松下啓一 自治・政策・まちづくり

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◇奥湯河原へ行く

2017-12-12 | 5.同行二人

 忙しいが、連れ合いには、関係ない。約束なので、奥湯河原へ行った。

 湯河原でも、奥湯河原は、温泉街とは、様子が違う。ひと言でいうと、高級旅館も多い。中庸を行くわが家の場合、温泉街に泊まることが多いが、退官前の湯河原温泉という訳の分からない理由で、今回は、奥湯河原にした。

 奥湯河原と言えば、わが家で定番な話は、以前、湯河原で乗ったタクシー運転手さんの話である。その運転手さんは、奥湯河原の海石榴(つばき)に、泊まる客を乗せた。その客の話では、何でも、連れの女にすっほかされてしまったということらしい。クラブのママか何かを誘って、きばって、高い旅館を頼んだが、肝心のどこで逃げられてしまったようだ。

 そこで、もったいないので、そのお客は、タクシーの運転手さんを誘って、一緒に食事をしたらしい。泳いでいるヤマメをとって、すぐに調理し、そのほか高級食材をふんだんに使った料理でそれはすごかったと、旅館に向かう車の中で、大いに盛り上がった。

 このエピソードに対する連れ合いの評価は、厳しいもので、女に逃げられたバカな男というものである。だが、私は、ちょっと違う。気に入っているのは、運転手さんを誘って、女に逃げられた話を魚に食事をするそのおじさんに、ある種の親近感があるからである。もし私も、その場面にあったら、運転手さんに、一緒に食べていかないと、声をかけるだろう。第一、料理が無駄である。

 もちろん、こんな感想を連れ合いには言わない。話が、変な方向にそれてしまうのは、明らかであるからである。ただ、奥湯河原に行くたびに、この10年ほど前のエピソードを思い出し、多いに盛り上がる。

 今年、最後の紅葉見物に、海石榴の裏の散策路を歩き、奥湯河原の一番奥の旅館うおしずのところまで、歩いてみた。ほとんどモミジは終わっていたが、あたたかな冬の一日、ゆっくりと歩くことができた。

 途中、これも値段がはる旅館・結唯の隣に、以前は、駐車場であったところに、新しい旅館ができていた。造りのよい、小さな宿が3つ。よく見ると、車が一台止まれるだけのスペースなので、1棟、そのまま貸しの旅館のようだ。まだ建設中ではあるが、おそらく年末には開業するのだろう。

 その門前を従業員の人らしき人たちが枯葉をはいていたので、しばし立ち話となった。

 聞いてみると、ここは一人一泊10万円とのことである。思わず、「ひえぇ、泊まる人がいるのですか」と聞くと、たくさんいるとのこと。思わず、それはお金持ちか、訳ありの人が泊まるのですね、と言ってしまった。奥湯河原なので、くだんのタクシーのエピソードを思い出したからである。

 その店の人からは、今度、ぜひ泊まりに来てくださいと勧められたが、私たち夫婦は、どう見てもお金持ちには見えないし、まして訳ありには、見えないので、とりあえず、言ったのだろう。

 

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