ふくと考えるネコと生活

ネコの生活・食事・健康・病気などについて。

ネコとタウリン

2008年02月18日 00時09分23秒 | 食事と栄養
2008年2月17日(日)

ネコがタウリンを体内で生合成できない(または合成能力が低い)ことは、結構有名になっている。キャットフードのパッケージ中やインターネット上でも、そのような記述は多い。

牛(タウロス)の胆汁中から発見されたので、タウリンという名前がついたそうだ。そういえば、ケンタウロスという上半身が人間で下半身が馬というギリシャ神話の怪物がいたなぁ。。。

ネコにおいては、必須アミノ酸のひとつとして紹介される場合が多いが、正しくはアミノ酸(カルボキシル基を含んでいない)ではなく、ビタミンの一種として分類される。遺伝子暗号が指定する20種類のアミノ酸の中にも当然含まれていない。つまりタンパク質を構成する材料ではない。

ところで、なぜタウリンが必要なのでしょう?
まずは4つほど。

・目の網膜細胞が正常に機能するために必要。
・心筋細胞が正常に機能するために必要。
・正常な体の成長と繁殖のために必要。
・正常な胆汁生成のために必要。

胆汁生成に関して、次のような記述を見つけた。

『胆汁酸はアミノ酸のグリシンまたはタウリンと抱合(結合)したグリココール酸またはタウロコール酸の形で、胆汁中に分泌される。肉食動物は、タウロコール酸、草食動物はグリココール酸、雑食動物は両方の混合物である。抱合胆汁酸は強い界面活性作用があり、膵リパーゼの作用を助ける』
【動物看護のための小動物栄養学/阿部又信著/ファームプレスより抜粋】

 さて、このように端的に書かれても素人の私にはなんのことやら分からないので、読み解かなければならない。こういう記述がスラスラ分かるようになりたいものであるが、仕方ないので、キーワードをひとつひとつ検索。

・リパーゼは、消化酵素のひとつで、脂肪をグリセリンと脂肪酸に分解する。(アミラーゼがでんぷんを分解する酵素であるのと同じことね。)
・胆汁は、肝臓の肝細胞で生成される黄褐色の液体。総肝管を通って、胆のうに一時貯蔵・濃縮される。食事時に、胆のうが収縮され、総胆管から十二指腸に排出されて働く。(そういえば、ネコは胆管のトラブルが多いことで知られている。先代ネコもそうだった。タウリンが不足していたのかなぁ?)
・胆汁酸は、界面活性剤として食物中の脂肪を乳化して細かい粒にし、消化酵素リパーゼと反応しやすくすることで消化を助ける。さらに、脂肪の分解産物に作用して、小腸から吸収されやすく変化させる。
・腸内に分泌された、胆汁酸のほとんどは、小腸で再吸収を受け、肝臓に戻され再利用される。(実に上手くできているものですね)
・界面活性剤とは、水と油が分離しない状況を作り出すものである。(ああ、だから食器を洗う洗剤や髪の毛を洗うシャンプーには界面活性剤が入っているのね。皮脂汚れなどを乳化して、からめとって洗い流すってことだ。)
・水と油が分離しない状況を乳化という。

 胆汁とタウリンの関係するキーワードを調べてみて、やっとなんとなく分かったような気がする。タウリンが不足すると、タウロコール酸が作れない。タウロコール酸が上手く作れないと機能的な胆汁がつくれない。胆汁が正しく分泌されないと、脂肪分解の手助け役が不在となり、消化が上手くいかなくなる。
 また、胆汁は壊れた赤血球などの排泄活動も担っているため、この方面にもなにかの影響が出るかもしれない。

ところで、胆汁は古くなった赤血球の排泄作業を受け持っているので、壊れた赤血球から出てきた色素のせいで、黄褐色をしているそうである。つまりは汚れた色。
先ほども、途中で触れたが、胆汁は腸内に分泌され、また吸収されて肝臓に戻る。しかし、全てが戻るわけではない。汚れたものはそのまま大腸に流れ、排便される。大便の色が、黄色がかっているのは、この胆汁の色素が影響しているという。

次っ。

では、タウリンが不足すると何が起こるのかな?

1975年には、ネコのタウリン欠乏が、網膜を侵し、中心性網膜変性となり、やがては失明することが発表された。

また、ドッグフードをネコに与えてはいけないという記述にもよく遭遇する。これは、イヌにとってタウリンは必須栄養素ではないので、ドッグフードにはタウリンが含まれていないか、または特別強化もされていないので、これを与え続けることは、ネコのタウリン欠乏症を誘発するという意味。ちなみに、タウリンが強化されていないドッグフードを長期にわたってネコに与えると、72週間以上でタウリン欠乏症になるとのこと。

さらに、タウリン欠乏によって、生殖能力の低下(奇形、死産、仔猫の低体重、低生存率、成長速度低下など)、拡張型心筋症、腎萎縮、骨形成不全などが認められている。

しかしながら、タウリンは動物性タンパク質に多く含まれているので、肉や魚を通常通り摂取していれば特に問題にはならない栄養素といわれている。
つまり、野生で生きる肉食動物にとっては、タウリンは生合成するまでもなく、常食の中に多くあるので、その合成能力が退化してしまったか、あるいは元々備わっていなかったのかも知れない。ところで、タウリンは、調理過程で最高80%が失われるという話もある。

タウリン不足が心配されるのは、人間と一緒に暮らすようになったネコたちの現代病とも言える。私たちがどこかから連れてきて、何かのご縁で一緒に暮らすことになったネコたちの健康を守るのは、やはり飼い主側の責任であることが再認識させられる事実である。

ところで、ビタミンAのときと同じく、タウリン合成ができないという事実もまた、ネコが肉食動物であることの証である。

【参考文献:ネコに手作りごはん/須崎恭彦著/ブロンズ新社】

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