毎日新聞社より御意見の募集です。
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ご意見、ご感想をお寄せください。
ファクス(03・3212・0635)
Eメール t.shakaibu@mbx.mainichi.co.jp
〒100-8051 毎日新聞社会部「医療クライシス」係。
毎日新聞 2007年9月3日 東京朝刊
医療クライシス:がけっぷちの産科救急/1 周産期施設、名ばかり
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/medical/news/20070903ddm002100154000c.html◇
医師確保厳しく、機能不全
人けのない分娩(ぶんべん)室の片隅に、へその緒を留めるクリップや薬剤が封を切られることなく置かれていた。国立病院機構舞鶴医療センター(京都府舞鶴市)は、緊急帝王切開手術など比較的高度な周産期医療(出産前後の母子への医療)に対応する「地域周産期母子医療センター」に認定されているが、昨年4月から産科を休診している。産科の常勤医がいなくなったためだ。
以前は50代の男性医師と、小さな子どものいる30代夫婦の医師の計3人が勤務していた。だが、リスクの高い患者の来院が多いうえ、3日に1回は当直で、勤務は過酷だった。女性医師は、我が子を集中治療室に寝かせながら夜間の緊急手術にも対応していたが、一昨年夏に辞めた。夫の男性医師も一昨年暮れに退職。残った50代の男性医師も疲れ果て、昨年3月にセンターを去っていった。同センターは、京都府北部の周産期医療の中核を担うはずの施設。常盤和明副院長は「はっきり言って異常事態。だが、医師は確保できず、再開の見通しは立っていない」と力なく語る。
■ ■
厚生労働省は96年に定めた周産期医療システム整備指針で、リスクの高い母体の搬送など高度な医療に対応する「総合周産期母子医療センター」を、各都道府県で1カ所以上設置するよう求めた。地域周産期母子医療センターも、全国を358地域に分けた「2次医療圏」ごとに1カ所以上設けるよう勧めている。
厚労省によると、総合センターは現在、41都道府県で67施設が指定され、地域センターも33都道府県で210施設(4月現在)が認定されている。しかし、舞鶴医療センターのように、名ばかりの施設も少なくない。
京都府が地域周産期母子医療センターに認定している綾部市立病院もその一つだ。同病院産婦人科の上野有生主任医長は「1年半ほど前に突然、うちの病院が認定されると新聞に出てびっくりした。全く寝耳に水だった」と振り返る。認定されると、他病院からの母体搬送を受け、緊急手術などに対応しなければならない。当時、産婦人科の常勤医はわずか2人。小児科医も2人で、受け入れられる体制にはなかった。
上野医長は「この人数で母体搬送を受け入れなければならないのかと府に問い合わせたが、『これまで通りのことをしてくれたらいい』との返答だった。母体搬送は今も受け入れていないが……」と困惑気味に話した。
■ ■
舞鶴医療センターは現在、近くの産科から未熟児などの受け入れを要請されると、センターの小児科医が救急車で駆け付け、センターに運んで治療する。周辺地域に高度な新生児医療ができる施設がないためだが、搬送に危険を伴わないことが条件のため、運用は限られているのが実情だ。切迫早産など母体搬送が必要なリスクの高い患者の多くは、遠く京都市や兵庫県に搬送されている。
京都府健康・医療総括室の松村淳子総括室長は「舞鶴医療センターの機能を早く取り戻すことが緊急の課題と認識しているが、産婦人科医は簡単には見つからない。どこにいるのか、知っていたら教えてほしい」と頭を抱える。
奈良県橿原市の女性が救急搬送中に死産した問題で、改めて周産期医療の不備が浮かんだ。現状と課題を追う。=つづく
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周産期センター:受け入れ要請3分の1を断る 05年度
切迫早産などハイリスクの出産に対応する全国の総合・地域周産期母子医療センターで、05年度にあった受け入れ要請のうち、約3分の1は満床などのため対応できなかったことが、毎日新聞の調査で分かった。受け入れできなかった件数は、判明分だけで約3000件に達する。地域センターの中には、産科の休診などで機能していない施設があることも判明。医師不足の中、周産期医療(出産前後の母子への医療)の「最後のとりで」が十分に機能を果たせていない実情が浮かんだ。
