打ち合わせに出掛けた。
時にはそんな事もするのよ、私も
私は自宅以外で人と会うのに、この小さなアンティーク街を指定する事が多い。
平日の昼間はとても静かな時間が流れていて、
街のあちこちにある個性的なカフェには人も少なく、
長居をする事に肩身の狭さを感じなくて済むし、
座り心地の良い椅子や、薪の香りや暖かさを楽しめる暖炉も、
いくつもの物を並べる必要のある打ち合わせに適した大きなテーブルもある。
ティータイム用のテーブルウェアを中心に、
コーヒー、紅茶、自家製チョコレートとかも売っているお店。
古い銀行のビルの中にあるスタバ。もちろん銀行の業務も続けられているよ。
この辺りは歴史的建築が組織的に守られている区画で、近隣の住宅街をドライブすると、
大好きなコロニアル建築を当時のままの姿で見る事が出来るのも魅力
打ち合わせの後、こんな車がよく似合う街並みを歩きながら考える。
暮らしは新しい物だけでも古い物だけでも成立しない。
長い歴史の中で静かに生き続けて来た物達と、
今産まれたばかりで、これか時間をかけて歴史になって行く物達が、
美しく共存しているのが、私にとってのバランスのとれた暮らしだ。
家の中を見回しても、私の好みは同じように反映されている。
アンティークと新しい家具はそれぞれに居場所を見つけているし、
各国からの美術品や工芸品も古いもの新しいものが肩を並べている。
食卓にも土物、磁器、漆器、ガラス、木、様々な素材の器が並ぶ。
私は陶芸家だけれど、食卓が土物だけで構わないと思った事は無いし、
自分の手による物と、他の作家の方の物、作り手の判らぬ古い物を必要に応じて使い分ける。
ひとつの物を自分なりの情熱を胸に作っていると、
いつの間にか偏った考えを持ってしまいがちで、私はそれがとても怖い。
作品に包容力が無くなって、何時か必ず限界が来るからだ。
そんな事にならない為にも時々この街を訪ねて、
物作りやデザインには様々なバラエティーが有る事、
それらがバランス良く共存している事が、
居心地の良い空間だという事を自分に言い聞かせなくてはならない。
こんなポップでユーモアいっぱいの冷蔵庫や、
こんなカラフルでラブリーなドレスに、
胸をときめかせたりイマジネーションを働かせる心を忘れぬように。
こういう冷蔵庫の置かれたキッチンで、鮮やかな色のドレスを着た女性。
彼女が手に持った時絵になるような焼き物だってあるんだよ。うんうん。
そういう物が作れなければ、私がこの国で焼き物をやってる意味が無いよね。
さ、そろそろお家に帰ろう