アジアニュース

アジアの裏側

「鳥 葬」

2006-12-29 12:51:08 | アジア
「魂の抜けた肉体を鳥にお布施する。鳥は魂を天へと導く」

中国四川省の成都から悪路を車で三十時間ほどで青海省との境界近くに位置する唐克にたどり着く。
ここではチベット遊牧民族が彼ら特有の風習をかたくなに守りながら生活しており、中国政府の外国人立ち入り禁止地区に指定され撮影も禁止されているため、成都大学人類学助教授と身分を偽っての取材となった。
チベット自治区での生活は予想をはるかに越える厳しいものである。
高地での生活に慣れない私は「高山病」という未知の病気に容赦なく襲われた。
薬や鍛錬で克服できる病気ではないだけに、頭痛と吐き気に襲われ数日間は酸素ボンベの世話になりながら徐々に薄い空気に体を慣らしていかなければならなかった。なにしろ自治区全体が富士山頂の標高を凌ぐ高さに位置しているのだ。
さらに「一日の中に四季がある」といわれ。二十五度を越える激しい寒暖さ。夏でも早朝は零度以下まで冷え込み昼間は二十八度まで気温が上がる。
私はチベット人家族のテントに居候し毎日、大麦の粉で作ったパンとバター茶での生活が始まった。
ヤクの糞を乾燥させて作った燃料をテントの中で燃やし暖を取り料理を作る。
風呂はナシ。聞けばチベット人は一年に一度、川で水浴びをするだけなので垢まみれで体臭はすざましい。
そして、そんな生活をしながら葬儀用の遺体を待った。

チベット民族の風習でもっとも神秘のベールに包まれているのが葬儀であろう。
伝染病、罪人に行われる土葬。物乞い、未亡人、幼児、貧しい人々を対象とした水葬。高貴な人や僧侶は火葬にされその灰は風に撒くか川に流される。
ダライ・ラマやそれに次ぐ法王はミイラにして塔にまつられる塔葬。そして、有名な鳥葬である。
ラマ教の僧侶が読経中に鳥葬と判断したときにだけ行われるこの方法は「魂は鳥によって天に運ばれる。そして、ただの肉の塊となった人体を鳥に布施して自然に帰す」との考え方から生まれている。
遺体は鳥葬前日の葬儀で白い布で包み、部屋の一角に安置し僧侶の読経によって肉体から魂を解き放つ。翌日、魂の抜け殻である肉体を夜明けとともに東側に面した小高い丘の中腹の鳥葬場へ運ぶ。周辺では、お経がびっしりと書かれた白い布が幾重にも風にたなびくなか香をたき死体処理人が空に向って「ピュアー、ピュアー」と叫びハゲタカを呼び寄せ遺体を解体する。
肉と骨を分け、初めに骨を小さく砕き大麦の粉をまぶしハゲタカに与え、次に同じように肉を処理する。
集まった鳥たちは待ちきれず解体している間も物凄い勢いで肉をついばみ、凄まじい遺体処理劇が展開される。

チベットでは多夫多妻、一妻多夫の結婚形態が生きており一人の女性を兄弟で所有していることも珍しいことではない。女は毎朝、遊牧に行った夫の無事を祈り、男は遠くの遊牧地でこれから転生の役を担うはずのわが子を思う。
生命や家族をぎりぎりのところで守る人々がここには存在する。文明社会の衣を着せられた私達はチベットという一つの「極」に生きる者の姿をどうとらえるべきなのだろうか。

「恋人を売る日本人」

2006-12-25 08:27:26 | アジア
「あんた日本人?だったら俺の女買わない?千バーツ」脱北者売春婦取材でタイ・チェンコンに取材で行ったときのこと。
ただでさえ田舎の売春宿に日本人のポン引きがいたのには驚いたけど、自分の彼女を同じ日本人に売ろうとしているアホがいたのにはビックリした。

林康治二十八歳関西出身。彼は関西の某大学を卒業後五年間地元の銀行に勤め在学中ボランティアで来たラオスが忘れられず、銀行を退職してラオスに行き、そこでラオス人少女M(当時十六歳)と知り合った。
「なぜタイの売春宿でポン引きしているの?」「ラオスのフエサーイで彼女と知り合いタイに来たがお金がなくなり彼女を説得し売春をさせている。俺が客一人見つけると店から百バーツもらえる」「彼女が客取っているとき君はどう思っているの?Mのこと好きなんだろう?」「Mが客を取っているときは何も考えないようにしている。そして、時々ラオスに行って女性を売春宿に連れてくると一人につき五千バーツもらえる。いい稼ぎになるよ」「何、人身売買もしているのか。どういう方法で女性を集めるの?」「貧しい農家に若い女性がいると親にタイのレストランで働けば一ヶ月八千バーツになる。と言って前渡し金として一万バーツ渡す。前渡し金は倍にして返してもらう。俺は日本人だからラオス人は信用してくれるし上手くやっているよ」北ラオスの女性はモン族・中国人の混血が多く美人の産地としても有名だ。
「多くの両親は娘の収入を誇らしげに話すが、どうやって稼いでいるかの事実は知らないようだ。親は、娘たちがレストランや衣服メーカーで働いていると思い込んでいる」と林は言うが同じ年頃の娘達が一年働いても稼ぐ事ができない金を毎月送金してきて帰郷のとき派手な服を着て帰れば、どんな世間知らずの親でも薄々感づいているはずだ。
「売春婦になるのは恥ずかしい事ではない。なぜなら両親にお金を返す手段だから」と村の文化を逆手にとって
「娘達が大金を稼いでいるということにプライドを持つべきだ」と両親をも説得する斡旋業者もいるという。

