「願興寺」悠久の1200年

最澄縁の願興寺ブログ。2015年には開基1200年祭を予定。本堂、24体の仏像が国指定の重要文化財。

白日に晒すということ(その1)

2010-11-08 08:23:36 | Weblog

4,5日前に、事業仕分け作業の中で「交付税特別会計」の33兆6千億円の借金が報道された。この借金は地方自治体分なのである。国の分は19兆円あり、こちらは既に一般会計に計上されていた。この地方分の借金33.6兆円は、知る人ぞ知る借金であり、政府としては、隠しておきたい借金だったと思う。

地方交付税は自治体相互に差が生じないように、収入の少ない自治体に多く支給するように設けられた制度であり、これが日本の地方自治は社会主義的であると云われる所以である。ではこの交付税はどの財源から支出されるのかが、疑問なところである。この財源は取得税、酒税、法人税の32%、消費税の29.5%、酒税の25%が当てられることになっている。

当然のことながら、税金の一部を地方交付税に当てるのであれば、税収が落ち込めば交付税に当てるべき財源も落ち込むのである。これを地方交付税の入りの部分であることから入口という。それに対して、地方自治体は前年度と同じ程度の地方交付税を期待して予算を計上し、それを基準に地方への支給額が決定された。この支給額が出口と呼ばれるものである。

景気が後退し税収が落ち込んだ分だけの差額をうめるために借金を重ねた結果が、交付税特別会計の借金であり、国の償還分19兆円であり、地方の償還分33.6兆円である。つまり、入口に対してそれ以上の出口を地方自治体は期待し、それに見合った分を国は借金により支給してきた。

こうした地方交付税やひも付きの補助金によって、全国どこへ行っても特徴のない同じような町が出来上がり、特徴のある町を形成しようとするという気概ある自治体が少なくなってしまった。この借金の償還については、00年、05年、10年と3度に亘って償還を審議されたが、景気の悪化を恐れるために見送られた経緯があった。

もし、この交付税特会の償還が始まれば、わが町の交付税は10億円ほどが給付されてきたが、その金額はどれだけ減少するであろうか。ということが、わが町の財政を預かる担当者の悩みであることは、疑う余地のないことであろう。今になって思えば、この交付税は税収の一定割合から超えた分は支給せずに、税収の一定割合のみを支給しておくべきだったのではなかろうか。

この借金については、国も地方も白日の下に晒したくなかったに違いない。しかし、この報道は、尖閣諸島の中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突してきたのを撮影した動画の流出によって、消えてしまったようだ。

願興寺公式サイト

冒頓単于(ぼくとつぜんう)の国家観に学ぶ

2010-11-02 10:44:18 | Weblog

学生時代を北海道で過した私は、友人たちとなけなしのお金を持って、北海道を一周したことがあった。根室に辿りついた私たちは、テントを張るには寒すぎて、納沙布岬で車の中で一夜を過した。朝になって目を覚ますと6万円で買った薄黄色のカローラが、真っ黒くなっていた。「呑んで騒いで、丘に上ればあ~ 遥か国後の白夜は明ける」と唄われた国後の爺々岳(ちゃちゃだけ)が噴火したのである。

知床旅情では「遥か国後の…」と唄われているが、根室から知床にかけて進んでいれば、海を隔てて手の届きそうなところに国後は存在している。そんなところをロシアの大統領が訪問したのである。今ではそんなに話しに上らないが、私が北海道にいた時分には、漁船がソ連(現ロシア)にだ捕されたニュースが飛び交っていた。

北方四島も尖閣諸島も我々の住む岐阜県という日本の中心部では、関心は薄い。司馬遷の史記には、単于(匈奴での君主)の後継とされた冒頓(ぼくとつ)が、父親の新たな妻に男児が誕生したのを機に、後継から外され隣国の東胡に人質にされた話がある。冒頓は東胡から逃げ出して、父親と新たに後継とされた男児とその母親を殺害して、匈奴の単于になるのであった。

東胡はその後、冒頓の持つ名馬や冒頓の妻の一人を差し出すように迫り、冒頓は部下の反対を押し切って東胡の要求に屈する。次に東胡の要求してきたものは、匈奴と東胡の間に位置する荒廃した土地であったという。今度は部下たちは、領有するに値しない土地として、こぞって東胡の要求に応えるように進言するが、冒頓は進言した部下を斬り、東胡を滅ぼしてしまう。冒頓にとっての国家の根幹は、土地にあったのであろう。

この話は中国の史家「司馬遷」よって書かれたものである。今まで私は史記にこんな話を載せているのを不思議に思っていたが、その後の中国の政策をみるにつけ、中国の国家形成の根幹を成すものになったであろう。日本は海に囲まれた国である。竹島を含めて、今、その国土の形成を真剣に考えるときではなかろうか。

人々は日本政府の弱腰外交を批判するが、それは今に始まったことではなかろう。日本にとって、農業も漁業も大切な産業である。そして、農業従事者、漁業従事者は日本の伝統文化の大切な担い手である。日本の国家形成にとって、国土は大切な…大切な根幹を成すものであろう。

願興寺公式サイト