以前にも話題になっていた東京都メディカルスクール構想の記事があったので一言。
まだ純粋だったころの僕はこんな感想を書いていました。
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メディカルスクール:医学部生以外から養成 都が検討委初会合 /東京
毎日新聞 2007年8月9日
臨床医を医学部生以外からでも独自に養成する4年制の専門職大学院「メディカルスクール」の実現を目指し、都は8日、課題を話し合う有識者検討会の初会合を都庁で開いた。委員からは現行の医学教育について「現場が必要とする人材が養成できていない」と問題点が指摘され、「メディカルスクールは解決策の一つになる」と期待感が示された。検討会は教育内容や経営を巡る議論を重ね、08年3月に提言をまとめる予定だ。
検討会は大学病院や都立病院の院長、法律の専門家ら12人の委員で構成されている。
山口一久副知事は「メディカルスクールのモデルを東京から発信し、実現に向け大きなうねりを形成したい」とあいさつした。また、座長に選ばれた国立国際医療センターの鴨下重彦名誉総長は「わが国の医学教育を土台として、医療水準を上げるための忌たんのない意見をいただきたい」と呼びかけた。
会議では、医学教育の現状について、「臨床医とともに研究者の養成もなかなかできておらず、中途半端になっている」と課題が挙げられた。また、「複数の教育方法を試す意味で、メディカルスクールを作ってもよい」などと創設の方向を評価する声が目立った。
メディカルスクールの創設は、都が昨年12月にまとめた都市戦略「10年後の東京」に盛り込んだ。臨床能力の高い医師の養成に定評がある米国の方式を参考に、社会経験や教養の豊かな大学既卒者らの入学を想定する。
現行の医学部は6年制だが、メディカルスクールは4年制で実習に重点を置いた教育を行う。都によると、オーストラリアや韓国など、4年制大学院の医学教育を取り入れる国が増えているという。【木村健二】
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まず6年制を4年制にすれば早く医師を養成できるので、
医師不足がちらほら見え始めた東京都も乗り出しているのかな?
と疑念がある。
次に、
・現場が必要とする人材が養成できていない
・臨床医とともに研究者の養成もなかなかできておらず、中途半端になっている
に関してだが、頑張っている人達がいる中、
こういった決め付けるような言い方もどうかと思うが、
これらは入学してくる素材というよりも、
学校のシステムという調理の問題によるところも大きいのではと思う。
素材の問題だと主張するのならば、わざわざ新しく作る必要はなく、
既存の医学部を学士入学にすれば良いだけの話である。
恐らく詰め込み教育の専門4年制だと、
部活動やらの人間関係を形成するのに
有効なツールとして働いていたものは廃れてしまうだろう。
教養の間、受験勉強に汚染されていた脳は
すっかりアルコールに汚染されてしまったりして。
そればかりではないけど、ゆとりが人間を育ててくれる部分もあるということ。
メディカルスクール受験勉強に汚染されていた脳
は果たして現実の世界に戻ってこれるだけの余裕はあるかな?
複数の教育方法を試す意味で、
メディカルスクールを作ってもよいという意見には賛成である。
抜本的に既存の影響を取り去りたいというのならば、
既存の大学を学士入学のみにするという方法ではなく、
既存の総合大学に併設という形で新設が良いと思う。
単科専門学校ならば趣旨とは逆の狭い了見の人間が養成されてしまうだろう
(自分も医専出身者だが)。
国が果たして新設を認めるか?という疑念は残る。
最後に対GTP比医療費アップも
諸外国に見習って推進して欲しいものである。
教育にだってお金をかけないから、
必要な人材が育たないわけであって、
なんだかこの構想はマスプロ・ローコストで
医師を養成しようとしているのでは?
という疑念が消えません。
守ってくれるOBがいない彼らには
「来年から君達は東京都僻地枠だ」
という通達がきちゃったりして・・・
関連ブログ:
ポンコツ研究日記~悩める産婦人科医のブログ~;メディカルスクールはどうでしょう
-2007/8/9
最後まで読んでくれてありがとうございます。
メディカルスクール構想には疑念が残ると思った方、
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以前一度だけコメントさせていただいた者です。
メディカルスクールの矛盾について思うところを述べます。
確か昨年からでしたか?薬学部が6年制になりましたよね。多くの大学ではクサビ形カリキュラムで1年生から専門科目を学習するのでしょうから、6年間の内、専門科目のトータルでの学習期間は4.5年~5年くらいにはなるのでしょうね。一方メディカルスクールは学習期間が4年間と決められていますから、ここを卒業する医師たちは、驚くなかれ、コメディカルである薬剤師よりも専門教育の期間が短くなるわけです。何という矛盾でしょうか?
また、現在の卒後2年間研修必修化の旗振り役である医学界の大御所の先生によれば、この研修はメディカルスクールでは3・4年次臨床実習に移行されるとのことです。そうなりますと、基礎医学の講義・自習、臨床医学の講義部分を前半2年間で消化することになりますから、これって非現実的な過密カリキュラムになると思うのですが・・・。また、現行の卒後研修は医学部で最低4年以上の専門教育を受け、国家試験に合格した医師が受ける研修ですが、その同じ研修をメディカルスクールで2年しか専門教育を受けず、かつ国家試験も受験していない医師ではない学生がこなせるものなのでしょうか?
現行の6年制医学部でもクサビ型カリキュラムで専門教育期間は5年近くになっているでしょう。医学の進歩は非常に速く、医学部生が学ばなければならない知識も加速度的に増えて行きますから、もう1・2年専門教育期間が必要になり、結果として高卒後8年を経て医師になるというのであれば非常に理にかなっており納得できます。しかしながら、現行より専門教育期間が短くなり、かつ十分な基礎学力が身に付かないまま臨床実習に入る、それでいて医師免許取得までには2年余計にかかるというのでは、矛盾にも程があり全く賛成できません。総じてメディカルスクール構想は専門教育軽視という医学の進歩に対して逆進的な方向へ進んでいると思えてなりません。
わたくしの大学では学士入学(3年生編入)
をやっていないので、そこらへん
どうやりくりしているかにヒントがあるように
思えます。
医学部2年次で、現行だと、解剖は終えてしまいます。となるとワーキングプアであえぐ、歯学部や薬学部など、医学部での必修単位と似通った単位を取得できる学部卒、若しくは単位が揃ったところで編入試験というのが理にかなっているように思えます。
米国では6割が文系出身と聞きますが、
かなり詰め込みの4年間のようにも聞こえてきます。
>現在の卒後2年間研修必修化の旗振り役である医学界の大御所の先生によれば、この研修はメディカルスクールでは3・4年次臨床実習に移行されるとのことです。
現在の学生の臨床実習はお客さんの感が否めません。
おかげ様で、部活をたくさんできたというのが正直な感想です。ただ、学士入学であれば、最後のこの期間まで部活をやっているというのはちょっと・・・という感じですね。
参加型の臨床実習が2年あれば、今の臨床研修システムの意義も薄らいでくると思いますが、学生に医療行為などトンデモないという世論が聞こえてきそうです。