調査は、総合周産期母子医療センターと地域周産期母子医療センター計272カ所(2月現在)を対象に実施。05年度の搬送要請件数などについて尋ね、149カ所(55%)から回答を得た。
その結果、記録が残っていた分だけで、母体の搬送要請が延べ9932件あったが、2916件は受け入れできなかった。要請のうち700件は都府県境を越えた要請で、半数を超える370件は受け入れできず、19病院に断られた昨年の奈良・大淀病院のようなケースが各地で発生していることをうかがわせる。
受け入れできなかったケースで最も多い理由を尋ねたところ、「新生児集中治療室(NICU)が満床」が75カ所。「母体胎児集中治療室(MFICU)が満床」は16カ所、「診療できる医師がいなかった」は14カ所だった。
受け入れ数を増やすために最も優先度が高い対策については、▽医師の増員60カ所▽NICUの増床56カ所▽後方支援施設を作る18カ所--の順。医師以外のスタッフ増員を求める回答も5カ所あった。
また、地域センターの中に、ハイリスク出産を受け入れていないなど、事実上機能していない施設が16カ所あった。理由は「大学病院へ産婦人科医が引き揚げられていなくなった」(北海道立紋別病院)、「産科医が大学病院への引き揚げなどでいなくなり、産科を休止しNICUも閉鎖した」(東北厚生年金病院)、「小児科の常勤医が05年6月退職し、休診している」(天草中央総合病院)などだった。
総合センターはMFICU6床以上、NICU9床以上などを備えた施設で、都道府県が指定。国は08年3月までに全都道府県で最低1カ所の設置を求めている。地域センターは、24時間体制で緊急帝王切開手術などに対応できる施設で、都道府県が認定する。【五味香織、田村彰子】
毎日新聞 2007年9月3日 3時00分
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穿った見方をすると現場批判ともとれないことはありませんが、
システムエラーと医療スタッフの過労
をとりあげている点から、前向きに捉えていると考えましょう。
結果的な(自発的ではない)このようなアクセス制限は
もう致し方ないことだと思いますが・・・。
疲れ果てて、これ以上去り続けることを何とか食い止める
方法しか今は無いと思います。
皆さん意見をどしどし送ってみましょう。
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毎日新聞 2007年9月3日 東京朝刊
医療クライシス:がけっぷちの産科救急/1 周産期施設、名ばかり
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/medical/news/20070903ddm002100154000c.html◇
医師確保厳しく、機能不全
人けのない分娩(ぶんべん)室の片隅に、へその緒を留めるクリップや薬剤が封を切られることなく置かれていた。国立病院機構舞鶴医療センター(京都府舞鶴市)は、緊急帝王切開手術など比較的高度な周産期医療(出産前後の母子への医療)に対応する「地域周産期母子医療センター」に認定されているが、昨年4月から産科を休診している。産科の常勤医がいなくなったためだ。
以前は50代の男性医師と、小さな子どものいる30代夫婦の医師の計3人が勤務していた。だが、リスクの高い患者の来院が多いうえ、3日に1回は当直で、勤務は過酷だった。女性医師は、我が子を集中治療室に寝かせながら夜間の緊急手術にも対応していたが、一昨年夏に辞めた。夫の男性医師も一昨年暮れに退職。残った50代の男性医師も疲れ果て、昨年3月にセンターを去っていった。同センターは、京都府北部の周産期医療の中核を担うはずの施設。常盤和明副院長は「はっきり言って異常事態。だが、医師は確保できず、再開の見通しは立っていない」と力なく語る。
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厚生労働省は96年に定めた周産期医療システム整備指針で、リスクの高い母体の搬送など高度な医療に対応する「総合周産期母子医療センター」を、各都道府県で1カ所以上設置するよう求めた。地域周産期母子医療センターも、全国を358地域に分けた「2次医療圏」ごとに1カ所以上設けるよう勧めている。
