松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆(再掲)欅坂46・ナチ制服似のコスチュームはなぜいけないのか(相模大野)

2018-04-15 | 1.研究活動

「欅坂」の画像検索結果

 www.ohtabooks.com/quickjapan/backnumber/vol135/2017/12/18120000.html

 一昨年11月の記事であるが、たまたま見つけた。このときは、ヒトラーと比べたが、トランプは、思ったほど大したことはなかった。しかし、逆に、大した戦略もなく、シリアの次は、北朝鮮とするのではないか。そして、日本に危機が迫ったとき、国民を狂喜させるリーダーが現れ、そして、今、安倍退陣と叫んでいる人たちが、一気に反転し、朝日新聞ははじめ、多くのマスコミが、その声を煽ることになるだろう。ここ2,3か月は、その分岐点だと思う。

 それにしても国民国家は、よくできたシステムだと思う。とにかく戦争に強い仕組みである。金でやとわれたのでなく、自分たちの国なので、自分の意志で国を守るからである。その国民国家のデメリットが目立つようになった今こそ、ナショナリズムをどう手なずけるかが問われている。民主主義の学校である地方自治のがんばりどころだと思う。

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 政治学では、ナショナリズムをずっと考えているが、この日は、話題の欅坂46を取り上げた。正直、欅坂46については、誰が誰だか、どんなグループなのかは全く分からないが、ナショナリズムを考えるタイムリーな素材なので、ここで考えることにした。 

 話は、広範に及び、朝9時からの授業と夜の6時からの補講にまたがったロング講義となった。この日は、たまたま「水晶の夜」と呼ばれる、ドイツの各地で発生した反ユダヤ主義者による暴動がおこった日である。 

 水晶の夜は、1938年11月9日夜から翌日の未明にかけて起こった事件で、多くのユダヤ人商店や企業が破壊され、略奪された。水晶の夜とロマンチックな名前を付けられているが、これは襲撃によって砕け散った窓ガラスが月明かりに照らされて水晶のようにキラキラと輝いていたことから名づけられたものである。ナチスが主導した事件ともいわれるが、おそらくはドイツ国民に内向していた反ユダヤ主義が暴発した事件だと思う。 この水晶の夜を境に、ドイツの反ユダヤ主義は一層加速し、ホロコーストに向かっていった。

 ホロコーストは、「焼かれた生け贄」という意味のギリシャ語を語源とする言葉とされるが、国家をあげての大虐殺によって、ユダヤ人600万人が殺されたと言われる。 

 講義ではアウシュビッツの実態について、思わず、やや詳しく話を始めてしまったが、話がリアルすぎたのだろうか、途中、学生が一人、席を立った。途中から、軌道修正し、おおざっぱな話にとどめたが、朝の9時からの授業ではきつかったのかもしれない。

 ちなみにアウシュビッツには思い出がある。2011年3月11日、昼食後、二人でアウシュビッツのビデオを見ていた(ポーランドに旅行に行こうと考えていた)。見終わって、二人とも暗い気分になっていた時に、あの地震がやってきた。何度も襲ってくる激しい揺れと、さっき見たばかりのアウシュビッツのおぞましい映像とが重なって、不安な気分になったことを覚えている。

 アウシュビッツの話だけを取り上げて、ドイツナチズムのおぞましい面を強調するだけでは、国民がなぜナチズムに狂喜したのか理解できない。ナチスは、どん底に落ち込んでいたドイツ人に希望を与え、現実の生活を豊かにしていった。国民の信任がなければ、いくらヒトラーでも、何もできるものではない。ヒトラーは、「大衆の理解力は小さく、忘却力は大きい。効果的な宣伝はスローガンのかたちでくりかえせ」というが、素材のないところに、いくら宣伝しても、大衆はついてくるものではない。

 初期ナチスの政策を見ると、まるで今日の世界で試みられている政策のオンパレードである。福祉政策、労働者政策、賃金政策、結婚や子ども政策などがあり、いずれも徹底している。

 まず失業者対策であるが、ナチスは、それまで600万人を超えていた失業者数を50万人以下まで減らした。労働者には、有給休暇や健康診断を与えた。労働者のための大規模な保養施設づくりを行った。労働者なら、格安で海外旅行にも行けることとなった。徹底した労働者政策である。

 ナチスは、大減税も行った。10%の減税である。配当制限法もつくった。企業は資本の6%以上の配当をしてはならないという法律をつくり、株主が大儲けすることを禁止した。6%を超える部分は、公債を買い、労働者の暮らしをよくするために使うことにした。

 ナチスは、国民の健康と環境衛生の向上にも力を注いでいる。その結果、幼児死亡率は大幅に低下し、伝染病や結核なども大幅に減少した。ナチスは国民の食べ物にも気を配る。有機的で自然な素材のものをとるように勧める。ナチスは、公害の防止にも積極的に取り組み、大気汚染や水質汚染防止を義務付ける。またタバコの有害性も説いている。

 結婚奨励のために、100万円、200万円単位のお金を無償で若者に貸しだす。そのお金も、子どもを産めば返さなくてもよくなる。雇用も安定し、こうした給付金もあって、結婚数と出生数が大幅に増加する。

 ベルサイユ条約に対するドイツ人の反発なども背景にはあるが、こうしたナチスの具体的で実効性のある諸政策が、ナチスに対する信任をゆるぎないものにしていった。

 夜、6時からの補講の時には、トランプがアメリカ大統領に選ばれていた。ヒトラーの話をしながらトランプと重なった。ナチスは大減税をやったが、エスタブリッシュメントの反対を蹴散らし大減税をあえてやって国民の喝采を得た。トランプも、おそらく同じようなことをやり、いっときアメリカ国民を狂喜させることになるだろう。トランプの保護主義的な政策は、アメリカ国民をいっとき、豊かにするだろう。全体にトランプに対する評価は厳しいが、私は、トランプが、もし一期でやめたら、素晴らしい大統領との評価を受けて終わることになるだろうと思っている。

 しかし、トランプが採用し、アメリカ国民の喝采を浴びるであろう政策は、一時しのぎであり、無理な政策である。そのつけは、世界秩序の乱れにつながり、あちこちで紛争の多発し、世情の不安が、ますます激しくなるだろう。あとで歴史を振り返ったとき、ターニングポイントは、今日の日(水晶の夜)だったと、気がつくことになる。講義はヒトラーから始まって、トランプになっていた。

 

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