OUR(団)らのブログ β版

元予備校講師、現高校教諭の宮本晃吉とその関係者らが作るブログです。

古文文法問題を解く(ホームズシリーズ5)

2008-11-14 10:29:24 | 国語
前回の続きです。さらにその前もあります。


ホームズ「さて、問題は次のようなものだったということだ。

「心地なむせらるべき。」の「なむせらるべき」についての文法的説明として正しくないものを次の①~⑤のうちから一つ選べ。

①「なむ」は強調の係助詞である。
②「せ」はサ行変格活用動詞である。
③「らる」は受身の助動詞である。
④「べき」は推量の助動詞である。
⑤「べき」は「なむ」の結びで連体形となっている。


だいぶ、見えてきたものがあるだろ」
ワトソン「へえ、「。」があるから安心して係り結びの部分を処理できるね。①と⑤は正しいね」
ホームズ「ふんふん、いいよ、古文の基本はあっている」
ワトソン「えーと「せ」はサ行変格活用だね。「心地す」はよく見るけど、間に「なむ」が入ることもあるんだろう。それにこれがサ変の未然形なら後の説明も矛盾がないし。あれ?」
ホームズ「なんだい」
ワトソン「あとに矛盾がないなら、正しくないものがないよ」
ホームズ「品詞ではね」
ワトソン「ああ、そうか、助動詞の意味か。③の受身や④の推量のように。それは文脈じゃないとわからないね」
ホームズ「たしかに助動詞の意味は文脈で最終的に決めなくてはいけない。しかし、ここで出題者の心理から③か④を絞ってみよう」
ワトソン「心理?」
ホームズ「なぜ「。」を隠したか」
ワトソン「係り結びと気づくための最短距離を隠すためかな。難度を上げるために」
ホームズ「そう。なら、「心地」を隠したのはなぜかな」
ワトソン「え? 名詞からはじまる選択肢を作りたくなかったから?」
ホームズ「それも否定しないけどね。助動詞の「る・らる」の識別はわかるかい」
ワトソン「一応。受身なら「~に」あたる表現、英語のBYみたいなものがあるか、補えるんだな。主語に敬意を払うべきときは尊敬。可能なら平安までは下に打消あることが多くて、少なくとも訳は「できる」となるやつ。自発は心中表現につく。そんな感じかな」
ホームズ「すばらしい。気づいたかな」
ワトソン「えーと、あ。「心地」か。「心地」つまり心中表現か。じゃあ答えは③だね。心中表現だから受身ではなく自発なんだ」
ホームズ「そう、おそらく③だ。むろん文脈で確認はとらないといけないけどね。出題者は難度をあげるために敢えて「心地」を隠したんだろうね」
ワトソン「傍線部をひいた出題者の心理を読むか。あまり意識していなかったよ」
ホームズ「全ての教科に言えることなんだけど、何を聞きたくてその問題を作ったのかを考えるといい。その上で、一見、解くのに必要がないと思える周辺情報も探すんだ。現場だけでなく周囲から証拠が見つかる事件なんかいくらでもあげられるだろ。君も記録してきたはずだ」
ワトソン「そして、周辺情報に気づくのに必要なのが基本知識なんだね。助動詞の「る・らる」の識別とか、その類の基本知識」
ホームズ「そういうことだよ、ワトソン。地道な捜査同様に地道な学習こそが成果を保証するんだ。その上で推理などが有効になるわけさ」


古文文法問題を解く(ホームズシリーズ4)

