなった写真家ロバート・メイプルソープの伝記です。
2001年に出版されてすぐに買ったのですが、結構厚い為なかなか読む気になれず放置してあったんだけど、読み始めると面白くてあっという間に読んでしまいました。中にメイプルソープの代表的な作品もいくつか掲載されていて、学生時代に初めて彼の写真を見た時の衝撃を思い出しました。それにしてもこの本を読むと、私がぼんやりとこんな人じゃないかなあと思い描いていた人物像とは違っていて、面白かったです。
ドラッグ中毒で千人もの男と寝たと言い、HIVに感染してからもそれをやめず、ケチで冷たいところがあって、どちらかというとイヤなヤツだったんじゃないかと思うんだけど、そのすごい名声欲や生に対する執着心には感心しました。思っていたよりもずっと俗物的な人物で、でも私は嫌いじゃないです。
20歳の時に出会ったパティ・スミスとの関係も興味深い。パティ・スミスといえばなんといってもメイプルソープが撮ったファーストアルバムのカヴァー写真が思い浮かびますが、最後に彼女のアルバムのカヴァー写真を撮った時の話。
結婚して長い間活動を休止していたパティ・スミスのカムバック・アルバム「ドリーム・オブ・ライフ」のジャケット写真を、1986年既にHIVで具合が悪くなっていたメイプルソープが撮ることになる。でも、できあがった目元のしわやクマが消され実際よりもずっと美しく撮られた写真を見てパティはがっかりする。(たぶんそれは美意識の高いメイプルソープらしい写真に違いなかったんだろうけど、今現在の彼女の本当の姿を写してないと思ったからでしょう・・・。)それでもロバートを傷つけたくなかったパティはその写真を使うことにする。
一方でメイプルソープはパティがその写真を気に入っていないことがわかっていたので、自分は満足していたにも関わらず、彼女を喜ばせようともう一度撮影することに。しかし二度目の撮影は、病気の為に手が震えて光度計を落として壊してしまったりしてまったくいい写真が撮れなかった。
その週末までにレコード会社にカヴァー写真を渡さなければならなかったパティは、仕方なく最初の写真をレコード会社に郵送しようとするんだけど、丁度郵便局へ行こうとしている時にメイプルソープから電話がかかってきて、秘密めかした調子で「一日だけ待ってくれ」と言う。
翌朝宅配便で届いた写真を見てパティは泣いてしまう。
その写真のパティの顔色は褪め、不完全なものを嫌うメイプルソープが気にしていた彼女の手の茶色いしみを消すこともせず、背景はぼやけて、メイプルソープ本来の高水準なものではない不完全な出来の写真だった。
「すごい写真ではないし、わたしが特にひきたっているわけでもない。でも、ロバートには、あれこそわたしの求めているイメージだとわかっていたの。あの写真は彼からわたしへの贈り物だったのよ」
それぞれが強烈な個性を持ったエゴの塊みたいな2人が、最後にお互いを思いやったエピソードにグッときました。
メイプルソープの輝くばかりに美しい野心に燃えた若い頃のポートレイトと、ヴァニティ・フェアに掲載された、回顧展で沢山の人々に囲まれながらも孤独そうな、病に蝕まれ衰えた彼の姿を見比べると、なんともいえず感慨深い。
それにしても私は知らなかったので驚いたのですが、メイプルソープって嗜糞症の人だったのね。主治医に糞便愛好は体に悪いからやめろと言われても、ずっと体内の寄生虫と闘いつづけていたというじゃないの。
しかも、私が驚いたのは次の一文。
「メイプルソープは、自分にのぞき趣味はないと自慢げにいってはいたものの、実は他人が自分の排泄物を食べるのを見ると(意地の悪いのぞき趣味だ)、最高の悦びを覚えたのだ。」
そんな、そもそも自分のウンコを食べる人だってそれほどいるとは思えないのに、どこでそれをのぞき見するっていうの!?
世界は広いです。
あれれ、今日は「流星シロップ」について書こうと、「メイプルソープ」は前振りのつもりだったのに、思いの外長くなってしまった。ウンコで締めくくるのもどうかと思いますが、「流星シロップ」については、また明日にでも!