厚労省によると、総合センターは現在、41都道府県で67施設が指定され、地域センターも33都道府県で210施設(4月現在)が認定されている。しかし、舞鶴医療センターのように、名ばかりの施設も少なくない。
京都府が地域周産期母子医療センターに認定している綾部市立病院もその一つだ。同病院産婦人科の上野有生主任医長は「1年半ほど前に突然、うちの病院が認定されると新聞に出てびっくりした。全く寝耳に水だった」と振り返る。認定されると、他病院からの母体搬送を受け、緊急手術などに対応しなければならない。当時、産婦人科の常勤医はわずか2人。小児科医も2人で、受け入れられる体制にはなかった。
上野医長は「この人数で母体搬送を受け入れなければならないのかと府に問い合わせたが、『これまで通りのことをしてくれたらいい』との返答だった。母体搬送は今も受け入れていないが……」と困惑気味に話した。
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舞鶴医療センターは現在、近くの産科から未熟児などの受け入れを要請されると、センターの小児科医が救急車で駆け付け、センターに運んで治療する。周辺地域に高度な新生児医療ができる施設がないためだが、搬送に危険を伴わないことが条件のため、運用は限られているのが実情だ。切迫早産など母体搬送が必要なリスクの高い患者の多くは、遠く京都市や兵庫県に搬送されている。
京都府健康・医療総括室の松村淳子総括室長は「舞鶴医療センターの機能を早く取り戻すことが緊急の課題と認識しているが、産婦人科医は簡単には見つからない。どこにいるのか、知っていたら教えてほしい」と頭を抱える。
奈良県橿原市の女性が救急搬送中に死産した問題で、改めて周産期医療の不備が浮かんだ。現状と課題を追う。=つづく
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周産期センター:受け入れ要請3分の1を断る 05年度
切迫早産などハイリスクの出産に対応する全国の総合・地域周産期母子医療センターで、05年度にあった受け入れ要請のうち、約3分の1は満床などのため対応できなかったことが、毎日新聞の調査で分かった。受け入れできなかった件数は、判明分だけで約3000件に達する。地域センターの中には、産科の休診などで機能していない施設があることも判明。医師不足の中、周産期医療(出産前後の母子への医療)の「最後のとりで」が十分に機能を果たせていない実情が浮かんだ。
調査は、総合周産期母子医療センターと地域周産期母子医療センター計272カ所(2月現在)を対象に実施。05年度の搬送要請件数などについて尋ね、149カ所(55%)から回答を得た。
その結果、記録が残っていた分だけで、母体の搬送要請が延べ9932件あったが、2916件は受け入れできなかった。要請のうち700件は都府県境を越えた要請で、半数を超える370件は受け入れできず、19病院に断られた昨年の奈良・大淀病院のようなケースが各地で発生していることをうかがわせる。
受け入れできなかったケースで最も多い理由を尋ねたところ、「新生児集中治療室(NICU)が満床」が75カ所。「母体胎児集中治療室(MFICU)が満床」は16カ所、「診療できる医師がいなかった」は14カ所だった。
受け入れ数を増やすために最も優先度が高い対策については、▽医師の増員60カ所▽NICUの増床56カ所▽後方支援施設を作る18カ所--の順。医師以外のスタッフ増員を求める回答も5カ所あった。
また、地域センターの中に、ハイリスク出産を受け入れていないなど、事実上機能していない施設が16カ所あった。理由は「大学病院へ産婦人科医が引き揚げられていなくなった」(北海道立紋別病院)、「産科医が大学病院への引き揚げなどでいなくなり、産科を休止しNICUも閉鎖した」(東北厚生年金病院)、「小児科の常勤医が05年6月退職し、休診している」(天草中央総合病院)などだった。
総合センターはMFICU6床以上、NICU9床以上などを備えた施設で、都道府県が指定。国は08年3月までに全都道府県で最低1カ所の設置を求めている。地域センターは、24時間体制で緊急帝王切開手術などに対応できる施設で、都道府県が認定する。【五味香織、田村彰子】
