ショットガンが闇を切り裂いたときにはすでにサンビームの心は折れていた。
もうサンビームが闇を照らすことはない。
コスモサンビーム
初期のころには武豊も背中の上にいた。
京王杯、朝日杯と重賞を連勝して最優秀2歳牡馬にも輝いた。
このころのサンビームはカクテル光線を放っていた。
同期にはコスモバルクもいて「コスモ軍団の黄金時代到来か」とも言われていた。
しかし多くの朝日杯馬がそうであったように、この馬も光から影へとステップを踏んで行く。
NHKマイルCまでは緩やかな光を保っていたがダービーのころになると陰り行くトワイライト。
そして暗い影に手招きされながら孤独なシャドーダンシング。
長期休養明けから復帰しても光は枯れていた。
屈折した光は焦点が定まらない。
もはやG1馬であるという看板さえも忘れ去られようとしていた。
度重なる連敗で凡走にも不自然さを感じていなかった。
事実スワンSでは生涯初の2桁人気。
しかしそこで一筋の光が再び瞬きだす。
それは紛れもなく2歳のときに見せたあの光線。
朝日杯以来久しぶりに先頭で駆け抜けた。
ただ完全復活かどうかはすべてこの阪急杯にかかっていた。
だからエネルギーを溜めるために間隔をあけて準備は万全のはずだった。
ブルーショットガンの松永幹夫とコスモサンビームの本田優。
光と影。
最後の重賞を最高のかたちで締めくくった松永幹夫と
最高のパートナーでクラシック最有力候補のアドマイヤムーンを最高の騎手武豊にとられた本田優。
このコントラストはなんとも哀しい。
コスモサンビーム
松永幹夫と違って誰にも祝福されず、命とともに現役を引退した。
自らの血統と同じようにひっそりとしかし壮絶に旅を終えた。
もう光の矢を放つこともない。
サンビームには二度と夜明けは来ない。
合掌。