わしには,センス・オブ・ワンダーがないのか?

翻訳もののSF短編を主に,あらすじや感想など、気ままにぼちぼちと書き連ねています。

「悔い改めよ,ハーレクィン!」とチクタクマンはいった~ハーラン・エリスン⑤

2007-08-10 23:56:58 | ハーラン・エリスン
 ハーラン・エリスンの最初のネビュラ賞,ヒューゴー賞受賞作であり,出世作という作品であります。

 「チクタクマン」とは誰でしょう。
 極限まで管理された世界の中枢にすわり,人びとの生殺を握る男。
 
 時間を基準に置いた生活を続けるうちに,時間通りに物事を進めることが絶対的なものとなり,ついには,遅れた時間を,寿命から差し引くというところにまで至ってしまった世界。

 2389年7月15日,午後12時00分00秒より実施。全市民はタイム・カードと心臓プレートをマスター・タイムキーパーのオフィスへ登録のこと。

 このシステムは,強力な政府の官僚機構に維持され,人民たちは,唯々諾々と従うばかりでありますが,やはり,突然変異的な跳ね返り者が出てくるのですねえ。

 お尋ね者「ハーレクィン」は,いろんな場所に神出鬼没。
 連鎖的な遅刻を発生させ,当局を翻弄します。

 しかし,残念ながら逮捕されてしまうんですなあ。
 いかした題名は,チクタクマンがハーレクィンに発した言葉です。

 余談ながら,統制管理が行き着いた世界へ刃を向けた男といえば,ヴォネガットさんの「ハリスン・バージロン」を思い起こしますが,残念ながら,エリスンさんの方が,辛辣度において負けておりますなあ。

 才気走りの方がでてしまったというか,コミック仕立てであっさりと仕上げたというのかなあ。

 それはともかくも,人間を抑圧する体制への反発とともに,こういう体制にゴーサインを出し,そして,与えられた体制に順応してしまう一般大衆というものへの怒りも感じました。
 「選挙に行かずに寝てくれてたらよい」とのたわまった首相もいましたかね。

 ラストはどう解釈すべしでしょうか。
 「ハーレクィン」の一石により,磐石に見える機構のゆらぎを暗示しているのでしょうか。


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