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元予備校講師、現高校教諭の宮本晃吉とその関係者らが作るブログです。

現代文の基礎(ホームズシリーズ 1)

2008-10-02 16:36:18 | 国語
非常に昔、自分がHPを持っていた頃に書いたものです。




次の文章を読んで後の問いに答えなさい。

 「つれづれなるままに、日暮らし硯にむかひて~~」
 『徒然草』の名は、この有名な書き出しから、後人の思いついたものとするのが通説だが、どうも思いつきはうますぎたようである。兼好の苦い心が洒落た名前の後ろに隠れた。一片の洒落も随分いろいろなものを隠す。一枚の木の葉も月を隠すに足るようなものか。いまさら名前のこと名前のことなぞ言っても始まらぬが『徒然草』という文章を遠近法を誤らずに眺めるのは思いの外難事であるゆえんに留意するのはよいことだと思う。(小林秀雄)

問 文章中に「遠近法を誤らずに眺める」とあるが、遠近法を誤らずに眺めるとどういうことがわかるのか。文中の語句を抜き出しなさい





ワトソン「ふぅむ」
ホームズ「どうしたい?ワトソン。病院経営で悩んでいるのかい?」
ワトソン「いや、違うよ。ははは」
ホームズ「何故、笑うんだい」
ワトソン「いや、君でも推理が外れることがあるんだぁなと思っていたのさ」
ホームズ「なるほどね。だって、他に心当たりがないんだから、仕方がないだろう。まさか、小林秀雄の問題に悩んでいるわけではないんだろ?」
ワトソン「え?だって、あれは難しい文章だと思うけどなぁ」
ホームズ「いや、実に基本に忠実な文章だよ。しかも、解答は抜き出しだから、易しい方にはいると思うよ」
ワトソン「基本?」
ホームズ「そう、読解の基本だよ。前に言わなかったかな。

 読解の三本柱
  ①変形(例や言い換えなどの【同類】を追うこと)
  ②対比(比較されている内容つまり【反対】を追うこと)
  ③論理(どのように文章を進行させているか、つまり【方向】を追うこと)

まずは、このあたりを重視して読んでいくべきだろうね。」
ワトソン「なるほど」
ホームズ「現代文という科目が難しいのは【同類】を追いながら【反対】をつかみつつ、【方向】を読み取るという矛盾して異なる動作を行っていくことだろうね」
ワトソン「動作? 読解がかい?」
ホームズ「うん。脳を使った動作だと思うよ。泳げない人間と同じように読解できない人間がいるだけなのさ。裏を言えば、きちんと学習していけば、不得意ではなくいなるはずだよ」
ワトソン「なるほどね。動作だけにトレーニングが大事なんだね」
ホームズ「そう、特に基本に忠実なトレーニングが大事だ。基本を崩すのは得意科目になってからでいいはずだ」
ワトソン「では、今回の文章ではどのあたりに注目すればいい?」
ホームズ「そうだね。うん、今回は練習だから、ヒントを与えておこうか。今回の問いはよく読んだかい?」
ワトソン「うん。『遠近法を誤らずに眺める』の部分が設問になっていたね」
ホームズ「と、いうことは?」
ワトソン「ということは…。あ、【遠近法】だね」
ホームズ「そうだ。【遠】と【近】で対比になっているだろう。だから、対比を中心に本文を整理すると答えが見えてくると思うよ。これを課題にしておくよ。ぼくは、これからオペラを見に行きたいんだ。久々にカルメンを見られるよ。あの闘牛士の歌を聞くと魂がゆさぶられるね」
ワトソン「でも、感動のあまり夜にバイオリンを弾くのは勘弁しておくれよ」