「いつこの仕事から足を洗うんだ?君の彼女は今十七歳だ。タイでは重罪だ。逮捕されたら二十年以上刑務所にぶち込まれるぞ」と私が言うと「店は地元の警察に毎月金を払っている。捕まるわけがないよ」。
東南アジアにはこの手の日本人が増えた。日本では何も出来ない、だから海外に出てくる。
日本で使えない人間が海外に出ても生きていけない事を何故分からないのだろう。

「ラオス北部の村では子を持つなら男の子、娘より息子という考えが伝統的にある。男の子には価値がある、女の子は悪を持って生まれてくる。だから丁重に扱われ、家族の中では高い地位につく。タイ・ラオスの男性は一生に一度仏門に入る事によって徳を積む習慣がある。男は出家する事により、両親に感謝の気持ちを表すことが出来るが、女の子はそういうことは出来ない。普通、両親は娘達に感謝の気持ちを表させるために、家族のために一生懸命働きなさいという。そして売春は家族に富をもたらし、両親に義務を果たす新手の手段となった」とチェンライ大学のソムチャイ教授から聞いた事がある。

「エイズに冒された日本人」

2006-12-21 10:56:34 | アジア
1984年のタイでのエイズ第一号発見から、かなり時間がたつ。HIV感染者や取材の分厚いメモを通して、彼らの悲痛な声が響いてくる。
1.タイ・チェンライ県国立病院エイズC病棟。「姿勢を変えると背中が心臓の鼓動にあわせて痛み、電気ショックを受けたように背骨から足までしびれる。看護婦さんがしもの面倒を見てくれるがベットから下りて用を足すと、ものすごい痛さと汗が出て、ベットに戻るのが大変です」「いつからこの病院に入院しているの?体重は何キロ?」「2年前の5月。体重は27キロ」。
本田早苗27才(仮名)北海道出身。高校卒業後フリーターになり海外旅行が好きでお金が貯まるとイタリア、モロッコ、インド、ネパール、マレーシア、シンガポール、タイを旅行し各地で地元男性と知り合いコンドームを使わずセックスをしていた。「何故コンドームを使わなかったの?」「イタリアの男性から『エイズなんて百連発のロシアンルーレットと同じ、終わったら石鹸で洗えば感染はしない』と言われ信用してしまった」「何故日本に帰らないの?日本の家族は見舞いに来た?」「日本は入院費が高いしエイズ治療に関してはタイの方が進んでいると聞いたから。父親が二回見舞いに来たけどその後は毎月五万円の送金があるだけです」「なにかいいたいことは?」「私に近寄らないで・・・・・といいたい」大粒の涙を拭くために竹の棒のような細腕をティッシュペーパーに伸ばした。この話一年以上前の事で早苗さんはもう亡くなっているに違いない。

2.ある東京のTVプロダクションの取材チームがタイでの取材が終わり帰国前アシスタントがパトポン・ストリートで女性を買った。この場所の売春婦(オカマも多い)は殆どがエイズに感染しているので私は「必ずコンドームを使うように、できれば二枚三枚四枚・・・・・十枚重ねて」と。かぶせていくうちにその気がなくなるだろうと思ったから。
ところが彼は売春婦から「私はエイズではない。若いしこんなに肌がきれいでしょう。だからコンドームは使う必要はない」といわれセックスをし帰国後検査をしたらエイズに感染していることがわかり自殺未遂をしたそうだ。タイの売春婦は必ずコンドームを使わせる。使わない子は感染者と見て間違いはないのに彼はそのことを知らなかったのだ。

約六年前、取材中私はエイズ患者と一緒に食事を取った。彼は自分の箸で料理をつまんで、せっせと取ってくれる。こんなことでは絶対にうつらないとわかっていても結局ビクビクしている自分に気がついた。「ありがとう」とにこやかにいっているつもりが、私の顔はこわばっていたようだ。握手しても、キスしても、HIVは感染しないとわかっていても、どこか腰が引けているのは、やはり体でわかっていないということだ。

