松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆シビックプライドとふるさと納税

2020-04-15 | 域外住民への関与
 ふるさと納税は、問題の多い制度であることはよく知られている。

 ふるさと納税は、住所地に収めていた住民税の一部を応益のない自治体へ配分するシステムである。もともとの自分のふるさとに納税(寄付)するのならば、応益性もあるが、今日のふるさと納税の多くは、返礼品目当てなので、還元率のいいところが多くの寄付を集める。

 泉佐野市は、アマゾンの利用券みたいなふるさととは関係ないものを返礼品にして、ふるさと納税全体の1割弱のお金を集めていた。返礼品があれば、そこに納税するのは、合理的な行動だから、ますますエスカレートするのが、自然である。

 返礼品目当てで、何のゆかりもないところに、納税するのは下品な行為である思うが、そうはいっても、モラルVS実利でみると、国が認めた制度なので、モラルを意識する人は少なく、結局、実利が優先する。

 ふるさと納税は、他自治体の住民税に手を出すシステムであり、域外住民政策の一種である。本来のふるさとを思うものならば、むしろ好ましいことであり、この制度の理念が間違っているのではなく、返礼品競争がいけないのだと思う。域外住民政策を正当に進めるには、一定のルールが必要なのであろう。

 ふるさと納税の見直しは、これだけ税金で、地元企業の下駄あげをしてしまったので、いきない返礼品をなくすことはできないだろう。まずは、還元率を徐々に下げ、あるいは、地場のもの(原料、加工、雇用)にすれば、地域に還元されるのが、そういうものを返礼品に限定していくのが、ソフトランディングだろう。

 もし、最高裁で、泉佐野市のふるまいが、正当とされたら、無秩序状態になり、早晩、この制度は休止になるだろう。

 さて、シビックプライドとふるさと納税の関係であるが、シビックプライドが高い自治体住民は、ふるさと納税しないというのが、論理になる。ふるさと納税すれば、自分の町の住民個人税が、他の町に流れてしまうからである。まちに愛着があり、大切に思っていたら、そんなふるまいはしないはずである。

 横浜市は、ふるさと納税で流出する個人市民税がトップの自治体であるが、反面、シビックプライド率は高いが、経済的誘因に負ける程度のシビックプライドなのか、あるいは、そこまで思いが及ばないかのどちらかだろう。

 今の制度で最適解は、まちをあげて、自分の町にふるさと納税し、まちをあげて、他の町からふるさと納税をもらうキャンペーンをするのが一番ということになるが、これはとても尊敬されないことになる。

 ともなく、ふるさと納税制度があり、今の仕組みのままでは、参入せずにいると、個人市民税は流出し、入ってくるふるさと納税は少ないということになってしまう。ふるさと納税制度に参入しつつ、シビックプライドを高めるのは、容易ではない。泉佐野市のシビックプライドは、どうなのか、興味深い。
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