A.N.A.L. Co., Ltd. Executive Office of the President

“ 嵐が吹き消した 恵みのろうそくを 再び取り上げ、それに新しい明かりを灯さなければならぬ。” 教皇ヨハネ二十三世

file.no-125 『 ハリー・ポッターと死の秘宝 part2 』 ( シリーズ完結 )

2011-12-18 08:46:51 | 映画
「 よっしゃあ! ハリーが死ぬ!! 」
―― なんて、歓声を上げると、顰蹙を買いますか?

映画公開は、今夏7月。
また、ディスクのセル・レンタルも、今冬11月に。
011-07-30 22:03:00 付の記事、『 Harry Potter と 死の秘宝 part1 まで観て。』 にて、『謎プリ』 と 『秘宝 part1』 を観ていたことが確認されますので、完結編となる 『 死の秘宝 part2 』 を観たのは、おっそいとしか言いようがない。

いいのよ、遅くたって…… どうせ、あまり好きではなかったのですし。
『 謎プリ 』 を観ていると 寝てしまうほどには、醒めている私。

       ***

完結編を観た結果、私が採点するなら、ぜひ 79点 という点数を付けたい。
教員時代の倣いに従い、80点を 評価4選考通過のボーダーとするのなら、残念ながら 今作も 「 並 」 とせざるを得ません。

ただ、いくつもの見せ場があること。
『秘宝 par1』 の反省を活かしたのか、お遊戯演技の尺が短かったために、退屈はしなかったこと。
その点、娯楽映画としてはきちんとポイントを押さえていると思います。

なんといっても、マクゴナガル先生の 活躍シーンがあったこと。 それに、スネイプ先生の 一途な想いの告白シーンがあったことは―― すばらしい。

マクゴナガル先生を演じたのは、シリーズを通して マギー・スミスでした。 アカデミー受賞アクターとして名高く、私も ウーピー・ゴールドバーグと共演した 『 天使にラブ・ソングを 』2部作、ダイアン・キートンと共演した 『 ファースト・ワイフ・クラブ 』 などでの、彼女の演技が好きです。
ハリポタ・シリーズでは、マクゴナガル先生役として、『 賢者の石 』、『 秘密の部屋 』 では、存在感のあるキャラでしたのに、シリーズを追うごとに 空気になってしまい……。

登場シーンが少ないので、どうしても仕方のないことなのでしょうけれど、アクターの無駄遣いの感が否めません。
ダンブルドア校長役ですが、2作目までは 枯れ木のような リチャード・ハリス ( 映画『 グラディエーター 』、皇帝マルクス・アウレリウス・アントニヌス役 ) が、彼の逝去を受け、それ以降は ムキムキな マイケル・ガンボンが 演じました。 もっと、見せ場が欲しかった―― というのは、私のわがままか。

セリフの言い方、わずかな動作の巧みさは、どうしても 年長アクターのほうが上です。 ハリー、ハーマイオニーたちを演じる若手には無い、その 味わい。
“ 演劇の妙、ここにあり ” といったところでしょうか。

ホグワーツに戻ったハリー。 彼は、食堂にて、全校生徒を前にして スネイプを弾劾する。
杖を手に取ったスネイプ。 ハリーの危機を感じたマクゴナガルは、彼をかばい 前に出る。 そして、炎の魔法を使い、スネイプに攻撃を加え 逃亡させる。 そのまま、ホグワーツ攻防戦の準備を呼びかける――。



      ***

さて、スネイプ先生ですが。
スネイプとダンブルドアとの最後の掛け合い。
ダンブルドア死亡時のセリフ 「 please... 」 というのが、物議を醸したとか。 あれは、『 謎プリ 』 ( 原作英語版 ) が発売された頃のことでしたか―― そのような記憶があります。

キモイくらいにねばっこい容姿と声、物言いと性格から、シリーズ第1作登場時から、「悪役だろう」 と思っていました。
それが、( 原作者曰く ) マキャベリスト、ダンブルドア校長の命令で、彼を殺し、ヴォルデモート卿陣営へ二重スパイとして潜入。
また、ホグワーツの生徒であった当時から、同級生であった ハリーの母親を想い、彼女が死んだ後も 彼女を想い続けた。 その ゆるがぬ愛から、彼女の息子 ハリーを 陰から守ることを誓った。
( 原作者の、後付け設定でないのなら ) 死なせるためにハリーを生かしておいた、ダンブルドアの冷徹さに対し、憤った 好漢だった―― という、意表を突かれた人物。

ダンブルドアの持っていた、最強の杖 「 ニワトコの杖 」 は、今はヴォルデモートが所持。
前の所持者 ダン爺を殺した人間にこそ、杖は 従う。 ダン爺を殺したのは、スネイプ。
ヴォルデモートが、杖の力を自在に振るうためには、ダン爺を殺した人間を 自身の手で殺さねばならない。 スネイプは、彼に殺されてしまう。

息を引き取る間際、姿を見せたハリーに、スネイプは、涙を流す。
「 この涙を取れ。 頼む……。 “ 憂いの篩 ” で、私を見てくれ…… 」

“ 憂いの篩 ” は、過去を覗くことができる。
スネイプの涙を、篩にかけたハリーは、スネイプとダンブルドアの遣り取りを目にする。
ヴォルデモートを欺くため、「 君が、わしを殺すのじゃ 」 と スネイプに命じていたダン爺。
裏切り者と思われようと、汚名を覚悟せねばならないスネイプ。
咥えて、ハリーは、自身の秘密を知ってしまう。

