自分は子供の頃から阪神ファンである。
どのくらい昔から阪神ファンかと言うと、まだサードを三宅が守り一塁の遠井に送球していた頃からの阪神ファンなのである。
大阪出身でも無く、テレビで見る試合も巨人戦以外は見れなかった自分が、なぜ阪神ファンになったのか、それには純然たる理由がある。
その理由を聞くと、現在の巨人ファンは自分が恥ずかしくて仕方が無くなるだろうと思う。
よく巨人ファンになぜ巨人のファンになったのか？とお伺いすると。
意外と多い回答が巨人の星を見てからという事である。
巨人の星は昭和の金字塔とも言えるスポ根野球マンガで、日本人たるや知らない人はいないであろう大ヒットアニメでもあった。
物語は貧乏のどん底にいる星飛雄馬が、父親から虐待を受けながら、全く学校の勉強などはせず、非行にも走らず、科学的根拠を全く無視して、栄光の巨人軍のスターに這い上がり、野球のルールも全く無視して大活躍するという人気マンガである。
飛雄馬が子供の頃に身に着けていた大リーグボール養成ギプス。
この科学的根拠も人間の成長過程も全く無視した拷問の道具は、バネが皮膚を挟んだらそうとう痛いに違いない。
しかも、単なる虐待なのに、まだ投げたことも見たことも無いボールの完成形には、既に名前が付いていたのが驚きである。
ただ、この巨人の星という物語は、ある漫画のパクリなのである。
単にヒーローが魔球を投げて相手打者を打ち取るところが似ているなどと言う生半可なそっくりさんでは無く、丸々ストーリーをパクったと思われる節が随所に見られるのである。
その漫画こそ。
貝塚ひろし先制のミラクルA（エース）だ。
この主人公の郷士郎は子供の頃からド天才なのである。
しかもとっても貧乏な家庭に育つ。
何がド天才かと言うと、自分が投げたカーブが曲がり曲がって自分のところに戻って来るのである。
一人で壁も使わず永遠にキャッチボールが出来るのは、後にも先にもこの郷士郎だけだろうと思う。
受けるキャッチャーはやはり天才キャッチャーの大山大三。
何しろ同時に投げた３球のボールを全てキャッチできるほどの天才キャッチャーなのだ。
（これが何の役に立つのか、野球を経験して来た今でも解らないが・・）
そんな二人の天才コンビに立ちはだかるのが、阪神タイガースの谷隼人である。
そう芸能人の谷隼人は、ここから名前を拝借しているのである。
貧乏な天才投手対金持ちなんだけれど野球選手。
どこかで見た構図では無かろうか？
しかも。
途中から投手の利き腕が変わる所まで同じなのである。
話しを元に戻そう。
貧乏な家庭で虐待を受けながら、非行に走らず勉強もせず、毎晩ちゃぶ台のご飯をひっくり返されて食べる物も無いのに、不思議と体格の良い主人公星飛雄馬は貧乏から這い上がる為に、小さい頃から将来は野球選手一択の一か八かの人生を送る。
星一家は貧乏なのだが、毎日お茶碗を新しく買い替える余裕はあったようだ。
そこへ登場したのが花形コンツェルンの御曹司、花形満である。
（既にここから子供でも何か気がつく）
この花形満、16歳にしてスポーツカーを乗り回し。
（当時は16歳から車の免許が取得出来た）
事もあろうか、そのスポーツカーには薄着の美女がてんこ盛りに乗っていたのである。
けしからん。
しかもそんな羨ましい花形は。
後にミニカーとして販売されるにまで至るのである。
落ち着きを取り戻そう。
貧乏で野球一択の星飛雄馬と、何もしなくても全てに恵まれている花形満。
単純に考えれば、貧乏で努力家の星を応援したくなるのが日本人気質であろう。
けれどもっ！
ちょっと打たれりゃメソメソ泣き。
左門豊作を打席に迎えた時には、左門の後ろにひもじい大勢の兄弟が見えると幻覚症状を訴え。
涙でホームベースが見えないと言ってストライクが入らなくなった星飛雄馬。
近寄るキャッチャー伴宙太に、気するな伴とマウンドから制した星。
その時に、もしも自分が野手だったら、間違いなく星の後頭部をスパイクで蹴っていたと思う。
貧乏の中、大勢の兄弟を養う左門豊作。
なぜかそこらの金持ちより遥かに栄養に恵まれている。
そんな自分の事しか考えない星に対して、全ての環境を捨ててまで打倒星に燃える花形満。
多くの美女を乗せたスポーツカーのハンドルを鉄のバットに持ち替え、工事現場で解体工事に使うような鉄球を打ち返すと言う、重機の存在を頭から否定するようなトレーニングに励む。
対する星は野球のルールを無視した、姑息な反則球に大リーグボール１号、２号、３号と名前を付けて対抗するのだが。
子供心に、どちらが男として尊敬できるか、悩む必要すら無かった事をおわかり頂けるだろうか。
この漫画を見て、阪神ファンにならない事の方がおかしく感じるのである。
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