五里夢中於札幌菊水 

野戦病院へ出向予定。
医療崩壊に対して国民全てと共闘を夢想。
北海道の医療崩壊をなんとか防ぎたい。

JBMシリーズー脳出血

2007-05-31 14:02:39 | JBM
結構古いネタなのですが、自分の身にふりかかりそうな訴訟を整理してみることにした。

ネタ元はYosyan先生のブログです。

http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20070224

http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20070222

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<医療過誤>横浜市が謝罪 患者は重い意識障害に

 横浜市磯子区の市立脳血管医療センター(山本正博センター長)で昨年7月、初めて脳内出血の内視鏡手術をする男性医師の手術を受けた患者が重い意識障害に陥る事故があり、同市は24日、医療過誤を認めて謝罪した。患者側の指摘で、市は今年6月、第三者による調査委員会を設置し調査。当初、ミスを否定していた市は「医療過誤」とする24日の調査委報告を受け、一転して非を認めた。
 患者は同市内の50代の女性。昨年7月27日、脳内出血で入院し、翌日に内視鏡手術を受けたが、女性は意識不明になった。女性は現在意識は回復し入院しているが、脳障害のため自力で食事を取れないなど介助が必要な状態という。
 調査委は「高度の意識障害と内視鏡手術との因果関係は強く疑われる」と指摘し、医療過誤と断定。執刀医の低い技術レベル▽事前の研修や経験のある医師の立ち会いなど未経験の技法に対する準備不足▽合併症発生への認識の甘さ――などが事故を招いたと批判した。
【渡辺創】

(毎日新聞) - 9月24日22時41分更新

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ポイントは以下。

53歳の女性の脳出血患者であった。
横浜市立脳血管医療センターで起こった
執刀医は38歳とあるので、事件当時は35歳であったと考えられる。また頭部内視鏡手術は初めてであった。
手術法は頭部内視鏡手術であった。
手術後に左半身まひなどの重度の障害が残った。
外部有識者による調査委員会が「内視鏡操作と止血手技に関する技術レベルの低さ」などとして事故と断定した。
家族は業務上過失傷害と傷害容疑で刑事告訴していた。

他参考となるページ↓

http://www.kit.hi-ho.ne.jp/msatou/06-03/060309kanagawa-noukekkan.htm

http://venacava.seesaa.net/article/34410210.html

脳卒中治療ガイドライン↓

脳卒中治療ガイドライン (2004)

協和企画

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ガイドラインの中で脳出血のみ取り扱ったページ↓

http://www.ebm.jp/disease/brain/02shuketsu/guide.html


~ここから私見~

恥ずかしいのですが3年半の臨床経験の中で開頭血腫除去術は3例ほどだけ、
先輩に手取り足取り指導してもらいながら執刀させていただいたことがあります。
他の同期はもう少し経験していると思います。

かつて死因のトップが脳卒中であった時代であればもう少し経験できるのでしょうが、
すぐれた降圧薬がある現在、高血圧性の脳出血になるかたは、
肝炎など出血傾向が多少なりともある方や、よほど病院にかからない方、
血圧の自己管理ができない方、何を飲んでも血圧が下がらない動脈硬化末期の方、
などかなり限定されており、かなりの手術件数をこなしている施設でも
それほど手術件数はありません。
(3年目の時、200件/年ぐらいの施設でしたが5~10件程度だったと思います)

内視鏡による血腫除去術は手術を見たことすら2~3回しかありません。
みっちりとどこかの施設でトレーニングを受けるといった類のものでは無いと思います。
そしてそれほど予後に影響するような手術ではないと思います。

同じ内視鏡である下垂体腫瘍の手術などの待機的手術と違い、
手術するような脳出血であれば重度な麻痺が残るのは当然です。
術後の再出血も当然あります。
逆に止血に固執すると、生き残った脳を栄養する血管を焼いてしまったりして
麻痺が悪くなる可能性もあります。

救命目的以外はっきりとしたエビデンスの無い治療なので、
脳出血の手術はしないという脳外科の先生もいらっしゃると聞きます。
救命目的の手術≒べジを作る可能性の高い手術ということで
手術を希望されない方向で恐らくI.C.をされるのだと思います。

個人的には、出血がある程度おおきければ早期に手術をして、
早期より離床を進めたほうが良いのではと考えているのですが、
この訴訟の行方次第では(どうなったのか知りませんが)
小脳出血以外(劇的に良くなります)は手術が無くなるのかもしれません。
そして内視鏡手術は低侵襲ではあるのですが、
なにか合併症があれば訴えられるというリスクが高いので、
手をつけないほうが無難だと思いました。
脳出血の内視鏡手術専門家で食っていけるわけはないので、
他に力を入れたほうが絶対良いと思います。

この考え方に間違いがあると思われたら御批判を下さい。

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2 コメント

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アメリカでは脳出血の手術見たことない (Taichan)
2007-06-01 16:03:10
アメリカでは脳出血の手術って聞いたことないですね。もちろん小脳出血、再出血して脳ヘルニアの一歩手前という時には開頭血腫除去です。
内視鏡は脳室内のう胞性病変に使用しているのを昨日の脳外科カンファで紹介していました。日本神経内視鏡学会では毎年トレーニングの講習会をしています。
私は脳内出血の内視鏡手術には疑問を持っています。エビデンスに則った治療をすべきでしょう。
当たり前ですが、脳出血の手術で訴えられては堪りません。
しかし、、、被殻出血の開頭血腫除去術はシルビウス裂を開けるいいトレーニングになるのも事実です。
内視鏡を選択する位なら、開頭の方がいいかな?
返信する
コメントありがとうございます (脳外科見習い)
2007-06-01 16:46:05
内視鏡での開頭血腫除去術でのトラブルを
他でも聞いたことがあります。

内視鏡の腫瘍に対する適応拡大をはかるための
御遺体を使った解剖学的考察や
トレーニングなどは目をみはるものがありますが、
脳出血の場合は別と考えた方が良いのかもしれません。

郷に入っては郷に従えですが、
米国でのお話とても参考になります。
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