Flour of Life

煩悩のおもむくままな日々を、だらだらと綴っております。

もう涙は見せない

2015-06-22 21:06:18 | 雑談


みなさんこんにちは。最近どんな本を読みました?

私は先々週高松の病院に行ったときに入った書店で、「今まで読んだことがない人の本を読もう」と思い、新刊コーナーに平積みされていたミステリーの文庫本を買いました。

その帯には、

「あまりに哀しく、美しいラストに涙腺崩壊!!

という最近ありがちな「泣ける系」の宣伝文句がありました。まあ、いまにして思えばこの帯を見た時点で買うのを思いとどまればよかったんですけどねぇ。その頃横山秀夫の「64(ロクヨン)」を読んだばかりで、初めて読んだ横山作品が面白かったことから、読んだことのある作家の本ばかり読むのはもったいないと思って買ってしまったのです。

で、その涙腺が崩壊すると謳う小説を読んで、私の涙腺はどうなったかというと、

はぁぁあ?!全然泣けないんですけど??

と、涙腺はびくともしませんでしたが、その代わり怒りのあまりこめかみの毛細血管がブチ切れそうになりました。

ファンの方に悪いので作家名もタイトルも伏せますが(でも宣伝文句は伏せない…)、小説の舞台が平成20年とは思えないほどの、昭和の2時間ドラマみたいな内容でした。半分くらい読んだところで結末はわかっちゃうし、主人公の刑事が取調室で犯人を前にする謎解きは雑だし、殺人事件の被害者はひたすらいい子として描かれるだけで人物像が薄っぺらくて、いったいどこで泣けばいいのかさっぱりわかりませんでした。被害者だけでなく犯人も、関係者の証言で人物像が積み上げられていくだけで、ワイドショーの再現ドラマに出てくる、主婦を困らせる迷惑なご近所さん並みに薄っぺらかったです。

もし、どうしても泣けるポイントを探せと言われたら、殺人事件の被害者である若い女性が、実の両親をはじめとする身勝手な大人に振り回された結果、短い生涯を終えることになったことくらいです。彼女の実の父親と義理の父親に、もう少し自制心があったら、彼女の母親は不義の子として彼女を産むことはなかったのに。そして殺人事件の犯人もまた、故郷が鉱毒で汚染されたがために、その毒で心を病んでしまっていたのが哀れでした。哀れでしたが、小説の中では主人公の刑事もその相棒も犯人の古い知人も、犯人をいち犯罪者としてしか扱っておらず、その雑さにがっかりしました。また、被害者の女性の不幸は親世代の男性に起因しているのに、責められるのが犯人の女性だけなのが納得できませんでした。フェミニストではない私でもこれだけ不快なのだから、もしこの小説がこれからドラマ化したら、ツィッターやSNSで絶対叩かれると思います。

この本以外にも、書店では「泣ける」「(絶対泣くから)電車で読んじゃだめ」などという“ダンナ!読んでってくださいよ!絶対泣けますよ!”てな感じのポン引きみたいな帯がついた本がいくつも並んでいましたが、今回読んだ本でものすごくがっかりしたので、もうこういう帯のついた本は絶対読んだらだめだな…と思い知りました。たとえ読んだとしても、泣くことはないだろうなぁ、きっと。


おまけ:今日は夏至だったので、午後7時半ごろに写真を撮ってみました。ここまで毒吐きまくったので、口直しのつもりで。



青みがかったピンク色は、きれいなような、禍々しいような。周りの建物も山もピンク色に染まっているのを見てると、脳裏にカトちゃんの「ちょっとだけよ~」がよぎりました。古い…。




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