2008-11-12 09:37:16 | 国語
前回の続きです


ワトソン「本当かい?」
ホームズ「文法の基本さえ覚えていれば簡単な設問さ。強いて言えば出題者の心理も押さえておかないといけないかな」
ワトソン「出題者の心理? そんなことまで知らないといけないのかい」
ホームズ「そんなに難しく考えなくてもいいよ。当たり前のことをやるだけのことだ」
ワトソン「当たり前のこと?」
ホームズ「どうして出題者はここにこのような線を引いたかを考えるということだよ。犯人を探すときに犯罪による利益を考えることがあるだろ。それと同じだよ。どんな利益があっての線なのか。」
ワトソン「なるほどね。だったらここはどう考えるべきなんだい」
ホームズ「まず見たときの印象なんだが、不自然な線だ」
ワトソン「不自然・・・。」
ホームズ「選択肢を見るとますますその不自然ははっきりとするよ。①の選択肢を見てごらん。係助詞とあるだろ。付属語から始まる時点で不自然だ」
ワトソン「じゃあ、①かい。①が犯人かい」
ホームズ「君は結論が早急にすぎるよ。①という不自然な選択肢でなぜはじめたかだよ」
ワトソン「んー」
ホームズ「当たり前のことに帰ろう。本文を見るんだ」
ワトソン「文脈に頼るってことかい」
ホームズ「文脈を否定する気はないよ。でもね、形も気にしようじゃないか」
ワトソン「形?」
ホームズ「実際のところ、設問部だけでは解けない。本文も形を作る上では大事なんだよ。それと基本的な知識もね」

ホームズはそう言いながら、紙に走り書きをした。


心地なむせらるべき



そう、ホームズは本文の傍線部前後を単語や句読点を補ったのだ。




古文文法問題を解く(ホームズシリーズ3)

2008-11-11 09:10:15 | 国語
ホームズ「どうしたワトソン? 苦虫をつぶしたような顔だね」」
ワトソン「どうせ君のことだ見当がついているんじゃないのかい」
ホームズ「僕は魔法使いじゃないんだ。情報が少しは欲しいな。その紙を少し見せてくれよ。ほぉ、日本の古文の問題じゃないか。君もかなりの教養人なんだね」
ワトソン「それだけかい。わかるのは」
ホームズ「そうだなあ。後は文法問題で悩んでいることくらいしかわからんね」
ワトソン「え? どうしてわかったんだい?」
ホームズ「なに。簡単なことだ。君は本文を見ないで設問のページだけを見ていた。だから、知識問題の可能性が高い。しかも、しばらくじっとね。単語なら瞬間的に答えを出す確率が高いからね。で、どんな問題だい?」
ワトソン「これだよ」

傍線部「なむせらるべき」についての文法的説明として正しくないものを次の①~⑤のうちから一つ選べ。

①「なむ」は強調の係助詞である。
②「せ」はサ行変格活用動詞っである。
③「らる」は受身の助動詞である。
④「べき」は推量の助動詞である。
⑤「べき」は「なむ」の結びで連体形となっている。 



ホームズ「ふん。なるほどね。出題者の気持ちがよくわかる問題だね」
ワトソン「君ならこれをどう解くんだい」
ホームズ「ちょっと借りるよ」

ホームズは本文をちらっと見るや否や(as soon as=on~ing)こう言った。

ホームズ「おそらくだけど、答えの目星はついたよ」



最古かも。

2008-10-08 16:54:13 | 国語
ツンデレの日本最古かもしれないものを発見。ついでに、それっぽく訳してみた。
まあ、ツンデレがわからない、イメージがしっかりとしない方もいるかもしれないんで、参考までにウィキペディアだと、こんな感じで説明している。


ツンデレは、「ツンツンデレデレ」の略でありキャラクターの形容語のひとつ。 意味は、「普段はツンと澄ました態度を取るが、ある条件下では特定の人物に対しデレデレといちゃつく」、もしくは「好意を持った人物に対し、デレッとした態度を取らないように自らを律し、ツンとした態度で天邪鬼に接する」ような人物、またその性格・様子をさす


どちらかと言えば後者。奈良時代にもツンデレがいたって事実って、意外と楽しくないか。
1300年前の女の子の心情ってやつを、タイムマシンをこさえなくても、少しはわかる。古典とはそういう力を持っているものなんだよね。


