きんいろなみだ

大森静佳

「塔」2021年7月号 作品2(栗木京子選)

2021年08月05日 | 短歌
付箋をつけた歌より

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冬という球体を斬るためだけの刀剣がある あふれるさくら 田村穂隆

会うことの難しければ誰でもよい人を眺めに公園に行く 今井眞知子

トラックにできたてパンの積まれゆく迷子になるならこのなかがいい 北野中子

雨樋が詰まりて大きな音立てる気にせぬ子もゐて眠れぬ子もゐる 高松恵美子

モザイクのありしところに人間の顔戻りたり容疑者として 中村英俊

手の窪に四月のみずのやわらかくつねより長く顔を洗えり 村上春枝

眼球を押して何かの物語にならない光を自分に見せる 羊九地

こころにも打ち身はあるらしうすあをの紫陽花ときどき痛いと言へり 吉田京子