ラスボス・ヴォルデモート卿の、砕かれた魂の一部は、善なる主人公 ハリーに 宿っているという。
ヴォルデモートは、自身の不死のため、魂をいくつかに分け、さまざまな器物に封入している。 それをすべて破壊するのが、ハリーたちの目的。 しかし、ハリー自身も、図らずも、卿の魂を宿してしまっていた。

“ ヴォルデモートを 完全に滅ぼすためには、彼の魂を宿す ハリー自身が、死なねばならぬ。”

このことを、ハリーに告げるためにも、スネイプは 涙を流したのでしょう。
―― そう、この展開は、たいへん 興奮させられました。
主人公が、死ななければならないなんて!!
何かのアイテムを使って、死を免れるのか? タイトルも、『 死の秘宝 』 ですし、ニワトコ杖や分霊箱以外にも引きずるのか……?
悪役だと 思っていたスネイプが、実は 善なるサイドの人間だったなんて……。

       ***

“ 憂いの篩 ” にて、ハリーが過去を覗いているうち、スネイプが、ダンブルドアへ問う。

「 時が来れば、あの子は死ななければならないと? 」
「 ―― そう、そうじゃ。 彼は、死なねば ならぬ 」


ハリーの母親・リリーが、ヴォルデモートに殺された かつての記憶を思い出しながら、スネイプは続ける。

「 あなたは、彼が、死すべき時に 死ねるよう、生かしておいた…。
  あなたは、まるで 殺される豚のように、彼を育てて来た…! 」


ダンブルドアは 逆に問う。
「 あの子に、情が移ったと 言うのか? 」

スネイプは、それに答えず、
「 Expecto patronum ―― 守護霊よ、来たれ 」
彼自身の 守護霊を召喚する。
その霊の姿は、ハリーの母・リリーの守護霊 牝鹿と同じ。 ―― 想いのためにか、彼の守護霊の姿は、牝鹿であった。

それを見た ダンブルドアは、驚き、言葉を発する。
「 リリーの……! 今でも―― ? 」

スネイプは、ひとこと。
「 ―― Always... 」   永遠に、いつまでも―― 彼女を 愛しつづける……。



実のところ、このシーンが、このシーンこそが、シリーズでも、最高潮ではないかと思いました。
裏切り者の汚名をかぶることを覚悟した スネイプの過去。 最愛の人の息子を、護ろうとしていた。 すべては、彼女への、死んだ後も変わらぬ愛のために。
ヴォルデモートによって 殺されねばならないという残酷な結末を知っても、おくびにも出さず。
ダンブルドアを殺したために、ハリーが 「 裏切り者 」 と罵ったあとなだけに、スネイプの哀しい覚悟を観て―― 泣いてしまいました。
いや、ほんとに 涙が出ました。

ハリーも自身が死なねばならぬという、人間的弱さを見せながらも、現実を受け入れ、ヴォルデモートに殺された。
その高潔さに、拍手を送りました。

死にたくない。 けれど、自分が死なねば、ラスボスも死なない。 巨悪が、潰えることは無い。
正直、このハリーの決断は、小説版 『 指輪物語 』 で、「 帰らざるの旅 」 と覚悟して、 巨悪サウロンの “ ひとつの指輪 ” を 滅びの山へと捨てに行く フロド・バキンズを彷彿とさせ―― パク、いや オマージュかと思ってしまいました。
死を覚悟して、他者のために、絶望へ 歩んでいく。

「 誰にも言わないでくれ 」 とダン爺に約束させたうえで、ハリーを陰で護ると誓ったスネイプ。
敵の魂を宿すため、自分が死ななければ 敵も死なず―― 死を受け入れたハリー。
どちらも、他者のために 自分を犠牲にする。 そして、その 見返りを求めない。
無償の行為こそ、人間の美徳の中でも最たるものではないでしょうか。

       ***

それが、ハリーが生還してしまい、ヴォルデモートだけが、死んだ。
「 めでたし めでたし 」 なんですけど―― 残念でならない。

人が死ねば、二度とは帰れない。 それが、理のはず。
殺されたハリーが生還できた理由が、映画を観る限りでは はっきりとしない。
彼が生還できるのなら、ダン爺、スネイプ、そのほかも生還できなければ、ご都合主義の誹りは免れえない。
これが、売れ過ぎた児童文学の悲哀というものか。

終盤までのシナリオ展開や、魔法戦の活写は、たいへん唸らされました。
最後の、納得できない “ ハリー生還 ” というオチで、マイナス21点。

劇場にて、第1作目 『 賢者の石 』 を観て始まった ハリー・ポッター・シリーズの旅。 夢の終わりは、甘くて しょっぱかった。

コンビニや、中古でも、廉価で販売されていますが、さて オリジナルを買うべきか、レンタルで済ますべきか。 悩むところです。 セブルス・スネイプの男っぷりを観る、ただそれだけででも、レンタルしてみる価値はあるかと。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« file.no-124 『 おまけの小林... | TOP | 過去TOP記事 2011年12月 Adve... »
最新の画像もっと見る

Recent Entries | 映画