松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆参議院選挙で思うこと(三浦半島)

2013-07-23 | 1.研究活動
 今回の選挙で、最大のポイントは、民主党が、私たちの国が、立ち直るチャンスをみすみす潰してしまったことだろう。

 一般に選挙とは、対立軸を示し、相手の弱点をつき、自陣を固め、そのエネルギーを外に放出することで勝利することとされる。今回の民主党も、アベノミクスの弱点(不安材料)を強調するなど、従来の選挙の手法によったが、それが大敗を招く要因になった。突くところが違ったのだと思う。

 民主党の敗因は、民主党の失政のせいにしがちであるが、半分は、国民のせいである。民主党がマニフェストとして掲げた政策は、無償や補償のオンパレードで、財政赤字が続き、借金で苦しみ続ける日本に、そんな金があるわけがないのは、誰が見ても明らかであったのに、多くの国民が、民主党に投票したのである。そもそもここが間違いのスタートだったことを私たちは思い出さないといけない。

 前の小泉郵政選挙でもそうであったが、近年、国民自身がしっかり考えず、マスコミやムードに煽られる選挙になった。こうした選挙のやり方を見ていると、私は、ナチスを思い出す。アウシュビッツは、ナチスのせいにされるが、ドイツ国民の大多数が支持したからこそできたのである。しかし、そのつけは、結局、私たち国民に戻ってくる。
 映画『ヒットラーの13日』では、ソ連軍が間近に迫るベルリンの地下指令室で、このままではベルリン市民の被害が甚大になるため、降伏を勧める幕僚に対して、ヒトラーは、「知ったことか。私は彼らに頼まれてこの戦争をしたのだ。自業自得だ」と言い放つが、民主党も、それを言う資格が半分はあるのだろう。

 それゆえ、今回、民主党がなすべきは、無理に対立軸をつくり、相手の弱点を突くような従来型の選挙をすることではなく、なぜ自分たちの政権が失敗したのか、どこが間違いだったのかを国民的な議論によって検証をはじめることだったと思う。それによって、政策内容だけでなく、決定の仕組み、さらには国民の意識や行動も検証の俎上にあがってくる。私たちが二度と同じ轍を踏まないためのヒントを私たち国民が見つけることができたからである。今度の選挙には間に合わないかもしれないが、それによって、私たちは、未来への展望を持つことができる。今、必要なのは、私たちの政治が明日はよくなるという展望であるが、それを今、作り直す時だったと思う。
 こうした国民を期待を見誤り、結局、私たちが立ち直るチャンスをみすみす潰してしまったことになったというのが、私の感想である。

 従来型の選挙を続けていくと、私たちの民主主義はどんどん劣化してしまう。
 相手の弱点を突くような選挙は、舌鋒は鋭いが、全体でみると、角を矯めて牛を殺す意見にすぎなかったり、また、名前を連呼し、握手をするだけの選挙は、国民を考えない主権者にするだけである。もはや為政者だけで政治ができる時代は終わったのであるから、国民自身も当事者となって、自ら考え、判断、決定していく舞台を政治は用意する必要がある。政治家の役割は、国民が判断する材料をきちんと提供し、そのうえで、国民相互で腰を落ち着けた議論できるようにする教育的配慮が特に重視されるべきだろう。

 政策とは、こうあったらよいという単なる願望ではなく、この願望をどうやって実現するのか、そのプロセスや財源を含めて示すものであるが、これをきちんと議論していけば、できること・できないことがはっきりする。やりたくてもできないことがあることが分かり、私たち市民も我慢すべきことを理解できる。そして、実際、私たちは、こうしたことを理解できる高い市民性を持っている。

 おそらく、こんなことは、私が言うまでもなく、政治の世界の人たちは、よく分かっているのだろう。しかし、実際の選挙になると、私が言うようなやり方は、おそらく効率が悪いのだろう。だから、あえて対立軸をつくり、名前を連呼し、握手をする選挙に戻ってしまうのだろう。国民を愚民化する選挙のほうが、きっと受かりやすいのだろう。その結果、私たちの民主主義は、どんどん劣化してしまう。
 次の参議院選挙まで3年間あるという。日本全体で、いまからでも、こうした取り組みを始めたらいいと思う。
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2 コメント

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Re:同感です。 (マロン教授)
2013-08-04 06:35:24
こんにちは。お久しぶりです。
コメントありがとうございます。私の率直な感想です。
ところで、私の準ゼミ生に、伊豆の国市から通学している学生がいます。三島に出て、JR、小田原から小田急で相模大野です。しかも、休まずきます。すごい体力、気力ですが、聞くと、市の代表で、駅伝に出ていたそうです。
伊豆の国市の話しになると、ゼミで行ったことがある、知ってるひともいると話していたところです。
また機会が、あったら、よろしくお願いします。o(^▽^)o

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同感です。 (伊豆の国市 小川)
2013-08-01 21:25:02
松下先生 ご無沙汰しています。静岡県伊豆の国市の小川です。

選挙についての考え方、全く同感です。どのマスコミの論評よりも腑に落ちました(^^)
松下先生 ご無沙汰しています。静岡県伊豆の国市の小川です。 選挙についての考え方、全く同感です。どのマスコミの論評よりも腑に落ちました(^^)

「勝てば官軍」的な覇道政治をいつまで続けていても世の中はよくならないですよね。王道政治を実現してくれる人が出てきて、投票する我々が易き方に流されず、見極める目を持つことが必要なんでしょうね。
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