松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆アウトカム指標の難しさ(白岡市)

2017-11-08 | 1.研究活動

 埼玉県白岡市の行政評価構築委員会の3回目。行政評価の考え方を議論した。

 行政評価の基準には、インプット、アウトプット、アウトカムの3つがある。観光イベントのPR事業で考えれば、いくらPR予算をかけたかがインプットである。かつては、どれだけ予算を取ってきて使ったかが、仕事ができるという評価基準だった。そのなかでも一番、仕事ができる人は、たくさんの予算を獲得して、実際の仕事は、自分たちのセクションではやらずに、ほかのだれかに押し付けるのがうまい人が、一番、仕事ができる人とされた。

 アウトプットは、どれだけ、マスコミに取り上げられたか、それによってどれだけお客さんが来たかである。そして、アウトカムは、このイベントPRによって誘発されて、イベントに来た人がどれだけいるかである。PRの効果はどうであったかであるが、これだけ見ても、アウトカムを数値化するのは簡単ではない。

 委員会では、行政評価を定量で評価するか定性で評価するかの議論となった。委員さんから、次のような質問があった。アウトカムを定量評価するとして、最もわかりやすい事例を教えてほしい。もしそれが、相当頭をひねらなければいけないものだったら、ほかは推して知るべしなので、無理に定量評価せずに、定性評価でいいのではないかという質問である。

 事務局からの回答は、がん検診で考えてみたらどうだろうかというものである。この検診によって、どのくらい、がんの早期発見が行われ、死亡率が減ったかgアウトカムで、これが最もわかりやすいのではないか。

 そこで、議論になったのは、早期発見や死亡率の減少は、がん検診だけが要因とは言えず(奥さんの健康管理など)、さまざまな要因も含まれているから、純粋に、がん検診そのもののアウトカム効果のみを出そうとすると、ほかの要素を抽出し、その寄与分を除いていかなければいけないことになるが、その作業には、膨大・複雑な時間と労力を使うことになり、それでは効率的・効果的行政の実現という目的に反し、本末転倒になるのではないか。

 一番わかりやすいとされるがん検診でさえ、こんなに難しいのならば、ほかは、推して知るべしで、定量評価できるものは、定量評価してもよいくらいに抑えて、基本は、定性評価でもよいではないかという話になった。

 こういう議論を市民の委員さんたちがやっている委員会は、とても居心地がよく、また座長の私も、運営のし甲斐があるというものである。充実した会議は時間がかからないもので、1時間強と短時間のぎゅっとしまった会議になった。

 この日は、授業を終えて、白岡市に行った。相模大野からでも、1時間半くらいかかる。帰りは、湘南新宿ラインや東京上野ラインがあって、横浜まで直行とはいっても、家までは、2時間近くかかる。でも、行ってよかったという会議だった。

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