Flour of Life

煩悩のおもむくままな日々を、だらだらと綴っております。

柳広司「ダブル・ジョーカー」

2015-01-20 23:41:24 | 読書感想文(小説)


「ジョーカー・ゲーム」の続編、「ダブル・ジョーカー」を読みました。前作では、スパイ養成組織“D機関”で訓練された優秀なスパイたちと、彼らを率いる結城中佐の活躍(?)が描かれた短編集でした。

前作「ジョーカー・ゲーム」が短編集だったので、続編の今作はいよいよスパイたちの頭脳と肉体を駆使した戦いが長編小説で描かれるのか…?と期待してたのに、

はい、また短編集でしたー。

またか!またなのか!これでどうやって長編映画作れるんだ!?
もしかして設定だけ借りて完全オリジナルなのか?それならそれで構わんけど…短編小説と短編小説と短編小説をくっつけたら、「死神の精度」を超える違和感ありまくり映画になっちゃいそうだから。

「ダブル・ジョーカー」の世界は「ジョーカー・ゲーム」よりも時計の針が少し進んで、第2次世界大戦そして太平洋戦争と、戦争がスパイや軍人だけではなく市井の人々の生活にも影響を及ぼすようになる時代が舞台になってます。多分、両者の間にそんなに時間は経ってないと思うのですが、今作は前作よりも「戦争」が生々しく、また優秀すぎるスパイたちの存在はますます非現実的に感じられました。「ジョーカー・ゲーム」ではその名の通り「ゲーム」だったスパイ活動が、「ダブル・ジョーカー」では生死をかけた戦いに変わっていましたし。

収録されている5編はどれも、起承転結でいうと「起承結」あるいは「起承転」で終わるものばかりで、第1次大戦時のヨーロッパで結城中佐(とおぼしき人物)が活躍したエピソードが出てくる「柩」なんて、主人公のドイツ将校が「もしかしたら実はアレはナニがアレしたのでは…」とか一人で勝手に妄想して終わってしまったので、読み終わってから最後のページに向かって「おい!これで終わりかい!」と突っ込んでしまいました。

ぶつ切りで終わる話が多い中、最後に収録されている「ブラックバード」は、生き別れの兄弟が情報提供者とスパイという関係で再会する、というちょっと腐ったご婦人方向けの設定なのはさておき、アメリカで活動していた日本人スパイが太平洋戦争が勃発して逮捕されてしまうというアンビリバボーな結末でびっくりしました。結城中佐をはじめD機関出身の優秀なスパイたちでも、この戦争を食い止めることはできなかったのか。諸外国との情報戦争に負けてしまったのか。この話には続きがあってほしいので、柳さんにはぜひ太平洋戦争中の、戦争終結後の結城中佐とD機関のスパイたちの物語も書いてほしいです。

というわけで、いろいろけなした感想を書いていますが、私にこの時代についての知識があれば、時代背景がよくわかってもっと楽しめたのかもしれません。やっぱり勉強って大事ですね。でも知識があったら今以上に突っ込みいれてたかも?




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