毎日新聞 2007年9月3日 3時00分
************************
穿った見方をすると現場批判ともとれないことはありませんが、
システムエラーと医療スタッフの過労
をとりあげている点から、前向きに捉えていると考えましょう。
結果的な(自発的ではない)このようなアクセス制限は
もう致し方ないことだと思いますが・・・。
疲れ果てて、これ以上去り続けることを何とか食い止める
方法しか今は無いと思います。
皆さん意見をどしどし送ってみましょう。
新聞社が意見を求めているのは、医療関係者ではなく、コロッと騙される人々でしょう。賛同、あるいは賛同に近い意見が欲しいのでしょう。もしくはもっと、もっと、こうしてほしいという患者側の立場の意見のサンプリングでしょう。
マスコミというバイアスを通して語り合っても、今の医療と患者の対立は解消しない。やはり医師が発信装置を持つほかないのでしょうか。もっとも自分はかなり脱力しておりますが・・・。それにしても、座位samaは自分とほぼ同じ齢と思いますが、お元気だなぁと感心します。
医師の発信装置は必要だと思いますが、
それもマスコミにバッシングされるような・・・
医師が脱力しているから、
マスコミもわからないという話も聞きます。
医療系ブログなんて読んで勉強しているとは
思えないので投書が必要です。
マスコミの仕事というのは
増幅装置みたいなものだと思うので、
こちらの声もその増幅装置に
入れてみたいと思います。
厚労省や都道府県が現場の状況を無視して、対策をとってますよととりあえずポーズをとればいいと考えている姿勢がよくわかります。
そして困窮するのは丸投げされた現場の医療機関だという構図が。
新聞記事の最後は「現状と課題を追う」という感じで締めくくられていることが多いですが、具体的な対策を一緒に考えてもらいたいですね。
お疲れ様です。
「いかなる脳出血であっても、早期であれば救命できて当然である 」
というJBMができないことを祈ります。
http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20070831
http://megalodon.jp/?url=http://www3.nhk.or.jp/news/2007/09/03/d20070903000011.html&date=20070903121555
この問題は、先月29日、奈良県で救急車を呼んだ妊娠中の女性が、10の医療機関に相次いで受け入れを断られた末、死産したものです。この問題について、舛添厚生労働大臣は、どの段階で問題があったのか消防や病院の対応などを調べて一つ一つ改善していきたいという方針を示しており、今後の対応策について、3日、奈良県の荒井知事と会談し、意見を交わすことにしています。舛添大臣としては、3日の会談などを通じて、▽隣接する都道府県どうしの医療機関が直接、連絡を取り合えるシステムの整備や、▽急病の患者を搬送する消防の情報収集態勢など、都道府県を越えた広域で救急時の妊婦を受け入れる態勢を強化するための対策について、国として検討したい考えです。今回の問題をめぐって、厚生労働省は、再発防止に向けて、奈良県に対し、救急時の妊娠中の女性を大阪府内の医療機関に受け入れてもらえるよう、連絡が取り合えるシステムを緊急に整備するよう、すでに指示しています。
NHKニュース 9月3日 7時5分
同じ新聞社でも、やや論調が違っていて、
社内での意見統一がなされていない感じがしますね。
経営基盤が脆弱なので、毎日新聞の地方版では、
売れそうならばどんな記事でも構わない
という雰囲気が伝わってきます。
マスコミは結局、世間を映す鏡に過ぎませんが、
伝え方によっては、医療者側からの視点を
増幅させてくれることもありえるのでは
と僕はまだ可能性を捨てていません。
8月上旬にも、毎日新聞は全国版と奈良版で正反対とも
いえるような論調の記事を書いてました。
http://ameblo.jp/y-gami/entry-10042671809.html
地方版は、あのスクープにまだすがりついていたいような論調でしたが、
全国版は冷静に見ているようですね。
今回の医療クライシスは比較的良い記事だったと思います。
マスコミもまたヒト次第です、よね。
人間は、だまっとれということですね。
御意。
医療環境はいつまでたってもよくなりそうにはないと
実感し確信する。