アジアニュース

アジアの裏側

「日本人女性の人身売買」

2006-12-18 09:13:49 | ドキュメント
ソムヨット26才彼が同年代の他のタイ人男性と少し違うところは彼は働かない。一家の稼ぎ手は彼の妻で、彼は髪結いの亭主だ。ソムヨットは金持ちの家に生まれたわけではないが、P村で周囲を圧倒する外国風の家に住み、新車を乗り回す贅沢な暮らしをしている。
デン69才はソムヨットと同じP村に住む百姓だ。彼はソムヨットより大きな家に住んでいる。
建築費だけでも二百万バーツ(約六百万円)十年前はおろか今でも想像できない金額だ。
この村で二人だけが一夜にして富を得たわけではない。この同じ村で同じ二十世帯以上の豪邸がある。
文字通りのボロ屋からテレビ、ビデオ、ステレオ、冷蔵庫、洗濯機付きの豪邸に引っ越した。
ボロ屋を敷地に残したまま不釣合いな豪邸が建っている。
全てが整っているにもかかわらず村には何かが欠けていた。女性がいない。若い女性がいないのだ。
ここの郵便配達も「この村は女日照りだ。ここで嫁さんを探すのは至難の業だ」と苦笑いした。
なぜ、若い女性がいないのか。バンコク、日本、台湾、香港に出稼ぎに行ってしまっているからだ。
この村には毎月二百万バーツが海外送金されてくる。特に4月、タイ正月の時には一千万バーツ以上にもなる。

大場良枝(仮名)27才関西出身、京都の某大学卒業後家電メーカーに勤めるが上司との不倫が原因で1年で退職し、在学中スタデーツアーで来た事のあるチェンライでNGOの手伝いをしようと思い一人で来た。
チェンライに来て半年後、タイ人の男Sと知り合い同棲、彼がタイ人女性を日本に送り出しているブローカーと知るには時間がかからなかった。
彼女はタイ人女性が騙され日本で売春させられていることを知っていたがSから「同じ体を売るのなら少しでも儲うけて家族に送金させた方が良い」と説得され犯罪とは知りながら協力することを承知した。
取材メモからの一問一答です。
私は「何故この仕事に手を染めるようなったか、いつから?」良枝さんは「Sから説得されたから。この仕事を始めてから約4年です」現在Sは薬物所持の現行犯で逮捕されチエンライ刑務所に収監されている。「あなたの事を『人身売買ブローカー』と言う人もいますが、誰がタイ側のボスですか?」「自分では人身売買とは思いません、何故なら彼女達は売春目的のために日本に行くことを知っているからです。ボスはいません。今は地元の警察官と共同で送り出しています」チェンライ県メーサイ郡は色白の美人が多い事で知られ地元警察の中には斡旋業を本職にしている警察官もいるという。「未成年の女性を送ったことがありますか?それと女性を集める方法は?」「何度か未成年の少数民族少女をタイから出国させた事があります。もちろん彼女達は国籍がないのでパスポートは取れません。だからチェンマイに行きタイ国籍を3万バーツで買い年齢を18才以上にしてタイの旅券を申請します。タイ国籍を持ち18歳以上であれば旅券取得には問題はありません。女性を集める方法で一番早いのはお金です。女性の親・旦那さんにお金を見せて日本で働けば毎月三万バーツ送金できる、と言いそれでも渋る人にはP村に連れて行き豪邸を見せれば殆どの人が承知します。」「日本入国にはビザが必要だが取得する方法は?」「三つの方法があります。1.タイ→シンガポール→日本→アメリカまでの航空券を買い日本に着いたらトランジットで空港近くのホテルにチェックインし日本側の人が迎えに来てその人の住んでいるところに行きます。2.本人の銀行残高証明・日本出国航空券・日本の会社から招弊状・保証人、これは正規で取るビザです。3.タイ人男性と偽装結婚し旅行代理店を通して新婚旅行で日本に行く方法。最近は違う方法を使いますが言えません」タイから日本に行くタイ人女性は一年で五万人という記録がある。出国記録が残っているのは約三万人でその差が日本国内にとどまっていることになる。
「何割が日本入国に成功するのか?入国出来なかった場合は?」「最近は6割ほどが上陸できます。入国審査で上陸不可と判断された場合国外追放になり、多くの場合日本出国の航空券を持っているので次の国に行くことになります」日本の場合ビザは外務省、日本入国は法務省管轄なので例えビザが下りても日本入国が絶対に可能ということではない。「貧しい彼女達が日本に行くためには幾ら位の借金を背負うのか。また貴女は一人送り込むといくら儲かるのか?」「日本行き希望の女性たちは、前借・旅券代・ビザ代・往復航空券・出国前バンコクでの生活費・ブローカーの手数料など約四百万円。その中から私に入るのは一人につき五十万円弱です。入国できない女性はバンコクの日本人クラブでホステスとして働き使った経費だけ返してもらいます」バンコクには約三百軒の日本人カラオケクラブがあり売春も行われている。
「運良く日本に入国できて借金を全額返すのに何年ぐらいかかるのか?借金を返すまでタイに送金はできないのか?」「約一年半、客に囲われた子は借金を肩代わりしてもらうので早く自由になります。彼女達に売春代は入りませんがチップが収入となりそれを地下銀行を使って田舎に送金します」地下銀行とは日本にいるタイ人が良枝さんに電話し彼女がジャパゆきさんに代わり家に送金するので日本とタイの間ではお金は動かない。
「今までに何人日本にタイ人女性を送り込んだか」「月平均三人、四年で約百五十人」
「今後もこの仕事を続けるのか?同じ女性として心が痛まないのか?」「日本に行きたい女性がいるかぎり続けます。殆どの女性は日本での仕事が売春だということを知っています。タイ国内で売春の値段は一回千五百円から外国人を相手にしても一万円です。私は彼女達が売春することを止めることはできません。それなら日本で一回三万円以上稼いだ方がいいのではないですか」
最近ヤクザではなく会社からリストラされたり定年退職後の日本人がタイ人女性と組み日本に女性を送り出しているケースが増えてきているという。
貧困が性的搾取につながっていることは、ある程度真実である。しかしながら、貧困が売春の根本原因であっても、それを正当化する口実にはならない。人々を人身売買に押し込んでいるのは貧困だけではない。通常はもう一つ別の原因がある。例えば大場良枝のような海外送り出し業者とか売春斡旋人などだ。言い換えれば、貧困プラス何かなのである。

最新の画像もっと見る