「ミスコン・ママさん」

2006-12-16 09:52:43 | アジア
タイは美人コンテストの好きな国です。ミス水掛祭り・ミス牛祭り・ミス灯篭流し、といった祭りから冠と取ったりミスチェンマイ、ミス何々大学とあげるときりがない。その頂点にあるのが「ミスタイランド」。
シーウィエン・タンチャイさん67歳、私が取材したタイ女性の中でもっとも好感のもてる人だ。
彼女は40年以上も美人コンテストに関わり普通の女の子をスターに仕上げてきた一人、何度か大きい大会で優勝した経験もある。
「貴女は何故この仕事を始めたんですか?結局ミスコンを商売にしているんでしょう?」「貧しい子供達に夢を与えたいから、商売と言われるのは心外です。このような子供達に教育を受けさせる手伝いをしているだけ、女の子は教育を受け聡明でなければならない、このことは美しいということより大事なことです。」。
シーウィエンさんの家はバンコクの住宅街の2階建てタウンハウス。
ここの2階に地方からスカウトしてきた15才から17才までの女の子12人が住んで学校に通っている。
化粧をしコンテスト用に髪をセットして学校の宿題をしている子、田舎の親に手紙を書いている子、英語の勉強をしている子、シーウィエンさんは「学校の規則でパーマがかけられない子にはヘアーピースをつけさせてコンテストに出場させる。学校もなるべく休ませないようにしている。」という。
彼女達に話を聞いてみた「学業とこの仕事両立できる?」「学校に行きたいけど家にはお金がないから。コンテストが続くと眠いし疲れます。でも、シーウィエンお母さんには感謝しています。」又ある子は「私の田舎では中学を卒業すると女の子は町の売春宿で働く子が多いが私は学校に行かせてもらいきれいな服を着て舞台に上がり皆の視線を集められる、楽しいです。」。
シーウィエンさんは多くの子をかき集めて出場させることで参加料を主催者側からもらえる。これが女の子の安定収入にもなり、シーウィエンさんの収入にもなる。出場の取り分はシーウィエンさんと女の子が半分ずつ。入賞すれば賞金の六割は女の子、四割はシーウィエさんに。悪い言葉で言えば「ミスコン荒らし」北にミスコンがあると聞けば北に行く、南にあるといえば南に行く。朝4時、この日は8人の女の子とメイク担当のオカマさん二人を連れてワンボックスカーに乗り込みラオス国境の県ブッタハンまで10時間かけミス・メコン川コンテスト会場に乗り込む。
この日は2人が入賞したが優勝は地元の子、「地元有力者が手を回したようだ」とシーウィエンさんの表情は厳しい。
彼女がもっとも期待する子トゥイ16才。両親はカンボジア国境のスリン県で手伝い仕事ををしている貧しい家庭の子。
でも、それを隠そうともせず大学に行き福祉関係の仕事をしたいと胸を張って話す子だった。
予選で6人が残り決勝が終わったのは夜11時、期待の星トゥイは準ミス。今回のツアーでは準ミス賞金5万バーツ、全員の出場料の1万6千バーツが収入として入った。
トゥイは私に「優勝できなかったが嬉しい。悔しくはないがシーウィエンお母さんには申し訳ない気持ちでいっぱいです。でも、田舎の親に負担をかけずこのお金で高校に行くことができます。そして、半分は親に送ります」。
タイは貧しい家庭が多すぎる、向学心に燃えた子供達が十分に教育を受けられないケースが多い。

国中をあげてお祭り騒ぎをする「ミス・タイランド」このときは国論を二分する。
優勝アナウスが告げられた瞬間、「今回のミスタイランドは英語も話せない・家が貧しい・大卒ではない・胸が貧弱・このような女性をタイ代表で世界に送り出すのは国の恥だ」この手の攻撃が始まる。「英語の話せる人を送り込みたい」タイ人特有の見栄っ張り根性、日本人旅行者が優しいタイ人とほめる微笑の国の人がである。
あるローカル紙に至っては「準ミスをタイ代表として派遣するよう大会事務所に手紙を書こう」と読者をあおる始末。このときのミスタイランド代表はアノンさんに決まった。
彼女の家は貧しく父親は定職はない。アノンは小学校のとき放課後市場でごみをいっぱいつめたリヤカーを押してアルバイトをし家計を助けた。
彼女は優勝インタビューの中で「そういう圧力には屈しない、新聞が書いていることに私は影響を受けることはない。自分の意見で他人を傷つける事は無意味だし、何事も全ての人を満足させることは出来ない」。同感ですね。
彼女は優勝金200万バーツをもらったが家も新築しなかった。「古い貸家でも自分が育った思い出の家であり、両親の温もりがあるから。」どこまでも地味で好感が持てる女性だ。

「キスの罰金345万円」

2006-11-24 08:51:05 | アジア
今日は超お手軽です。
 インドネシアでこのほどまとまった刑法改正案では、公共の場でのキスを禁止し、違反した場合、最高で罰金3億ルピア(約345万円)、禁固10年を課すとしている。
また未婚者の同棲の場合禁固2年、罰金3千万ルピアとなっており、警察は疑わしきカップルがいれば家宅捜索を行うことができる。
それにしても曽我さんとジェンキンスさん良かったですね、法律が施行される前で。
ジャカルタの空港でブチューでしたから、テレビ見ていた人ぶったまげたからねー。
もちろん外国人にもこの法律は適用されるようです。