来むと言ふも
   来ぬ時あるを
    来じと言ふを
     来むとは待たじ
      来じと言ふものを
 
       大伴坂上郎女
         万葉集より
 
【現代語訳】
 来るつもりだよとあなたが言っても来ない時があるんだから、来ないつもりだよと言っているときは来るかもしれないなんて待ってあげるつもりなんかないんだからね。来ないつもりだよって、あなたが言っているんだもん。 

【ポイント】
1 歌中のカ変動詞はすべて未然形なので「こ」と読む。接続している助動詞を確認のこと。 
2 「ものを」は文中なら接続助詞で逆接。
  「ものを」は文末なら詠嘆の終助詞。
  今回はツンデレっぽくするために詠嘆にしました。

【解説】
意志の助動詞なのか推量の助動詞なのかの判別を楽しめる人は渋い。主語を省略の補わないと無理だからね。
古文の主語の省略を嫌がる人がけっこういるんだが、主語を省略することで、出だしがカ変の未然形になって、各句の先頭が「こ」になり、響きが面白いことになる。
和歌はもともと音読していたものだと考えると、響きの問題がわかってくるはず。

意味も音も面白い歌だってことだ。




結論:なかなかチャーミングな和歌だね♪



現代文の基礎(ホームズシリーズ 2)

2008-10-06 12:21:16 | 国語
ホームズ「さて、この文章の対比をつかんでみようじゃないか。このようになるよね」
【対比】
 「遠」         「近」
            『徒然草』の名
            後人の思いついたもの
            思いつき
 兼好の苦い心
            洒落た名前
            一片の洒落
            一枚の木の葉
   月

ホームズ「ついでに変形で重要な部分もみておこうかな」
【変形】
  一片の洒落  = 一枚の木の葉
  兼好の苦い心 =   月
ホームズ「このイコールの関係をなんと言うか、わかるかい?」
ワトソン「比喩だね」
ホームズ「そう、比喩だね。では、比喩と例との区別はつくかい?」
ワトソン「えーと、比喩はたとえで、例は例えばだね」
ホームズ「自分でわかって言っているかい?」
ワトソン「んー、比喩は幻想的だよ。<彼女の瞳は海のようだった>というのは比喩だしね。逆に言えば、例は現実的ということだ」
ホームズ「ほぉ、いい感じだね。でも、<同じコインの裏表のようなものだ>というのは比喩だけど、幻想的かい?」
ワトソン「う。意外と難しいんだね」
ホームズ「そう、すべての説明されていないものは難しいのだよ。未解決の事件同様にね」
ワトソン「あ。<同様>というのがポイントなのかな」
ホームズ「君も大分するどくなったね。その通りだ。ちょっと、まとめておこうかな」

【比喩】現実には等しくないが、共通点があるので使用される感覚的表現
【例】具体的に等しい現実の事物や現象で論拠となるもの

ワトソン「つまり、筆者にとって<一片の洒落>に過ぎない<『徒然草』の名>は<木の葉>同様の<つまらないもの=ゴミ同然のもの>ということなんだね」
ホームズ「うん、そうだよ。筆者には<兼好の苦い心>は<月>のように遠くにある美しいもの、つまり、『徒然草』の本質なんだね。こういう読み方ができると、方向を押さえた読みができるようになるよ。これで文章の構造はわかったと思うよ」
ワトソン「なるほど、僕にも答えはわかったよ」
ホームズ「ということは、答えはどうなるかな、ワトソン?」
ワトソン「<兼好の苦い心>だね。」
ホームズ「そう。<木の葉>によって<月>が見えないから、<月>が存在しないと考えるのが間違っているのと同様に、<徒然草という洒落た名前>によって<兼好の苦い心>がないと考えるのは間違っていると小林秀雄は言っているわけだね」
ワトソン「文章全体の構造を理解しないといけないんだね」
ホームズ「うん、文章の一部だけで解ける問題は確かにあるんだけど、全体の構造を理解しているかを問う問題のほうが難しいだろうね」
ワトソン「それにはどうすべきなんだい」
ホームズ「そうだなぁ。まず、本文に線を引きながら読むことだね。それとキーワードや接続語も線で囲むべきだね。そして文章の展開の方向を意識することかな。」
ワトソン「なるほどね。」
ホームズ「まずは、事件の状況を明らかにするように情報を収集し、整理すること。解決のための基本だね。現代文も事件もそのあたりは同じだよ」

