「あれは……やっぱり無理矢理にでもやろうとするよね」
一人の一般市民からエネルギーの高まりを感じる。そしてそれはこの世界の一部の人達が魔力と呼ぶ力。実際魔力とか言ってるが、それは人が当然に持つエネルギーをどう使うかってことで……それを肉体内で使えば大体肉体強化になって、発露する力を魔力と呼んでる感じだ。
大体普通の人達は魔法なんて使えないから、なんとか肉体に影響を及ぼせる肉体強化だけにとどまってる感じ。でも……今外から来た人達の中にいる人達の中でその力を高めてる奴は明らかにそのエネルギーを発露してる。
その回路が私には見える。術式とか魔力回路とか言ってもいいそれは、知識無くては出来ないことだ。そしてそれを持ってるのは……どうあってもただの一般人……なんて事はありえない。
つまりアレは……
「尻尾を見せたね教会のネズミさん」
まあだからって私はその発動を止めはしない。だってここで止めたら証拠が撮れないからね。私はきちんとドローンでその様子を抑えてるのだ。言い逃れできないようね。
実際今、勇者から逃げてる奴も時間の問題だってのはわかってるだろう。なにせアズバインバカラにはたくさんのドローンが展開してる。どこへ逃げたって逃げ場なんてない。それこそ空間転移? くらいしないとね。でもそんなのはこの世界では無理だろう。だから足しか無いわけだが、そもそものスペックが人と勇者では違いすぎる。逃げるなんて不可能だ。
だからどうにか通信でもして、自体の混迷を深めようとしてるんだと思う。アズバインバカラの方も、そして外から来たほうもどっちもその興奮は高まってる。だから一人がちょっと変な動きをしたって、そこに違和感を覚えるような奴はいない。
魔力を練ってる奴はその手に力を集めてる。そして拳を突き上げてる周囲に合わせて彼だけは前に拳を突き出して何かを押し出した。それは拳に隠してた尖った石? みたいなものだ。けど魔力で強化されて、更に勢いまでつけて放たれたそれは人の波をすり抜けて見えない速度でアズバインバカラの人の方へと向かう。
きっとアレが当たったら、頭とか爆散するんじゃないだろうか? そして脳髄と血が周囲に飛び散って……数瞬の沈黙の後、混乱がきっと広がる。眼の前で同じ街の住民が殺されたとあったら、もう止まるなんて出来ないだろう。私を挟んでたとしても、行動に移る可能性はある。
そうなるともう彼らがわかり合うとこはできなくなる。なので……
「させないよ」
私はドローンを差し込んで一機のドローンを犠牲にその凶刃を防ぐ。それでボフンと煙とともに地面に倒れるドローンに前にいる人達は「何が起こったんだ?」と困惑する。
「ちっ」
そんな風に舌打ちした奴は混乱の最中、移動しようとしてる。もう一発……とならないのは優秀だけど、もう遅い。私はドローンでそいつの頭をつかんで持ち上げた。
「なっ!? やめ! やめろおおおおお!!」
ジタバタと暴れてるが、そう言われて離すわけ無い。頭をつかんでそのまま2メートルくらいは持ち上げた。よく見えるようにね。そんなコトをすれば「なんだなんだ?」注目されるのは当然。そこでタイミングよく、ドローン達が映像を届けてくれる。
勇者からのライブ映像だ。さてさて、種明かしをしようじゃないか。
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