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アジアの裏側

「エイズに冒された日本人」

2006-12-21 10:56:34 | アジア
1984年のタイでのエイズ第一号発見から、かなり時間がたつ。HIV感染者や取材の分厚いメモを通して、彼らの悲痛な声が響いてくる。
1.タイ・チェンライ県国立病院エイズC病棟。「姿勢を変えると背中が心臓の鼓動にあわせて痛み、電気ショックを受けたように背骨から足までしびれる。看護婦さんがしもの面倒を見てくれるがベットから下りて用を足すと、ものすごい痛さと汗が出て、ベットに戻るのが大変です」「いつからこの病院に入院しているの?体重は何キロ?」「2年前の5月。体重は27キロ」。
本田早苗27才(仮名)北海道出身。高校卒業後フリーターになり海外旅行が好きでお金が貯まるとイタリア、モロッコ、インド、ネパール、マレーシア、シンガポール、タイを旅行し各地で地元男性と知り合いコンドームを使わずセックスをしていた。「何故コンドームを使わなかったの?」「イタリアの男性から『エイズなんて百連発のロシアンルーレットと同じ、終わったら石鹸で洗えば感染はしない』と言われ信用してしまった」「何故日本に帰らないの?日本の家族は見舞いに来た?」「日本は入院費が高いしエイズ治療に関してはタイの方が進んでいると聞いたから。父親が二回見舞いに来たけどその後は毎月五万円の送金があるだけです」「なにかいいたいことは?」「私に近寄らないで・・・・・といいたい」大粒の涙を拭くために竹の棒のような細腕をティッシュペーパーに伸ばした。この話一年以上前の事で早苗さんはもう亡くなっているに違いない。

2.ある東京のTVプロダクションの取材チームがタイでの取材が終わり帰国前アシスタントがパトポン・ストリートで女性を買った。この場所の売春婦(オカマも多い)は殆どがエイズに感染しているので私は「必ずコンドームを使うように、できれば二枚三枚四枚・・・・・十枚重ねて」と。かぶせていくうちにその気がなくなるだろうと思ったから。
ところが彼は売春婦から「私はエイズではない。若いしこんなに肌がきれいでしょう。だからコンドームは使う必要はない」といわれセックスをし帰国後検査をしたらエイズに感染していることがわかり自殺未遂をしたそうだ。タイの売春婦は必ずコンドームを使わせる。使わない子は感染者と見て間違いはないのに彼はそのことを知らなかったのだ。

約六年前、取材中私はエイズ患者と一緒に食事を取った。彼は自分の箸で料理をつまんで、せっせと取ってくれる。こんなことでは絶対にうつらないとわかっていても結局ビクビクしている自分に気がついた。「ありがとう」とにこやかにいっているつもりが、私の顔はこわばっていたようだ。握手しても、キスしても、HIVは感染しないとわかっていても、どこか腰が引けているのは、やはり体でわかっていないということだ。

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