現代文の基礎(ホームズシリーズ 1)

2008-10-02 16:36:18 | 国語
非常に昔、自分がHPを持っていた頃に書いたものです。




次の文章を読んで後の問いに答えなさい。

 「つれづれなるままに、日暮らし硯にむかひて~~」
 『徒然草』の名は、この有名な書き出しから、後人の思いついたものとするのが通説だが、どうも思いつきはうますぎたようである。兼好の苦い心が洒落た名前の後ろに隠れた。一片の洒落も随分いろいろなものを隠す。一枚の木の葉も月を隠すに足るようなものか。いまさら名前のこと名前のことなぞ言っても始まらぬが『徒然草』という文章を遠近法を誤らずに眺めるのは思いの外難事であるゆえんに留意するのはよいことだと思う。(小林秀雄)

問 文章中に「遠近法を誤らずに眺める」とあるが、遠近法を誤らずに眺めるとどういうことがわかるのか。文中の語句を抜き出しなさい





ワトソン「ふぅむ」
ホームズ「どうしたい?ワトソン。病院経営で悩んでいるのかい?」
ワトソン「いや、違うよ。ははは」
ホームズ「何故、笑うんだい」
ワトソン「いや、君でも推理が外れることがあるんだぁなと思っていたのさ」
ホームズ「なるほどね。だって、他に心当たりがないんだから、仕方がないだろう。まさか、小林秀雄の問題に悩んでいるわけではないんだろ?」
ワトソン「え?だって、あれは難しい文章だと思うけどなぁ」
ホームズ「いや、実に基本に忠実な文章だよ。しかも、解答は抜き出しだから、易しい方にはいると思うよ」
ワトソン「基本?」
ホームズ「そう、読解の基本だよ。前に言わなかったかな。

 読解の三本柱
  ①変形(例や言い換えなどの【同類】を追うこと)
  ②対比(比較されている内容つまり【反対】を追うこと)
  ③論理(どのように文章を進行させているか、つまり【方向】を追うこと)

まずは、このあたりを重視して読んでいくべきだろうね。」
ワトソン「なるほど」
ホームズ「現代文という科目が難しいのは【同類】を追いながら【反対】をつかみつつ、【方向】を読み取るという矛盾して異なる動作を行っていくことだろうね」
ワトソン「動作? 読解がかい?」
ホームズ「うん。脳を使った動作だと思うよ。泳げない人間と同じように読解できない人間がいるだけなのさ。裏を言えば、きちんと学習していけば、不得意ではなくいなるはずだよ」
ワトソン「なるほどね。動作だけにトレーニングが大事なんだね」
ホームズ「そう、特に基本に忠実なトレーニングが大事だ。基本を崩すのは得意科目になってからでいいはずだ」
ワトソン「では、今回の文章ではどのあたりに注目すればいい?」
ホームズ「そうだね。うん、今回は練習だから、ヒントを与えておこうか。今回の問いはよく読んだかい?」
ワトソン「うん。『遠近法を誤らずに眺める』の部分が設問になっていたね」
ホームズ「と、いうことは?」
ワトソン「ということは…。あ、【遠近法】だね」
ホームズ「そうだ。【遠】と【近】で対比になっているだろう。だから、対比を中心に本文を整理すると答えが見えてくると思うよ。これを課題にしておくよ。ぼくは、これからオペラを見に行きたいんだ。久々にカルメンを見られるよ。あの闘牛士の歌を聞くと魂がゆさぶられるね」
ワトソン「でも、感動のあまり夜にバイオリンを弾くのは勘弁しておくれよ」