松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆自治基本条例それぞれ(鶴ヶ島市)

2014-08-15 | 1.研究活動

 自治基本条例は、自治の文化をつくる条例である。人のせいにするのではなく、自分たちが暮らすまちは、自分たちが、汗を流しながら、つくっていく社会をつくる条例である。そうした自治の基本を地道にやっていかなければ、私たちの社会は、次世代に続いていかない。

 自治基本条例をめぐっては、一部に強い反対論がある。そうした人たちも、伝えたい思いがあってのことだと思うが、法律と条例の関係や地方自治法など、基本的な法的リテラシーが不足していることもあって、思いが空回りしているようだ。

 埼玉県鶴ヶ島市では、検討の過程で、市民検討委員会に自治基本条例に反対する学者に来てもらって、意見も聞いている。そのやり取りは興味深い。
 その記録を読むと、反対する学者の人も、意外にも、市民主体のまちづくりや市民参加には肯定的であることが分かる(反対かと思っていた)。要するに、自治基本条例だからいけないということのようである。ただ、それに代わるべき対案については、まだ用意してされていないようだ。http://www.city.tsurugashima.lg.jp/hisho_seisakuka/benkyokai1_155.html

 ここに教授とは、保守派の論客である八木秀次教授(当時高崎経済大学)である。

(委員)
 このようなことから、国を変えると言うと大げさだが、身近な部分から変えたいとまちづくり審議会の委員となった。しかし、市民基本条例がそれらを変えられるものとは思わないが、市民が一人ひとり立ち上がる、自分達が受け身から主体となるように変わろうという、きっかけになればと考えている。
 八木先生は、今の法体系に違反であるということを中心にお話しをされたが、こういった時代背景を考えつつ将来のことをどのようにお考えか、どのようにしていけばよいのか伺いしたい。

(教授)
 言いたいことはわかる。新しい仕組み作りなど、必要であると考える。しかし、その思いと自治基本条例は別である。自治基本条例を作ることで実現することではない。別の仕組みをつくられた方が、より具体的に多くの皆さんの意見が反映され、さらに地域、自治体での新しい仕組み作りに繋がるのではないのかと思う。冒頭から言っているが、市民が市政に参画していく仕組みについて、今の法体系の中で何が可能なのか、手段はいろいろある。そのような仕組みをつくるほうが、よほど建設的な事ではないかと考える。自治基本条例をつくっても、皆さんの意見は反映されない。ごく一部の、別の人達の意見が反映される。本来の目的は、そのための仕組みづくりである。皆さんの気持ちを実現しようとするのであれば、別の条例をつくるほうが良い。あるいは、条例でなくても仕組みづくり。

(「具体的にはどうすればいいの。その内容。」という声あり。)

(教授)
 それぞれの市民が参画する方法はいろいろある。

(「いろいろでは分からない。具体的な内容を話してもらわないと・・・。」という声あり。)

(事務局)
 また、ご質問は改めてお聞きしますので、ご理解いただきたいと思います。

(「いろいろと言っているが、具体的にどうすればいいのかというのを提示していただかないと・・・。」という声あり。)

(事務局)
 ご質疑につきましては、後ほどはお時間を取りますので、申し訳ございません。

(委員)
 この基本条例をつくるにあたり、私たちも討議を重ねている中で危惧していたことが書かれており、こういうことはしてはいけないと良く解った。
 先程、質問された方々と私も同じような思いを持っていて、先生に市民が参画する仕組みを作ってはいけないと言われると思っていた。しかし、つくっても良いと話されたので、憲法的な視点から、自分達が参画できるような方法としてどのような事があるのか、具体的に教えていただきたい。また、それをつくることは、先生がおっしゃるような市民を縛ることにならないのかお聞きしたい。

(教授)
 具体的な問題というのは、非常に難しい。

(委員)
 そこが知りたい。

(教授)
 だからみんな困っている。しかし、自分達の思いを市政に届けたいという思いはあると思う。そういった制度設計をしてほしいと言われても、困ってしまう。

(委員)
 どういうことなら、法に触れないなどではいかがか。

(教授)
 市長や様々な方と話しあっていただきたい。

(委員)
 行政や議会と話し合いながら進めれば、そのようなことはないということか。

(教授)
 先程の投票率が低いという問題なども、一部の人達の意見が反映されるという形になると考える。多くの人達が知らないところで、政策が進んでしまうという事になると思う。市民の自覚の問題ということももちろんあるが、そこがオープンとなる仕組みはないのかなとは思うが、全国的に見てもなかなかこれという決定的なものがない。
 しかし、鶴ヶ島市における検討に皆さん方が関わられているということは、私の知る限りではかなりまれなケースだと思う。言葉が悪いかも知れないが、委員の皆さんは本当に普通の市民の方だと思う。自治基本条例の審議会には、大抵普通の人はいない。

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