松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆合理性を考える

2022-10-10 | 自治会・町内会、オルソン問題を考える
 厄介なことは人任せにして、自分は受益だけをするのが合理的であるとされる。しかし、自治会、町内会を始め、まちのために活動している人がたくさんいる。なぜ、そうした非合理的な活動をするのか。これは逆にいえば、合理的とは何かという問題である。オルソン問題を考えていくにあたって、この合理性が大きな壁で、学問的には深くて、四苦八苦している。

 辞書を見ると、合理的とは、「道理に適っていること」や「行為が無駄なく能率的に行われること」とされている。オルソン問題では、「自分の得となる行為」が、合理的行為という意味くらいに使われている。

 ウェーバーによれば、社会的行為は、目的合理的行為、価値合理的行為、感情的行為、伝統的行為の4類型に分類される。

 目的合理的行為は、ある目的を達成するために、最も理にかなった行為である。目的は、お金に限らず、名誉、地位、権力などがある。 最短距離や無駄のないという要素がポイントになるのだろう。
 価値合理的行為は、ある特定の価値観に沿った行為である。最短距離や無駄のないという要素は二の次で、価値に理を見つけるものである。
 感情的行為は、そのときどきの感情によって動かされている行為である。計画性とか無駄がないという要素は忘れられる。その時の感覚、感情に理を見つけるものである。
 伝統的行為は、昔から続いてきた習慣的に反応する行為である。計画性とは別に無意識に、自然に行動することに理を見つける行為である。

 ここから学ぶのは、計画性、最短距離、打算、無駄のない行動とは、別の観点にも一定の「理」を見出して、人は行為するということなのだろう。

 もう一つ注目すべきは、障害者の権利に関する条約にも「合理的配慮」が使われている。同条約「第二条 定義」において、「合理的配慮」とは、「障害者が他の者と平等にすべての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。」と定義されている。合理的配慮は、国の定める「障害者差別解消法」や「障害者雇用促進法」などの法律に登場するキーワードとなっている。

 合理的配慮の原文は、reasonable accommodationである。同じ合理的という言葉には、reasonableの他にrationalという単語があり、rationalは自身の経済的・効率的といった観点の合理性というニュアンスであるのに対して、reasonable’は自分にも他者にも理にかなった合理性という意味合いがあるとされる。

 つまり、ここでの合理的配慮とは、障がい者vs事業者を対立関係にして、どちらか一方の要望や事情のみを考慮するものではなく、双方の建設的な対話から相互に理解・納得し、その手段や方法、代替手段の検討されたものが合理的配慮である。相互の理解、納得、負担が重すぎない範囲で対応するということが「合理的」ということである。これが「理にかなっている」ということなのだろう。

 以上から分かることは、合理的とは、世上思われているような計画性、最短距離、打算、無駄のない行動という一面的なものではなく、人それぞれに合理性があり、多様なものだということである。この多様な理をまちのために行為する活動につなげていくのが、自治会・町内会政策ということなのだろう。

 ウエーバーの分類に当てはめれば、
 ・「目的」は多様であるが、それをまちのためという行動につなげていく
 ・まちのためという「価値」を大事にしていく
 ・まちのためという「感情」を育くんでいく
 ・まちのためという「伝統」を育てていく 
ように自治会・町内会政策を組み立てていくことだろう。
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