松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆法制執務の学び方 「又は」・「若しくは」

2012-06-17 | 1.研究活動
 政策法務研修では、法制執務(言葉の使い方)にもふれる。
 内閣法制局140年の歴史のうえに、条文の表現・言葉の使い方も決まってくる。実際、この部分も、テキストでたくさんのページが割かれている。
 ただ、基本的には日本語であるから、大半が理解できると思う。第一、理解できないような言葉づかいがあれば、それは、私たちのほうが悪いのではなく、そういう言葉を使う方、役所側が悪いのだろう。使い手側に合わせるように、用語を直していくべきである。
 それでも、例外的に理解が難しい言葉が残る。これは窮余の選択で、いい対案がないので、当面使っていくことになる。そういった言葉のひとつが、「又は」、「若しくは」である。両方ともorであるが、どちらをどのように使うか。
 さて、政策法務で、法制執務にふれるのは、地方分権の時代、唯々諾々として、これまでのやり方に従っていてよいのかという問題意識からである。
 地方分権になって、役所は市民の力を結集して、地域の課題に対応していかなければいけなくなった。地域の住民が当事者意識を持ち、「よしやるぞ」と思うように仕事のやり方を変えていかなければいけない時に、法制執務だって、従来の伝統にあぐらをかいているわけにはいかないだろう。住民が当事者意識を持つように(具体的には、一般の住民でもよく分かるように)、法務の仕方を変えていかなければいけない。
 そのためには、表を多用した条例や箇条書きの条例なども、考えてよいと思う。私が特に力を入れているのは、条例の7割を占めている一部改正条例である。改め文は、スッキリして玄人受けするが、これを見て住民が「よしわかった。やってやろう」という気にはならないからである。相変わらず住民を自治の現場から遠いところに置いているが、分権以前ならばともかく、分権時代の今日、あまりに鈍感すぎるだろう。
 紙と墨で条例を書いていた時代ならばいざ知らず、コンピュータの時代なので、複写もゴシックも簡単にできる。スペースだってとらない。工夫はいくらでもできるだろう。
 当面の対応策として、いくつかの自治体では、新旧対照表方式を提案しているが、よくできた方式かというと、まだまだ道半ばである。道半ばではあるが、前に進もうというところが大事で、そこから新しい工夫が出てくる。全国で40ほどの自治体が採用しているが、さらなる改善がなされれば、一挙に増加するだろう。
 こうしたいくつかの試みを行うなかで、最後に残ってしまうのが、いくつかの条文表現である。
 さて、標記の「又は」「若しくは」である。研修では、こんな質問である。あなたが課長に聞くときに、「課長、居酒屋(又は、若しくは)スナック、どちらにしましょうか?」どちらが正解か。
 正解は、居酒屋である。最初からスナックはきついからである。
 私の問題に対して、和歌山市では、受講生のほうからこんな応用問題が出された。「居酒屋又はスナック若しくはクラブ」。彼らの答えは、前の二つは、市役所御用達、クラブのほうは大学教授御用達というものである。
 ここから、自治体職員と大学教授の違いを説明し、そこからサガジョのゼミ様子に話が展開していくことになる。私の政策法務研修の雰囲気が分かるだろう。
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